2017 Fiscal Year Research-status Report
塩形成が不可能な中性分子の包接結晶化誘起デラセミ化法による光学活性体の構築
Project/Area Number |
17K05827
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
赤染 元浩 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (10261934)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 包接結晶 / 光学分割 / アミノ酸誘導体 / 水素結合 / 結晶化誘起動的分割 |
Outline of Annual Research Achievements |
【計画1:水素結合補償型包接結晶による中性化合物のキラル分離の一般化】(1)アミノ酸から合成できるアミノアルコールのウレアホストの構造を修飾し、その包接能のさらなる展開を検討した。トリチル部位をフェニルフルオレニル基へ変換したウレアホスト、包接空孔をつくるスペーサーのフェニレン部位へメチル基を導入したウレアホスト、ウレアをチオウレアへ変換したホストの3種の構造変換を試みた。多くの場合は、元のウレアホストと同様な選択性を示したが、包接能の低下が見られ、ホストの改良には至らなかった。スペーサーのフェニレン部位へメチル基を導入したウレアホストでは、新たに第2級アミドのN側に不斉炭素原子をもつ基質でも光学分割を達成することができた。 (2)これまでのアミノアルコールでは包接能は見出せなかったが、N上にトリチル基を導入することで、メタノール、エタノール、アセトンを包接することを見出した。アミノアルコールがゴーシュ配座をとり、アミノ基は水酸基と水素結合し、さらに水酸基はゲストと水素結合し、トリチル基によって生じる包接空孔にゲストを包接することを見出した。不斉炭素原子をもつラセミ体ゲストにおいては、包接可能なゲストを見出すに至らず、その不斉認識能の詳細は不明である。 【計画2:包接結晶でのデラセミ化晶析法によるキラル分離】 α-ハロアミドを用いて、ハロゲン化物イオンの求核置換反応であるフィンケルシュタイン反応を用いてデラセミ化晶析法によるキラル分離を試みた。しかしながら、ハロゲン化物イオンによりウレアホストのトリメチルシリル基が脱離し包接能を失った。本年度は新たに合成法を確立したO-アルキル化したアミノアルコールを用いたウレアホストを研究する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アミノ酸とグリニャール試薬から合成できるアミノアルコールをホストに用いた包接現象による光学分割は報告されていない。我々は、N上にトリチル基を導入したN-トリチルアミノアルコールをホストとして、メタノール、エタノール、アセトンをゲストとして包接結晶を生成することを見出した(日本化学会第98春季年会で発表)。しかしながら、不斉炭素原子をもつ中性分子で包接可能なゲスト分子を見出すには至らなかった。 この検討過程で、新たな保護基を用いることでアミノアルコールの水酸基の選択的なO-アルキル化反応に成功した。アミノ基の保護基には一般的にはウレタン型をはじめとするカルボニル型の保護基が用いられるため、β-アミノアルコールのO-アルキル化は困難な場合が多い。また、これまで酸素上はシリル基を用いていたため、デラセミ化にハロゲン化物イオンを用いた場合には、酸素-ケイ素結合が切断され、包接能が失われるケースが見られた。アミノ酸から誘導されるキラルなβ-アミノアルコールのO-アルキル化を達成したことで、ビルディングブロックとして大いに応用が期待できる。現在、多様なホストの設計を行っている。 包接空孔をつくるトリチル基にスペーサーのフェニレン部位を導入した4-トリチフェニル基を持つウレアホストにおいて、N上が芳香族置換基であるラセミ体アミドの包接結晶化誘起のデラセミ化に成功した。さらにゲストとしてN上が脂肪族置換基であるラセミ体アミドへ拡大している。またホストではC2対称性をもつジ(β-トリメチルシロキシアルキル)ウレアホストのデラセミ化を検討している。
|
Strategy for Future Research Activity |
【計画1:ウレアでの水素結合補償型包接結晶による中性化合物のキラル分離の一般化】塩基性条件下でもホストのラセミ化が起こらないようにアミノ酸の酸性度の高いα水素をアミノアルコールに変換する。さらにハロゲン化物イオンによるフィンケルシュタイン反応にも応用可能な水素結合補償型ホストを合成する。具体的には、ジ(β-アルキロキシアルキル)ウレアホストを合成し、水素結合補償型包接結晶による中性化合物のキラル分離を探索する。 【計画2:包接結晶でのデラセミ化晶析法によるキラル分離】平成29年度の実験ではN上が芳香族置換基であるラセミ体アミドの包接結晶化誘起のデラセミ化は成功している。本年度はN上が脂肪族置換基であるラセミ体アミドの包接結晶化誘起のデラセミ化を検討し、基質の適応性の拡大を図る。これらデラセミ化の実験条件を参考に、ジ(β-トリメチルシロキシアルキル)ウレアホストを用いたデラセミ化も検討する。 N,N’-ジトリチルアミノ酸アミドは、酸性や塩基性条件では、トリチル基の脱離やα-水素引き抜きによるホストのラセミ化が問題となる。これまで困難であったアミノアルコールのO-アルキル化に成功したことから、これらアミンを用いたウレアホストの合成に応用する。これにより、既に見出しているフィンケルシュタイン反応を利用したハロゲン交換反応を用いた結晶誘起動的光学分割へ応用する。また、アルキル基は脂溶性が高いが極性は低い。これらアルキル基を導入することで、極性の高いアミドゲストとの分離が容易になることから、ホスト及びゲストの回収法についても検討する。
|
Research Products
(7 results)