2017 Fiscal Year Research-status Report
Convergent Synthesis of Marine Natural Products by Using Intramolecular Allylation as a Key Step
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17K05863
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
門田 功 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (30250666)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | シガトキシン / ダクチロライド / 天然物 / ポリ環状エーテル / マクロライド / 全合成 / 分子内アリル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
まずシガトキシンCTX3Cの合成研究を行った。この化合物は海洋産の渦鞭毛藻が生産する神経毒であり、大規模な食中毒シガテラの原因物質の一つである。本年度は、分子左側に相当するA-E環部の合成を行った。この化合物は、以前に分子内アリル化反応と閉環メタセシスを用いることで合成に成功しているフラグメントであるが、今回、全合成に向けてさらなる検討を行い、8員環エーテルであるE環部の、より短段階での合成法を達成した。以前はアルドール反応と閉環メタセシス反応を用いることで環状エーテル部分を合成していたが、立体選択性が低いため異性体の分離操作が必要となっていた。このことから大スケールでの合成が困難であったため、アリルスズとアルデヒドとの分子内反応を用いる合成法について検討を行い、不安定な環化前駆体を単離せずに次の環化反応を行う方法を開発した。これによって目的のE環部セグメントを単一の立体異性体として合成することに成功し、また、大量合成にも対応できるようになった。得られたE環部と、別途合成したAB環部との連結についても、鍵となるアリルスズ部分の導入部分に関して改善を行い、シガトキシンCTX3CのA-E環部を効率的に合成することに成功した。これと平行して、海洋産の抗腫瘍性マクロライドであるダクチロライドの合成についても検討した。不斉アリル化反応などを経て合成したアルコールフラグメントと文献記載の方法を参考に合成したカルボン酸フラグメントをエステル縮合した後、還元アセチル化によって環化前駆体であるαーアセトキシエーテルへと導いた。これに対してルイス酸を作用させることで分子内アリル化を行い、THP環部を立体選択的に構築した。最後にマクロラクトン化を行い、ダクチロライドの全合成を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シガトキシンCTX3Cの合成研究に関して、セグメントの連結を検討するには至っていないが、A-E環部の改良合成に成功した。ここでは8員環エーテルであるE環部の新たな合成法を確立できたことが重要であった。これによって大スケールでの合成が可能となり、全合成に必要な二大フラグメントの必要な量を準備することができた。このことは、全合成に向けて大きな実績といえる。さらに、分子内アリル化反応を鍵段階として、海洋産のマクロライドであるダクチロライドの全合成を達成することができた。鍵段階である分子間および分子内アリル化反応はどちらも極めて立体選択的に進行し、目的の化合物のみを与えた。これによって二つのフラグメントを効率よく連結することができ、極めて収束的であり、効率的な収束的な全合成を実現することができた。これらの成果は、申請者が開発した分子内アリル化を基盤とするエーテル環構築法の有用性と実用性を示す結果であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
シガトキシンCTX3Cについては、これまでの研究によって合成したH-M環部について、さらに保護基の変換などを行いカルボン酸とした後、A-E環部と縮合することで環化前駆体を合成する。これに対して分子内アリル化反応を行い、G環部の構築を行う。この段階では、かなり大きな分子同士の連結を行うため反応性の低下が予想される。そこで鍵反応であるアリル化反応については、モデル実験で得られた知見をもとに、脱離基としてアセチル基のほかチオフェニル基なども用い、ルイス酸についても種々検討して反応条件の最適化を図る。得られた環化体に対して閉環メタセシスを含む数段階の変換を行うことでF環を構築し、シガトキシンCTX3Cの全合成を目指す。また、分子内アリル化反応を用いたTHP環構築を利用して、海洋産天然物であるエニグマゾールAの合成研究を行う。この化合物は、パプアニューギニアに棲息する海綿から単離された抗腫瘍活性を有するマクロライドである。本研究では、そのマクロライド骨格をカルボン酸セグメントおよびアリルシラン部位を有するアルコールセグメントから収束的に合成する予定である。
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