2017 Fiscal Year Research-status Report
Borrowing Hydrogen法による芳香環側鎖の効率的修飾法の開発
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17K05870
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
大江 洋平 同志社大学, 生命医科学部, 准教授 (20512734)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アルキル化 / ルテニウム / 水素移動 / 均一系触媒反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
炭素求核剤のアルキル化反応は炭素骨格の拡張に重要な反応であるが,従来これらの反応にはアルキル化剤としてアルコールから導かれるハロゲン化アルキルおよびその等価体が用いられてきた。この種の反応では,通常,等モルの対応する酸が副生し,原子効率は低く,またアトムエコノミーの観点からも必ずしも好ましくない。そのため,代替法としてアルコールをアルキル化剤とする触媒的なBorrowing Hydrogen法が考案された。この方法では,アルコールを直接アルキル化剤として用いることができ,かつ,脱離生成物は水のみとなる。我々のグループを含む様々な研究グループが種々の求核剤の温和で効率的なアルキル化反応を報告している。 本研究では,そのようなBorrowing Hydrogen法を利用する芳香環側鎖の効率的なアルキル化手法の開発を検討している。昨年度は,その研究の端緒を探るべく,メチル基をもつさまざまな芳香族化合物とベンジルアルコールとの反応をモデル反応とし,求核剤活性化の添加物および種々の反応条件の検討を行った。その結果,Borrowing Hydrogenプロセスを触媒するルテニウム錯体 (RuClH(CO)(PPh3)3) と側鎖メチル基を触媒的に活性化できる塩化インジウムを共存させると,2-メチルキノリンのメチル基を効率的にアルキル化できることがわかった (90% NMR yield)。このようにLewis酸との競争的なBorrowing Hydrogen型アルキル化は報告されていない。そのほかの検討では,ジオールをアルキル化剤とする炭素求核剤のシクロアルキル化は,それほど効果的には進まなかったが,その副反応についても精査し,Borrowing Hydrogenプロセスで生じたアルデヒドの不均化,ジオールからのラクトンの生成が問題であることを明らかにし,今後の検討への指針を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の通り,新奇な触媒系を見出すことができたことで,次年度以降に進める予定にしている不斉合成やπ拡張反応の基礎を築くことができたため,これらに関しては予定通りに研究を進められる。一方で,ヘテロ環ではない芳香族類に関しては,それほど効果的な系が見いだせておらず,その部分の検討は不十分である。また、シクロアルキル化については効率的な系は見つかっていないが、副反応の精査が出来たため、効率改善に向けた指針が立てられるようになった。以上の理由から,現状の評価をおおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の検討として, 1)ヘテロ環側鎖メチル基のアルキル化反応におけるヘテロ環化合物およびアルコール類の基質適用範囲の検討。 2)2-アルキルキノリンをモデル基質としたRu/In触媒系でのシクロアルキル基の導入,不斉アルキル化,酸化的反応によるπ系拡張反応の検討。 3)前年度に達成できなかった炭素芳香環の側鎖メチル基の効率的アルキル化に関する検討。 を行い,さまざまな芳香族化合物合成に有用な新規触媒手法の開発に取り組む。
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