2017 Fiscal Year Research-status Report
会合発光色素のレクチンへの可逆的な結合・解離に基づく生体蛍光検出
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17K05849
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Research Institution | Kurume National College of Technology |
Principal Investigator |
石井 努 久留米工業高等専門学校, 生物応用化学科, 教授 (60346856)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 会合 / 発光 / ドナー・アクセプター / 糖質 / レクチン / 生体検出 |
Outline of Annual Research Achievements |
1年目は、マンノース部位を導入した種々の会合発光性ベンゾチアジアゾール・トリフェニルアミン蛍光色素を合成し、レクチン・Con A との複合体による糖質蛍光検出について検討した。本色素が、モノマー状態で顕著な消光を示し、一方会合状態で発光することを見出した。つまり、マンノース導入後も、母体蛍光色素固有の会合発光特性を維持しており、レクチンと複合体を形成させた後、目的糖質の蛍光検出に展開できる可能性を確認できた。以下のレクチン複合体形成の評価と併せ、モノマー状態と会合状態での発光特性の評価方法も確立できている。 次に、マンノース特異性を有する Con A との複合体形成を検討したが、複合体を確認することはできなかった。マンノース部位と色素部位が接近しているため、立体障害により Con A 結合サイトへのマンノース部位の結合が難しいためである。そこで立体障害を回避するため、マンノース部位と色素部位の間にヘキサエチレングリコール・スペーサー部位を導入した新規色素を別途合成した。その結果、本色素とCon A とが結合した複合体の形成に成功した。しかしながら、予想に反して Con A との結合により、発光強度の向上が認められた。つまり、マンノース部位の結合により、色素部位はモノマー状態として親水性環境に放出されたのでは無く、色素部位が自己集合した状態で Con A との結合が進行していた。色素部位の高い疎水性に起因した結果である。 疎水性に基づく本問題点は、申請提案時に予想できていた。そこで色素部位の疎水性の低下を目的として、アミン・ドナー側に水溶性官能基「ヘキサエチレングリコール」を導入した新規色素を設計・合成した。合成した色素に Con A を添加したところ、蛍光強度の低下が認められている。現在、再現性・信頼性を含めて詳細を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、マンノース部位を導入した幾つかの会合発光性ドナー・アクセプター分子を合成し、レクチンとの複合体形成に成功している。本複合体形成、更にモノマー状態及び会合状態での発光特性の評価方法も確立し、今後の研究を効果的に遂行できる環境を整えることができた。現在、水溶性官能基導入を制御することで、レクチン複合体形成による蛍光強度変化を制御できる知見が得られつつある。今後は、更なる分子設計により会合特性を制御した色素を合成し、Con A に結合させることで、顕著なモノマー消光状態を発現させる。最後に、本 Con A 複合体に対し標的糖質であるマンノース多量体を結合させ、色素が解離し発光性会合体を形成することで、糖質の蛍光検出が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目以降は、引き続きドナー・アクセプター色素を基盤とした糖質の蛍光検出を調査する。1年目の知見を基に再度分子設計を行い、大きな「蛍光 OFF-ON 変化」を示す糖質蛍光検出システムの構築を目指す。合成する色素は、水中で疎水性相互作用を主駆動力として会合体を形成するため、疎水性部と親水性部のバランスが重要となる。つまり、水溶性を付与すると同時に、水中で会合体形成を維持することで、発光を発現できることになる。そこで、水溶性官能基の数、鎖長、及び導入位置ついて検討する。 1年目の色素は、当研究室の水溶性会合色素の知見に基づき、繰り返し鎖長「6」のヘキサエチレングリコール鎖を用いて分子設計を行った。モノマー状態での消光発現には、水溶性の向上すなわち鎖長の伸長が有効である。一方、会合状態での発光発現には、鎖長の短縮に基づく疎水性向上が効果的となる。そこで、疎水性及び親水性の調整のために、種々の鎖長を有する新規色素を設計・合成し、本研究の目的に適した色素を見出す。同時に水溶性官能基の数と導入位置についても検討する。 まず、合成した色素がモノマー状態で消光し、会合状態で発光する基礎知見を収集する。次に、本色素と Con A との複合体を構築し、消光状態を発現させる。最後に、Con A 複合体を用いた標的糖質の蛍光検出を評価する。ここでは、Con A 複合体に対し標的糖質であるマンノース多量体を作用させ、Con A に対するマンノース多量体の高い親和性により、マンノース部位を有する色素を解離・遊離させる。遊離した色素が、疎水性相互作用によりモノマーから会合体に変換し、強蛍光を発することを確認する。すなわち、本会合発光が確認できれば、マンノース多量体の蛍光検出に成功したと判断できる。これら一連の会合特性と発光特性の評価は、1年目に確立した評価方法に従い、系統的に遂行する。
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Causes of Carryover |
3月実施の学会参加の旅費が平成30年度決済となったため。 加えて、小額の未消費の消耗品(試薬類)が発生したため。金額がわずかであるため、助成金の使用計画について変更はない。研究用試薬の購入等に使用する予定である。
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