2017 Fiscal Year Research-status Report
屈曲型液晶を用いた高速応答強誘電ディスプレイの開発
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17K05831
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
姜 聲敏 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (00523664)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 液晶 / 反強誘電性 / ディスプレイ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究年度は約45°の大きな分子チルト角を有するキラルスメクチックCA相(アンチクリニックアンチフェロエレクトリック相)の分子設計を重点的に行い、その中でも二量体液晶性化合物の開発を行った。 二量体分子はキラル性を発現させるため不斉炭素を導入する必要があり、本年度の分子設計では、メトキシー基とメチル基の2種類のキラル基を導入した。 さらに、分子両末端には柔軟鎖には様々な長さを有する分子設計を行った。それらの二量体液晶分子が示す液晶相転移挙動を眺めるとメチル基をキラル分岐として有する系においては、末端鎖16、一方のメトキシー基をキラル分岐として有する系においては14、16、18、22の末端鎖を有する分子系において目的とするキラルスメクチック相の発現を確認した。これらのキラルスメクチック相においては、さらに反強誘電性およびアンチクリニック層構造を有する必要があるため、電場印加測定を行い、反転電流測定法から反強誘電性を確認することに成功した。また偏光顕微鏡を用いた電気光学測定の結果、アンチクリニック層構造を有することをも確認することに成功した。 これらのキラルスメクチックC相は、目的とする光学的等方性を示す必要があるため、その複屈折性を偏光顕微鏡観察を通して評価を行った。現段階では、観察するガラス界面においての配向の乱れも十分に予測され、最終的分子設計の指針を得るためには、完璧な光学等方性までではなく、ある程度の光学等方性に近い、性質を有することを期待しながら評価を行った。 その結果、メトキシーをキラル分岐と有する系において末端鎖18と22の系が最も光学的等方相に近い性質を示すことが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、ラビングを必要としない新規液晶ディスプレイ材料の開発を目的とし3年間の研究機関を想定している。その中の始めの二年間は、材料として多様な分子設計を行い、来る研究年度の評価・応用に最適な分子系を見つけることを最優先課題として選定していた。 初年度では二量体液晶分子を中心として、分子設計を行い、ターゲットしているキラルスメクチック相の発現および本来の目的としている光学的に等方相に非常に近い性質までを見出すことに成功した。翌研究年度に、これらの最適化および分子設計を確立が行われるような基盤の研究が十分にできたと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
一つの材料候補として、二量体液晶分子の設計指針が得られた。キラル分岐をメトキシー基にして分子両末端鎖を18から22の長さにすることで、光学等方相に近い非常に弱い複屈折性が得られることが確認できた。 まず、最も簡単に末端鎖の長さを20くらいの性質を確認するために、ブレンド法を用いる。ブレンド法を用いた中間長さを持つ系においてより弱い複屈折性が確認されれば、末端鎖20の分子系の合成を行う。 ブレンド法は両成分の成分比をほぼ連続的に変えられるため、複屈折性の制御に最も簡便で有効な手法と思われる。上記の手法で、得られた分子系は、X線回折実験を行い、正確な分子チルト角を求め、さらに電気光学特性を行い、既存のネマチック相が発現する暗状態との定量的比較を行う。 さらには、ガラス基板付近での分子配向の乱れを調べるため、様々な配向剤の光学特性への影響を調べる。
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Causes of Carryover |
初年度に計画した分子設計および分子合成の予定が、より早く候補群が見つかったため、次年度以降、残りの分子設計を検討することになった。次年度は、残りの分子設計指針をもとに異なる分子群の探索と評価を行るため、合わせた助成金として使用を予定している。
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