2018 Fiscal Year Research-status Report
金属錯体上でのヒドリド性能値の序列化を核とする持続循環型水素化反応の創出
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17K05799
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
大山 大 福島大学, 共生システム理工学類, 教授 (20292451)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 金属錯体化学 / 合成化学 / 再生可能エネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
有機化合物の水素化は,広範な材料開発において最も重要な化学変換の一つであるが,水素供与体として用いられる水素ガスの安全性および枯渇資源由来であるという点を考慮すると,従来の水素ガスに代わる安全かつ再生可能な水素供与体を利用した持続循環型プロセスの開発が急務である。本研究は,金属錯体上に様々な水素供与部位を構築し,これらの水素供与能を数値化することで,従来不可能であったヒドリド性能を直接比較し,再生可能なヒドリド生成法と融合することで,革新的な持続循環型水素化反応を創出することを目的としている。 昨年度,最初のステップとして金属ヒドリドおよび有機ヒドリド部位の両方を同一分子内に含むルテニウム錯体の合成に成功した。この成果を受けて本年度は,金属ヒドリド部位のみを含むルテニウム錯体の合成について多角的に検討した。 原料ならびに合成法を種々検討した結果,二つの方法で選択的に所望のルテニウム錯体が生成することを見出した。第一の方法は,カルボニル配位子と水素化ホウ素ナトリウムとの反応である。ヒドリドイオンの配位カルボニルへの求核攻撃により生成した不安定なホルミル基が脱離し,空いた配位座に過剰のヒドリドイオンが配位したものと推測した。第二の方法は,溶媒として用いたエタノールの配位を経由したエトキシ配位子のベータ水素脱離反応である。これらのヒドリド錯体は,同一の分子構造であることを確認した。特に後者の合成法は,水素源としてエタノールを用いていることから,従来の化石資源由来の水素化反応とは異なり,再生可能な水素源となり得る。よって,当初の目的とする持続循環型の水素化反応に適用できるものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では,2年目までに同一の金属錯体骨格に複数のヒドリド種を導入する方法を見出すこと,各種分光測定およびX線回折実験により分子構造を明らかにすることを目指していた。今年度までの研究において,所望の異種ヒドリドを複数のルートで合成することに成功し,かつ分子構造を含めた同定を実行できたことから,現時点で本研究計画はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,残るヒドリドとして有機ヒドリドのみを含むルテニウム錯体の合成法を確立すること,さらに,合成した3種のヒドリド(金属ヒドリド,有機ヒドリド,両方を含むハイブリッドヒドリド)を用いてヒドリド供与能を評価するため,ヒドリド移動反応を行いヒドリド性能の数値化を行う。
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Causes of Carryover |
当初予定していた学会のいくつかにおいて,旅費等が所属機関から別途支給されたため,次年度使用額が生じた。生じた次年度使用額は,物品費(消耗品費)に充当することにより,当該研究の推進を図ることとする。
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Research Products
(11 results)