2018 Fiscal Year Research-status Report
鋳型デンドリマーを用いた典型金属クラスターの精密合成と超原子機能の開拓
Project/Area Number |
17K05804
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
神戸 徹也 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (00733495)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | クラスター / デンドリマー / 超原子 / 典型金属 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では新奇機能性の発現が期待できる「超原子」の液相での合成を目標としている。精密に金属集積できるデンドリマーを鋳型として用いることで構成原子数を規定した金属クラスターを合成できる。この手法により金属クラスターを設計し合成することで、構成している金属原子の性質とは全く異なった、他の原子に類似した性質を示す超原子の開拓に取り組んでいる。申請者はこれまでに、構成元素の候補となる典型元素であるアルミニウム、ガリウム、スズ、ビスマスによる数個から数十個の原子からなる精密なクラスター合成法を確立してきた。そして本研究においてアルミニウムクラスターによる超原子の合成を達成した(Nature Commun2017)。本年度ではこうした超原子の機能開拓を目指し、金属クラスターの設計と合成を行なうとともに、安定した物性測定を可能にする保護法の開発に成功した(J. Photopolym. Sci. Technol. 2018 他)。 金属クラスターの合成にはテトラフェニルメタンもしくはその一部をピリジンに置換した構造をコアとしたデンドリマーを鋳型として利用した。アルミニウムおよびガリウムのクラスターにおいて13原子からなる超原子を溶液中で合成しその基礎物性の測定を行なった。この典型金属クラスター合成を他の金属種へと展開し、ビスマスやスズクラスターを合成した。得られた典型金属クラスターの物性測定のための保護法を開発した。保護デンドリマーを介したポーラス材料への担持や有機高分子への保護を利用することで、デンドリマー鋳型法で合成される金属クラスターの安定性が向上できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにフェニルアゾメチンを骨格とするデンドリマーに対してアルミニウム、ガリウム、スズ、ビスマスなどの典型金属種が精密に集積できることを見出した。そして集積したアルミニウム塩をデンドリマー内部で鋳型還元することで、様々な金属クラスターを合成してきた。その中で、13原子のアルミニウムクラスターが他の構成原子数のアルミニウムクラスターと異なる特性を持つことを電子状態および安定性から実証することに成功した。さらに金属種をガリウムやビスマスに展開し、新たな典型金属クラスターの合成にも予備的に成功している。 また、これら合成したクラスターの中には安定性に課題があるものが存在した。その場合同様の条件での物性測定が困難になるため、比較検討することが出来ない。この問題に対して直鎖高分子を用いた新たな安定化法を開発することで解決した。この手法により、デンドリマーを用いて均一に合成したサブナノサイズの金属クラスターを安定に保持でき、物性測定へと展開できる目処を立てることが出来た。 また今後の展開に必要な原子数のバリエーションの構築や異種金属の配合も検討している。鋳型デンドリマーの変更や配位部位の変更により、様々な比率で異種金属を精密配合した合金が得られることを見出している。こうした金属クラスターの多彩なバリエーションは新超原子の探索に極めて有用である。 以上のことからおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
超原子による新奇物性発現を磁気特性と光学特性を中心に検討する。これは、これまでに達成してきた典型金属クラスターの合成と、有機高分子を用いたクラスター保護法を利用して行なうことで、金属クラスターが発現する超原子性を基礎物性の解明から取り組むものである。その際に、構成原子数に依存した特性の変化を捉える予定である。この原子数と特性は超原子という観点から考えて密接に関係していることが予測される。それは構成原子数の変化がクラスターの物性を決定する価電子の数を変化させるためである。そのため、構成原子数を変化させた金属クラスターを精密合成し、その物性を解明することで超原子性の理解へと繋げる。物性としては、磁気特性、光学特性、熱安定性(融点)を中心に検討する予定である。 上記課題を遂行するにあたり課題となると考えられるのが、原子数変化に伴った構造の変化である。これはクラスターの対象性変化を引き起こすため、単純な価電子数の変化が超原子性の変化に直結しないことが考えられる。そのための対応として、1,EXAFSを用いた構造解析、2,異種金属配合による原子数の保持、を予定している。EXAFSにより金属間の距離を測定することで構造の情報を捉える。理論計算も含めて超原子性について議論する予定である。2,の目的は原子数を保持した状態での価電子数の変化であり、その特性を含めて超原子の理解に取り組む。
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Research Products
(15 results)
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[Presentation] ビスマス集積デンドリマーの発光特性2018
Author(s)
Tetsuya Kambe, Takane Imaoka, Kimihisa Yamamoto
Organizer
The 35th International Conference of Photopolymer Science and Technology
Int'l Joint Research
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