2017 Fiscal Year Research-status Report
Measurement of interfacial tension of nano systems by image analysis of vesicles
Project/Area Number |
17K05836
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
ヴィレヌーヴ 真澄美 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (30304554)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 界面張力 / リン脂質膜 / 曲率 / 溶媒 / 水素イオン濃度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、これまで測定されていないベシクルと呼ばれる分子集合体とその周囲の溶媒との間に働く界面張力を測定する簡便な技法を新たに開発することである。ベシクルは二分子膜を基本構造とする球状会合体であるが、球状を保つことから、ベシクルとその周囲の溶媒の間の界面には、界面張力が働いていると考えられる。本研究では、これをナノ界面張力と呼ぶ。 光学顕微鏡とデジタルビデオカメラを組み合わせ、脂質のジャイアントユニラメラベシクルと溶媒間の界面張力測定を実現し、脂質二分子膜形成や相分離構造について新たな知見を得ることを目的とする。
平成29年度の目標は、顕微鏡電気泳動法と静滴法を組み合わせた新測定法を可能とする装置のうち、測定系(電気泳動セル)を完成させることであった。 本年度の実績は、倒立型の微分干渉顕微鏡で観察しながら、イオン性界面活性剤のベシクル溶液に電場をかけ、ベシクルを移動させることに成功した。しかしながら移動するベシクルの運動を止め、上手くベシクルを変形させるような障壁を備えたセルの作成に未だ成功していない。セルの清浄を保つ目的で、洗浄の容易なガラスでの作製を試みたが、高分子などの材料を検討する必要があるかもしれない。平成30年度にはこの点を成功させなければならない。 また平成29年度は、装置完成後に測定する試料の基礎物性の調査として、リン脂質膜と金属錯体の相互作用に対する溶媒のpHと膜の曲率の影響を明らかにした。それらの成果はChemistry and Physics of Lipidsに掲載されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ベシクルをちょうど良い具合にトラップすることに成功できておらず、測定用電気泳動セルの作製がやや遅れている。理由としては、ガラス製にこだわっているからである。ガラス製の長所は各種洗浄液の多くに対して耐性があることである。しかしながら、加工方法が主に高温での軟化によるものであるために、寸法の精度が上がりにくいことや、作製できる形状に制約がある。 装置が完成した後に測定する試料の基礎物性の調査は、順調に進行した。本研究で開発を目指しているのは、ベシクル二分子膜や細胞膜とそれらの周囲にある溶媒間の膜張力を測定する装置であるから、測定対象となる膜については明確な情報が必要である。平成29年度は、リン脂質膜と金属錯体の相互作用を明らかにすることができた。以下の論文として報告した。 (1) Villeneuve M. et al.: Uptake of iron (III)-ethylenediamine- N,N,N',N'-tetraacetic acid complex by phosphatidylcholine lipid film. Part I. Effect of bulk pH, Chemistry and Physics of Lipids, 210: 1-13, 2018. (2) Villeneuve M. et al.: Uptake of iron (III)-ethylenediamine- N,N,N',N'-tetraacetic acid complex by phosphatidylcholine lipid film. Part II. Effect of film curvature, Chemistry and Physics of Lipids, 210: 14-21, 2018.
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Strategy for Future Research Activity |
概念としては存在するが、これまで測定されたことのない、溶液中の分子集合体とその溶媒間の界面張力測定を可能とすることは、新しい界面科学分野の発展のために意義があると考えている。またそのような測定が簡便に行えるようになることは、(1)リン脂質二分子膜内のミクロドメイン構造について詳細な研究が可能となり、生体膜の機能を物理化学的現象との相関という観点で理解できる。また(2)膜と生理活性分子の相互作用を簡便に測定できるようになる可能性がある。さらに(3)実用化が難航しているリン脂質分子膜によるドラッグデリバリシステムの実現も期待される。(4)赤血球などの細胞の界面張力も測定できるようになり、病気の新たな診断法の開発につながる可能性があるなどの波及効果も期待されることから、当初の目標を変えずに研究を推進する。 平成30年度は測定セルの完成を目指し、加工法と材料を検討する。また、応用できそうな技術を開発している研究者を調査し、協力を依頼する。さらに、現在は室温で測定を行っているが、膜物性に対する温度の効果は重要であるから、今後は測定系の温度制御も行わなければならない。測定セルの基本部分に関して目処が立ち次第、温度制御の仕組みも付与する予定である。 測定し易い大きさのベシクルを調製することも重要である。これまで試してきたのは、陽イオン界面活性剤-陰イオン界面活性剤混合ベシクルであった。この系では大小様々な大きさのベシクルが生ずる。ベシクルの安定性を理解するために、ベシクルサイズ分布が狭い系も測定する必要がある。この点においては、研究協力者助言を仰ぎながら研究を進める。
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Research Products
(2 results)