2017 Fiscal Year Research-status Report
新規なホウ素種/亜鉛交換反応を用いる環境調和型不斉スピロ環構築法の開発
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17K05858
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
依田 秀実 静岡大学, 工学部, 教授 (20201072)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 雅樹 静岡大学, 工学部, 教授 (30313935)
仙石 哲也 静岡大学, 工学部, 准教授 (70451680)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アミドアリルボロン酸エステル / スピロ環 / キラルアミノフェノール / 亜鉛触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
アミド修飾されたアリルボロン酸エステルの合成を検討した。従来のアリルすず合成の手法に倣って調製した活性種をボロン酸とした後、ネオペンチルグリコールとピナコールによりボロン酸エステル誘導体とすることで、安定に単離することに成功した。特にネオペンチルグリコールから得られる誘導体は結晶性の極めてよい固体であり、長期保存に耐えうる化合物であることが明らかとなった。さらに、その結晶をX線構造解析により解析することで構造を再確認するとともに、ホウ素原子とアミド部位の相互作用がその安定性に寄与している可能性を明らかとした。 これらを用いた反応検討においては、ピナコール誘導体に比べネオペンチルグリコール誘導体が優位な反応性を示すことが明らかとなった。さらにイサチンとの反応において、添加剤を加えない場合はほとんど反応が進行しなかったのに対し、塩基性条件や亜鉛試薬を添加すると劇的に反応性が向上することが明らかとなった。また、亜鉛試薬を添加する系において、キラルアミノフェノール試薬を添加することで、極めて高い立体選択性にてアリルアルコール体を生成することを明らかとした。この反応は広範なイサチン基質に適用可能であり、従来のアリルすず試薬を使用するスピロオキシインドール合成法の代替として利用可能であった。 加えて、上記のアミドアリルボロン酸エステルの更なるスピロ環合成への利用を目指し、イミドとのアザスピロラクトン化へと適用した。この反応においても亜鉛種の添加は反応の成否に直結しており、アミドアリルボロン酸エステルによるカルボニル化合物への求核付加反応が亜鉛種により活性化されることを明らかとすることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
N-置換メタクリルアミドに対し、ジアニオンを経由するホウ素化反応を行い、さらにホウ素化された中間体をネオペンチルグリコールとピナコールでボロン酸エステルとした。これにより23~52%で純粋なアミドアリルボロン酸エステルを得た。得られた一連の生成物は大気中室温下で安定な固体であり、ネオペンチルグリコールから誘導される化合物は単結晶を与えた。これをX 線構造解析により分析したところ、カルボニル基の酸素原子とホウ素原子が近接していることが明らかとなった。 合成したアミドアリルボロン酸エステルをイサチンと作用させたところ、トルエン溶媒中添加剤を加えない場合は極めて低い収率であったのに対し、触媒量のジエチル亜鉛を添加すると、劇的に反応性が向上し、97%の付加体を与えた。続く不斉触媒反応の検討では、キラルジオールを添加した場合、生成物のエナンチオマー過剰率に偏りはみられなかった。他方、L-バリンより誘導したアミノフェノールを用いると飛躍的な反応効率の向上が確認され、クロロホルム溶媒中にて-30℃下でも3時間で反応が完結した。この反応で得られた生成物のエナンチオマー過剰率は89% eeであり、極めて高いエナンチオ選択性で反応が進行していた。また、アミノフェノール上のアミド窒素原子上の置換基を2,4,6-トリメチルベンジル基へと変換したところ、エナンチオ選択性が向上し、92% eeの目的物を収率95%で与えた。さらにラセミ合成ではあるものの、イミドとの反応においてアザスピロ-γ-ラクトンを与えることも確認しており、この反応系でも亜鉛添加剤が有効であることを明らかとした。 これらの結果は、亜鉛種がアミドアリルボロン酸エステルを利用する反応において良好な触媒として機能していることを示しており、今後の反応開発において極めて重要な成果である。このことから、当該研究は概ね順調に進展したものと判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
現状において合成したアミドアリルボロン酸エステルのイミドに対するアザスピロラクトン化反応は成功しているが、エナンチオ選択的反応の成功には至っていない。平成30年度はより有効な不斉反応場を構築する配位子構造の探索を目指し、更なる不斉スピロ環合成法の開発研究を進める。亜鉛試薬に新たな金属添加剤を加える協働触媒系も視野に入れて調査を進める。また、アミノフェノール上の置換基について更なる調査を進め、アダマンチル基の導入による立体障害の向上や長鎖アルキル基の導入による脂溶性の向上と不斉誘導との関係を調査する。
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