2017 Fiscal Year Research-status Report
特殊な分子捕捉・反応場を利用した電気化学的水素生成触媒システムの開発
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17K05808
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
小澤 智宏 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70270999)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猪股 智彦 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40397493)
米村 俊昭 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 教授 (90240382)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 電気化学 / 触媒 / 水素生成反応 / ニッケル錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
水素は燃焼時において水のみを生成することから、化石燃料の代替エネルギーとして期待されている。現在水素は、主に化石燃料(メタン)を原料として生産され、そのエネルギー消費量も大きい。そのため化石燃料に依存しない自然エネルギーを利用した水素生成システムの構築が望まれている。本研究では、自然エネルギーにより生産される電気エネルギーを利用した電気化学的な水素発生触媒システムの開発を目指して、ニッケル錯体をベースにその触媒評価を行っている。 水素はプロトン(H+イオン)の2電子還元を通じて生成し、ニッケルイオンはその還元反応場(触媒)として作用する。これまでの研究で高効率な触媒材料を開発してきたが、より高効率な触媒を構築するためには、その反応機構の解明が必須である。平成29年度は、その反応機構に関して詳細に検討することを目的とした。これまでに構築されたニッケル錯体には、反応活性中心近傍にプロトンをトラップ可能なアミノ基を導入しているが、このアミノ基の効果を把握するために、水素原子がない3級アミノ基を導入した配位子を新たに合成し、ニッケル錯体の合成並びにその性質を通じて水素生成反応を評価することにした。3級アミノ基の導入は配位子合成の初期段階で導入する必要がある。これを2方法で試みた。一つはジアミノピリジン骨格を配位子の途中段階で導入する方法、もう一つが終段階で導入する方法である。いずれの場合も副反応物が大量に生成し、現状では目的物の単離に問題が生じている。そこで急遽ジメチルアミノ基と同程度の大きさで、プロトンの授受ができないメチル基を導入したものを合成し、その電気化学的特性を評価した。メチル基を導入すると、ニッケル由来の酸化還元電位が負側にシフトした。これは水素生成に必要な還元エネルギーが大きくなっていることを示している。したがって、アミノ基効率的な反応促進に関与ていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画段階では、一般的に用いられるアミノ基のメチル化が比較的容易な反応であったため、目的化合物の合成にかかる時間はわずかであると考えていたが、メチル化とは関係ない段階において主生成物の単離ができないことが判明した。大量の副生成物はアミノ基のジメチル化によるピリジン環の電子密度の上昇により、ピリジン窒素あるいは3級アミンの反応性が増し、次の化学反応において反応点として作用したためであると考えられる。ここでの配位子の精製操作は多段階に渡るため、収率も数%程度ど非常に低く、ニッケル錯体を合成するのに十分な量の配位子を得るには至らなかった。ジメチルアミノ基を導入して立体的な効果を無視できる環境を作ることで、反応機構を明確と把握するための作業であったが、上記の通り配位子合成の困難さが研究の進捗に影響を及ぼした。そこで急遽大きさが同程度のメチル基を導入して評価した。その結果、アミノ基が反応の効率化に大きく影響していることがわかったが、問題となっていたプロトンの由来がアミノ基に直接結合した水素原子に由来するのか、導入した酸に由来するのかを決定することはできていない。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度は、反応機構を詳細に検討するためにプロトン捕捉部位にジメチル化を施した配位子の構築を実施してきた。しかしながら副生成物が多く生成し、目的配位子の生成が非常に困難であることがわかった。そこで30年度は以下の2つについて試みる。 1.既存配位子の直接メチル化 既存配位子上には2級アミンが存在するが、これをメチル化することで3級アミン体の合成を試みる。ここでも配位子合成の都合上、初期の段階でメチル化する必要があり時間がかかることが予想される。 2.メチル基を導入した錯体の詳細な性質評価とヒドロキシ基をプロトン捕捉部位として導入した新規配位子とニッケル錯体の合成と性質 29年度に合成したメチル基導入型のニッケル錯体の性質を詳細に調べる。また、これまでプロトン捕捉部位として導入したアミノ基に変えて、ヒドロキシ基(-OH)を導入する。ヒドロキシ基はプロトン捕捉可能であるだけれなく、本官能基が導入されているピリジン骨格を通じて共鳴構造を形成するため、金属イオンの酸化還元反応の促進が期待できる。 上記2方面から合成される配位子・錯体系を用いて、順次水素生成反応の評価を行うと同時に、特殊反応場に必要な電極表面修飾分子の合成にも着手する予定である。
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Causes of Carryover |
研究計画では、配位子の合成は容易にできると考えていたが、副反応が多く単離が困難であることがわかった。そのため29年度に計画していたその他の実験に着手する時間が足りなくなり、結果として実施できていない分(成果報告のための学会出席・論文投稿料なども含む)が30年度の使用額に繰り越し加算された形となっている。30年度は29年度に実施できなかった分も並行して実施するため、すでに合成ルートが確立している配位子の合成も同時進行して実施していくことを計画しており、この新規配位子合成と30年度に計画している電極化を実施する。そのための消耗品(電極材料・修飾分子の合成用試薬・高純度溶媒等)の購入ならびに成果報告のための国内外の会議への参加を中心に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)