2018 Fiscal Year Research-status Report
光再生可能な有機ヒドリドの自在制御に基づく二酸化炭素多電子還元錯体触媒の開発
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17K05806
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
大津 英揮 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (80433697)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 金属錯体 / 二酸化炭素多電子還元反応 / 有機ヒドリド / 光エネルギー変換 / 再生可能エネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究代表者は、補酵素NAD(Nicotinamide Adenine Dinucleotide)におけるNAD+/NADH型の再生可能な有機ヒドリド生成能に着眼し、光エネルギーによって再生可能なヒドリド源を配位子内に組み込んだ様々な金属錯体を合成し、二酸化炭素再資源化反応の開発に取り組んできた。本研究である「光再生可能な有機ヒドリドの自在制御に基づく二酸化炭素多電子還元錯体触媒の開発」は、NADモデル配位子のπ共役系に着目した新しい分子設計を施したNADモデル配位子を有するルテニウム(Ru)錯体による、光エネルギーにより再生する有機ヒドリドのヒドリド供与能自在制御に基づく高効率な二酸化炭素からメタノールへの6電子還元反応の創成を志向しており、(1)光エネルギーにより有機ヒドリドを貯蔵したNADH型錯体におけるヒドリド供与能の向上、(2)基質結合部位を有する新規錯体の合成と光有機ヒドリド貯蔵反応特性の解明および二酸化炭素や二酸化炭素還元中間物質との反応性の検討、を各種分光学・光化学・電気化学的測定等、多面的な測定手法を駆使し、研究目的達成を目指す。本年度(平成30年度)では、平成29年度で得られた知見を基盤とし、新規NADH型配位子pnHHを有するRu錯体の光化学的合成・単離に成功した。また、このNAD+型Ru-pn錯体からNADH型Ru-pnHH錯体への詳細な光有機ヒドリド貯蔵反応メカニズムに関して、UV-vis、ESR、NMR、MS測定の結果より明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
NAD+型Ru-pn錯体からNADH型Ru-pnHH錯体への特異な光有機ヒドリド貯蔵反応機構を明らかにすることができたが、NADH型Ru-pnHH錯体を合成・単離可能な反応条件の探索とその最適化に予想以上の多くの時間を必要としたことから、Ru-pnHH錯体の各種物性や二酸化炭素還元能を検討することができなかった。よって、現在のところ、本研究の進捗状況としては、やや遅れていると判断した。次年度は巻き返しを図り、本研究を大きく進展させていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
NADH型であるRu-pnHH錯体の各種分光学・光化学的性質や電気化学的特性、および、二酸化炭素還元特性の検討を行うことで、ヒドリド供与能の向上・自在制御方法論の探求に取り組む。また、基質結合部位を有する新規錯体の合成と光有機ヒドリド貯蔵反応特性の解明および二酸化炭素や二酸化炭素還元中間物質との反応性の検討を行い、これら錯体の分光学・光化学・電気化学的特性、光エネルギーによるNAD+型からNADH型への還元反応特性や二酸化炭素・一酸化炭素・ギ酸・ホルムアルデヒドとの反応性に関する知見を得ることで、二酸化炭素をメタノールへと多電子還元し得る錯体触媒の創出を目指す。
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Causes of Carryover |
研究を遂行する上で必要な研究経費を執行する際、試薬・実験用器具を精査して購入するなど、研究経費のより効率的使用に努めた結果、次年度使用額に差が生じ、未使用額が発生した。 配位子・金属錯体を合成するための試薬やガラス器具購入費に充て、本研究で生じている遅れを取り戻し、当初の予定以上に進め、加速度的に本研究を発展させるべく、有効に使用する。
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Research Products
(13 results)