2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of pressure induced single-component superconducors and Dirac materials
Project/Area Number |
17K05850
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
崔 亨波 国立研究開発法人理化学研究所, 加藤分子物性研究室, 研究員 (10425415)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 単一成分分子性導体 / 超高圧 / 電気抵抗測定 / 圧力誘起超伝導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
単一成分分子性結晶[M(hfdt)2](M= Au, Pd, Pt)の単結晶を作製し、圧力下電気抵抗測定を行い、その金属化について検討した。1)[Au(hfdt)2]結晶は、二つの[Au(hfdt)2]分子が弱いダイマーを形成し、末端のCF3基により伝導層が分離された2次元的積層構造を取っている。今回、ダイヤモンドアンビルセル(DAC)を用いた四端子法電気抵抗測定を行った結果、 [Au(hfdt)2]単結晶の常圧下室温電気伝導度(σrt)は8 x 10-3 S cm-1、活性化エネルギー(Ea)は120 meVであった。室温抵抗率は加圧とともにゆっくり減少し15 GPa付近で一定値に到達した後、ほとんど圧力依存性を示さない。一方、Eaは20 GPa以上でも徐々に減少し、金属状態を実現するためには更に高い圧力が必要と考えている。2)[Pd(hfdt)2]結晶は、[Pd(hfdt)2]分子が強い二量体を形成し層状構造を持つ。単結晶を用いて面内の伝導度を測定した結果、σrtは1.8 x 10-3 S cm-1、Eaは155 meV であった。圧力印加による電気抵抗とEaの急激な変化は観測されず、19.8 GPaでも半導体であった。しかし、面間方向に抗測定を行った結果、圧力印加の影響が著しく、10 GPaでは金属領域が現れ、70 Kまで金属状態を保つことを発見した。3) [Pt(hfdt)2]は[Ni(hfdt)2]と同型構造であり、常圧のσrtは9 x 10-4 S cm-1、Eaは215 meVであった。室温電気抵抗率とEaは加圧と共に急激に減少し、9 GPaでは金属領域が現れ、11 GPaでは、金属状態が更に低い温度まで安定化され、5 K付近では電気抵抗が一旦上昇してから減少する。第一原理バンド計算を行った結果、8 GPaで金属バンドを形成することが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は計画通り、圧力誘起単一成分分子性超伝導体である[Ni(hfdt)2]の中心金属をAu, Pd, Ptに置換した結晶作製を行った。 [Au(hfdt)2]と[Pd(hfdt)2]の結晶構造は報告済みであるが、四端子配線が可能な大きさの結晶が得られなかった。今回、結晶作製条件である溶媒の量、支持電解質、電極に流す電流値を細かく制御したことにより、四端子電気抵抗測定が十分の大きさの結晶作製に成功した。また、良質な[Pt(hfdt)2]単結晶を作製し、結晶構造解析を行った結果、[Ni(hfdt)2]と同型であることが判明した。作製した三種類の単結晶の高圧下電気抵抗測定を行った。1). [Au(hfdt)2]は常圧で半導体であり、23.1GPaの圧力を印加しても金属状態が得られなかった。しかし、バンド計算を行った結果、常圧ですでに金属的バンド構造が得られ、電気抵抗測定結果と一致しない結果となった。2). [Pd(hfdt)2]単結晶の面内方向に電流を長いして抵抗測定を行った結果、19.8 GPaまで加圧しても半導体のままであった。しかし、面間方向に電流を流して抵抗測定を行ったところ、10GPaで金属領域が現れるという新しい現象を発見した。3). [Pt(hfdt)2]の圧力下電気抵抗測定結果は[Ni(hfdt)2]とほぼ同じ圧力と温度依存性を示した。しかし、結晶性が悪いため、11GPaにおいての5 K付近の電気抵抗減少が確認できたものの、抵抗の変化が非常に小さい結果が得られた。三種類の錯体の完全な物性解明には、良質な結晶を作製と詳細な再測定が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の継続として、1)良質な[Pt(hfdt)2]単結晶を作製し、圧力下電気抵抗の再測定を行い、超伝導転移の探索を行う。特に、5 K付近において抵抗の減少が確認された11 GPa付近の圧力下での電気抵抗の温度依存性を詳細に調べる。また、面間方向での電気抵抗の圧力依存性を測定し、面内方向の測定結果と比較することにより、新しい物性探索を行う。2)[Pt(hfdt)2] と[Pd(hfdt)2]の超高圧下単結晶構造解析を行う。圧力下における電気抵抗測定において、電気抵抗の大きい変化は構造変化を伴う場合が多く、新たに発見した面内抵抗と面間抵抗の圧力依存性が異なる原因を圧力下構造解析することにより解明する予定である。3)計画通り、分子が2次元的に配列している[Ni(SMe2dt)2]の大型単結晶作製を試みる。SMe2dt配位子を合成し、単一成分分子性結晶を作成するための原料を合成する。 [Ni(SMe2dt)2]単結晶の作製を始め、中心金属のAu, Pd, Ptへの置換も同時に試みる。[Ni(SMe2dt)2]単結晶作製が難しいことから、結晶作製条件を詳細に探索する必要がある。そのためには、結晶作製条件を細かく調整を行うことにより、大型単結晶が作製できる条件を探索する予定である。それ以外に、圧力誘起ディラック電子系である[Pd(dddt)2]のdddt配位子と形状と大きさが似たddt, dddse, edo等の配位子と中心金属のNi, Au, Pd, Ptの単一成分分子性結晶作製を試み、作製した結晶の構造解析と圧力下電気抵抗測定を行う予定である。
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