2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of pressure induced single-component superconducors and Dirac materials
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17K05850
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
崔 亨波 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (10425415)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 単一成分分子性伝導体 / 超高圧 / 伝導性 / 高圧下結晶構造 / ダイヤモンドアンビルセル |
Outline of Annual Research Achievements |
1)圧力下ディラック電子系を発見した単一成分分子性結晶[Pd(dddt)2] と同型である[Ni(dddt)2] の圧力下における金属化について検討した。[Ni(dddt)2]単結晶の電気抵抗を21.6 GPaまで測定し、放射光施設を利用して圧力下単結晶構造解析を11.6 GPaまで行い、第一原理手法を持ちてバンド計算を行うことにより、高圧下における[Ni(dddt)2] 電子状態を明らかにしたので論文にまとめた。2)[Pd(dddt)2]に使用した配位子dddtのSe誘導体配位子dddsを用いて中性の[Ni(ddds)2]単結晶を作製し、圧力下電気的性質および単結晶構造解析を行った。結晶中、[Ni(ddds)2]分子は強いNi-Se結合を持つ二量体を形成し、二量体はa軸方向に積層する。DAC を用いた電気抵抗測定を行った。低い圧力領域では、抵抗率と活性化エネルギーは加圧とともに急激に減少し、DACを用いた高圧下単結晶構造解析を行った結果、高圧力において二量体内のNi-Se結合が消失し、Ni-Ni結合が新たに生成する構造相転移が起こることが判明した。3) [Au(dddt)2]と [Au(ddds)2]の単一成分分子性結晶を作製し、電気的性質を 20 GPaまで測定し、その金属化について検討した。二種類の結晶と同型構造を持つ[Pt(dddt)2]結晶は、常圧で半導体であるが、9.6 GPaでは2 Kまで金属状態を示し、それ以上の圧力を印加すると金属-絶縁化転移が起きる。DACを用いた高圧下単結晶構造解析を行った結果、このMI転移が構造相転移に由来することが判明した。今回作製した二種類の結晶は、全ての測定した圧力領域で半導体であり、高圧下での構造相転移は起こらず、末端のエチル基が圧力下で大きく折れ曲がることを発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は計画通り、1)圧力誘起単一成分分子性超伝導体である[Ni(hfdt)2]の中心金属をPtに置換した[Pt(hfdt)2]結晶作製を行った。その結果、前年度に作成した結晶と構造と異なる[Ni(hfdt)2]と格子様子がさらに近い単結晶を作成した。圧力下電気抵抗測定結果はNi錯体の測定結果とよく似た温度依存性を示しているが、超伝導状態は確認できなかった。しかし、超伝導状態になる物質は試料依存性が強い傾向があるので、異なる試料作製条件を用いた単結晶を作製し、再測定を行う必要性がある。Pt錯体は大きいスピン軌道相互作用が期待できる物質であり、圧力下磁気抵抗測定を行なった。その結果、強い二次元スピン軌道相互作用物質の特有の低い磁場領域(~3 T)でスピン局在に由来する抵抗の減少が観測され、さらに高い磁場領域(> 4 T)ではディラック電子系の磁気抵抗の特徴である抵抗が磁場と直線的関係になることが判明した。ディラック電子系物質系のもう一つの特徴であるの移動度が大きい性質を確かめるため、今後ホール抵抗測定の必要性がある。 2)分子が2次元的に配列している[Ni(SMe2dt)2]の大型単結晶作製を試みたが、結晶と物性測定が可能な大型単結晶が得られなかった。そこで、協力研究者から配位子の形状が一緒で、末端のSMeの代わりにエチル基を投入したdedt配位子を用いて[M(dedt)2](M=Pd, Au)の単結晶を作製した。結晶構は報告されている[Ni(SMe2dt)2]と同型であった。しかし、常圧では両錯体は半導体であり、21.9 GPaまで加圧しても半導体のままであった。分子は結晶中二次元的に積層しているため、測定する方向に電気的性質が大きく異なることが予想されるので、今後、軸方向依存性の測定を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の継続として、1)良質な[Pt(hfdt)2]単結晶を作製し、圧力下電気抵抗の再測定を行い、超伝導転移があるかを探索する。超伝導状態を発見した[Ni(hfdt)2]は作製条件が異なる試料では超伝導状態が確認できない試料もあるので、今までと異なる条件で単結晶を作製する。また、昨年磁気抵抗測定を通じて発見したスピン軌道相互作用による局在化についてホール係数測定を通じて検討を行う。2)前年度に作成した[Pd(dedt)2] 単結晶の良質な試料作製を始め、中心金属のAu, Pd, Ptへの置換も同時に試みる。また、[Pd(dedt)2]単結晶の面間抵抗測定を行い分子が並ぶ方向が電気抵抗に及ぼす影響を詳細に検討する。3)前年度の継続として、[Ni(SMe2dt)2]単結晶の作製の溶媒、支持電解質、温度、電流値などの条件をさらに広げて、中心金属のAu, Pd, Ptへの置換も同時に試みる。4)圧力誘起ディラック電子系である[Pd(dddt)2]のdddt配位子と形状と大きさが似たddt, dddse, edo等の配位子と中心金属のAu, Pd, Ptの単一成分分子性結晶作製を試み、得られた結晶の常圧下および高圧下での結晶構造と電気抵抗測定を行う。
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Research Products
(12 results)