2017 Fiscal Year Research-status Report
チタン錯体を基盤とする多核ヒドリド錯体の構築および窒素分子の活性化
Project/Area Number |
17K05823
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
島 隆則 国立研究開発法人理化学研究所, 侯有機金属化学研究室, 専任研究員 (60391976)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 窒素分子活性化 / クロムヒドリド錯体 / イミド錯体 / ニトリド錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.多核クロムヒドリド錯体の合成:これまでの報告において、多核ヒドリド錯体による窒素分子の還元・切断反応は、4族、5族の金属錯体に限られていた。今年度は新たに6族の遷移金属であるクロムを用いたヒドリド錯体の合成に取り組み、二核、および三核ヒドリド錯体の合成に成功した。溶液中アルキル錯体を水素化することで二核ヒドリド錯体が得られ、固体のアルキル錯体を水素化することで三核ヒドリド錯体が得られた。構造はX線結晶構造解析により明らかにした。二核、三核錯体はそれぞれ、水素雰囲気下で互いに相互変換可能であり、特に二核錯体の溶液に水素を付加した場合、ほぼ定量的に三核ヒドリド錯体に変換可能であることがわかった。これらの新規ヒドリド錯体は有機基質に対してユニークな反応性を有しており、特に二核錯体と窒素分子とは常温・常圧で反応し、窒素分子の窒素―窒素結合切断および、窒素―水素結合形成を経て四核のイミド・ヒドリド錯体を与えることがわかった。 2.多核クロムヒドリド錯体による有機基質の活性化:二核クロムヒドリド錯体と様々なオレフィン類との反応を検討した。末端オレフィンとの反応ではオレフィン部位の異性化反応が観察された。また、環状化合物のうち、安定なヘテロ芳香環化合物であるチオフェンやベンゾチオフェンの反応を検討したところ、2か所の炭素-硫黄結合切断を経て、硫黄成分と炭化水素成分の完全分離を達成した。水素化することでチオフェンからはブタンが得られた。工業的に知られている水素化脱硫反応では高温を必要とし、また得られる炭化水素類は多数の混合物となってしまう。本反応では温和な条件で選択的に反応が進行しており、今後、本反応を利用した様々な安定化合物の物質変換反応への展開が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、新たにクロムヒドリド錯体を合成し、それを用いて常温・常圧下で窒素分子の切断・水素化を達成した。多核ヒドリド錯体の特異な協奏機能を生かした新しい物質変換反応の開発にも成功した。これらの研究成果は、国内学会等でも高く評価された。よって上記のように判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
クロムヒドリド錯体による窒素分子の活性化とアンモニア合成に力を入れるとともに、さらに他の不活性小分子や芳香族化合物の活性化にも取り組みたい。また、現在用いているクロム金属のみならず、他の金属にも手を広げて、ヒドリドクラスター化学研究の飛躍を期待したい。
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Research Products
(8 results)