2017 Fiscal Year Research-status Report
有機合成化学を基盤とした生物活性天然物の構造決定と構造活性相関の解明
Project/Area Number |
17K05862
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
高村 浩由 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (70422798)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大野 修 工学院大学, 先進工学部, 准教授 (20436992)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 有機合成化学 / 立体化学 / 生物活性 / 天然物 / 全合成 / 発散的合成 / 構造解明 / 構造活性相関 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物活性天然物の構造解明は極めて重要な研究課題である。構造解明は、構造活性相関に関する重要な知見を与え、活性発現部位の特定、分子プローブの設計および合成、生体内標的分子の同定、作用機序の解明、高活性人工類縁体の創製へと研究展開が可能となるからである。本研究では、立体構造が未決定の生物活性天然物を研究対象とし、合成化学的手法を用いることで、その立体構造を決定する。さらに、合成品を用いて生物活性評価を行うことで、その構造活性相関を解明する。平成29年度の研究実績を以下に記載する。 1. 分子量2,860を有するシンビオジノライドの構造解明について検討した。立体化学が未決定であるC61-C74フラグメントの2つの候補化合物を立体発散的に合成することに成功した。これら2つの合成品と天然物とのNMRデータの比較を行うことで、本フラグメントの相対立体配置を明らかにすることができた。 2. 海洋産天然物6-クロロテトラヒドロフランアセトゲニンの6位の立体化学は不明であった。そこで、6位に関する2つの立体異性体を合成終盤において作り分ける合成ルートにて、これらの全合成を完了した。本全合成により、天然物の絶対立体配置を決定することに成功した。 3. 海洋産ジテルペンであるサルコフィトノライドJの構造決定について検討した。まずは、本天然物のNMRデータを詳細に解析することで、その真の構造を予測した。次に、渡環型閉環メタセシスを鍵反応に用いることで、この予測構造の全合成を完遂した。本全合成により、サルコフィトノライドJの真の絶対立体化学を解明することができた。 4. 天然物サルコフィトノライド類を構造基盤として、ゲラニオール-ブテノライド ハイブリッド分子を設計した。8つのハイブリッド分子を発散的に合成し、これらを用いて生物活性評価を行った結果、これらはいずれも付着阻害活性を有することが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、シンビオジノライドC61-C74フラグメントおよび6-クロロテトラヒドロフランアセトゲニンの立体発散的合成と立体構造決定を完了した。また、サルコフィトノライドJの立体構造を予測し、全合成を完遂することで本天然物の真の絶対立体配置を解明した。さらに、天然物サルコフィトノライド類を構造基盤としてゲラニオール-ブテノライド ハイブリッド分子を設計した。続いて、これらを合成し生物活性評価を行うことで、新たな付着阻害活性分子を創製することに成功した。 これらは当初予定していた以上の結果であり、本研究は計画以上に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も本年度と同様、立体構造未解明天然物を研究対象とし、合成化学的手法を用いることでその構造解明を検討する。さらに、合成した各種類縁体を用いて生物活性評価を行うことで、構造と活性との相関を解明する。
|
Causes of Carryover |
研究が計画以上に円滑に進展したため。 次年度の研究費は、薬品や溶媒などの消耗品費、および学会参加に伴う旅費として使用する予定である。
|
Research Products
(12 results)