2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of new emissive species containing d10 metal in the excited states
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17K05816
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
坪村 太郎 成蹊大学, 理工学部, 教授 (70188621)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西川 道弘 成蹊大学, 理工学部, 助教 (60711885) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 発光材料 / 金属錯体 / リン光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年の研究実施計画は、交付申請書にも記載したとおり、Cu(I), Ag(I)等のd電子を10個含む金属種の発光性金属錯体を合成することであった。特にリン、酸素、炭素ドナーを含む配位子との組み合わせを検討したところ、以下の発光性錯体の合成に成功し、発光特性を明らかにした。 1)銅(I)錯体。1,10-フェナンスロリン配位子を有する銅錯体が十分な強さの発光を示すためにはフェナンスロリン配位子の2,9-位に置換基を導入して励起状態における錯体の構造変化を防ぐことが必須であるとされてきた。しかし、今回非常にかさ高い配位子を用いることで、三配位銅(I)錯体を合成し、これが溶液中で比較的強く、長寿命の発光を示すことを見いだした。これ以外にもジホスフィンジオキシド配位子とジホスフィン配位子を有する発光性二核銅(I)錯体を新たに得た。さらに、N-複素環カルベン配位子を含む二核銅錯体についても検討を行った。以前私共はN-複素環カルベン部位を2つ有する配位子が2つの銅を架橋した構造の二核錯体が強い発光を示すことを報告しているが、今回さらに類似の配位子を用いた新規錯体を合成して、そのうちある錯体は強い発光を示すことを見いだした。 2)パラジウム(0)錯体。以前binapに代表されるビアリルホスフィンを有するPd(0)錯体が溶液中で比較的強い発光を示すことを報告していたが、ビアリル型とは異なるジホスフィンを用いて新たな発光性錯体を合成し、発光寿命などの光物理学的パラメータを求めた。 発光特性の測定に当たっては、標準光源を今回購入し、それを使用して高精度で感度補正を行うことができるようになり、従来よりも正確に発光特性を得ることが可能になった。なお、交付申請書提出段階では標準光源、電源、校正を一括して注文する予定であったが、それらを結局別々に発注したため、50万円以上の物品としての購入はなくなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
[1] 発光性錯体の合成 概要にも示したとおり、下記の新たな発光性錯体を合成し、その性質を明らかにした。 最も成果が得られているのは銅錯体の研究である。フェナンスロリン配位子(phen)と非常にかさ高い配位子(JohnPhos = (2-Biphenylyl)di-tert-butylphosphine)を用いることで、三配位錯体[Cu(phen)(JohnPhos)]BF4を合成した。これが溶液中で2μsという長寿命の発光を示すことを見いだした。類似のいくつかの単座ホスフィンを用いても同様の発光性錯体が得られることを示した。また、2つのN-複素環カルベン部分をトリメチレン基で架橋し、さらに両末端のN-複素環カルベン部位に様々な置換基が結合した配位子を合成し、二核銅(I)錯体を合成した。そのうちキシリル基が結合した錯体のコンホメーションは従来の8の字型やO字型とは異なるものであった。また、イソプロピル基が結合した錯体はメタノール中で40μsときわめて長い発光寿命を有していることが判明した。さらにパラジウム錯体についても概要に示したように新たな発光性錯体を得ることができた。 [2] 発光スペクトルと発光量子効率測定の高精度化 計画通りタングステン標準電球とその光源を購入し、そのエネルギー分布の測定を依頼した。その光源を用いることで、発光スペクトル測定装置のスペクトル特性を高精度に得ることが可能となった。別途購入した積分球とあわせ、固体と溶液状態の発光量子効率を正確に求めることができるようになった。 以上のうち特に[1]のうち銅錯体に関する成果はすでに二本の論文として英国化学会と日本化学会に発表済みである。新たな発光性錯体を合成することができたという点でおおむね順調に研究が進展しているとした。 なお、研究に不可欠な単結晶X線構造解析装置が故障し、それの修理に本研究費の一部をあてた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は発光性錯体の合成を引き続き行うと共に、発光機構の考察に向けて研究を推進していく計画である。 [1] 発光性錯体の合成について 1)ジホスフィンジオキシドを含む錯体。 最近ジホスフィンジオキシド配位子とジホスフィン配位子が結合した銅(I)錯体が非常に強い青色発光を示すことを私共は見いだした。また、概要にも記載の通り、ジホスフィンジオキシド(具体的にはビス(ジフェニルホスフィノアミド)ジオキシド)とリン原子間が原子1個で架橋しているジホスフィン配位子(ビス(ジフェニルホスフィノメタン))を用いた場合は2核の銅(I)錯体を作ることを昨年発見しているが、さらに同じ配位子が結合した銀(I)錯体を合成したところ、緑色に発光する化合物を得た。ただし、合成の再現性に難があり、今年以降に再現性を確立した上で発光特性を明らかにしたいと考えている。 2) N-複素環カルベン配位子を含む二核銅錯体。N-複素環カルベン配位子の錯体については現在さらに他の末端置換基を有する配位子を用いて検討を行っている。配位部位を有する末端置換基を用いることで、安定性の向上が図れると考え実験を行っているところである。 [2]分光測定と発光機構の解明 交付申請書にも記載したとおり分光測定結果と錯体構造から発光機構について考察を行う。まず得られた錯体の分光学的な測定を行い、光物理パラメータを求める。得られた錯体の構造と発光データをまとめ、金属と配位子の組み合わせが発光特性に与える影響に関して経験的な法則が導き出されるかどうか検討する。二核錯体については実験的に得られたデータから金属間距離が発光特性に与える影響を考察する。
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Causes of Carryover |
年度末に347円の端数があまり、本金額は次年度に有効利用することとした。
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Research Products
(4 results)