2017 Fiscal Year Research-status Report
電子移動型反応による有機窒素活性種の新規発生法開発
Project/Area Number |
17K05861
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡本 和紘 京都大学, 工学研究科, 助教 (30552658)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 鉄触媒 / コバルト触媒 / オキシムエステル / ラジカル / 含窒素複素環 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では一電子移動を鍵とする電子移動型反応の研究手法を取 り入れることにより,反応効率が高い含窒素環状骨格の新規合成法の開発を目標として研究を行った.貴金属触媒としてパラジウム,ロジウム,ルテニウム,イリジウムにおける変換手法を既に達成していたため,第三周期の後周期遷移金属である鉄およびコバルトに焦点を当てて研究を行った.コバルト触媒を用いて当研究室で開発した環状オキシムエステルを反応させたところ,脱炭酸による活性中間体の生成と続く分子内のアルケンとの環化付加により二環式アジリジンが得られることがわかった.ヨウ化コバルト種を触媒前駆体として用いた場合には電子移動型反応に伴う骨格転位が起こり,アザ二環式シクロプロパンを与えることを見出した.これは貴金属触媒で得られていたいずれの生成物とも異なっており,第一遷移金属の特性を活かした反応開発に成功したと言える. さらに,鉄を触媒とした場合には鎖状オキシムエステルとの反応において新たな反応性を見出した.鎖状オキシムエステルはパラジウムなどの遷移金属触媒,および一電子還元剤などの作用によってもそのN-O結合が開裂することが知られており,含窒素化合物の合成において近年有用なツールとなりつつある.しかしながらこれまでは鉄を触媒とする反応はほとんど知られていなかった.鉄を触媒としてアルケン部位を有する鎖状オキシムエステルとの反応を行ったところ,N-O結合切断,アルケンとの分子内環化によってラジカル性を持ったアルキル鉄種が生成し,これが系中に共存する芳香族炭化水素と反応し,Homolytic Aromatic Substitution(HAS:均等開裂型芳香族置換反応)が起こることを見出した.本反応はベンゼンやクロロベンゼンのような単純な芳香族炭化水素でも進行し,対応するアリール化体を効率よく与えることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
コバルトや鉄などの第一遷移金属を用いる含窒素活性種の発生を鍵とする電子移動型有機合成反応について当初の目的を達成しただけでなく,HAS型反応のような難易度の高い反応を発見するに至った.これまでのパラジウムやロジウムなどの貴金属触媒を用いた反応の成果に加え,多数の成果を報告するに至ったことから,本研究は当初の計画以上に進行していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の残りの課題である,遷移金属触媒を用いない電子移動型反応について研究を進める.既に有機一電子酸化剤を用いた反応を開発中であり,そのような反応の適用範囲の拡大や不斉合成への応用などを含め,本研究課題を早期に達成することを目標とする.
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Research Products
(15 results)