2018 Fiscal Year Research-status Report
三次元磁場配向ユニットを備えたin-situ固体NMRシステムの構築
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17K05882
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
久住 亮介 京都大学, 農学研究科, 助教 (70546530)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 固体NMR / 磁場配向 / 微結晶懸濁体 / in situ測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,固体NMRの強磁場を活用して異方性化合物の三次元磁場配向をNMRプローブ内で達成し,液状媒体中での単結晶構造解析とダイナミクス評価を実現するin-situ磁場配向NMRシステムを構築することを目的としている.当初の研究計画に基づき,平成30年度には主に次の課題を遂行した. 課題(A) 三次元磁場配向プローブの作製とin-situ磁場配向NMR法の確立 前年度からの課題として,まず作製したプローブ内での微結晶の三次元配向の達成とNMR信号の検出を試みた.L-アラニン微結晶懸濁液をモデル試料とし,磁場配向には間欠回転磁場を選択した.RFパルスが試料管の間欠回転に同期して照射されるよう実験条件を調整し,パルス照射とFID信号の取り込みのタイミングを変化させた一連の固体13C CP NMRスペクトルを収集した.その結果,パルス照射・信号取り込みのタイミングを変化させるにつれて,L-アラニンの各構成炭素由来の化学シフトが連続的にシフトする様子が観測された.この結果は従来の単結晶法による結果をシミュレートしたものと良く一致していたことから,NMRの強磁場を利用した微結晶磁場配向懸濁体からの単結晶NMR測定に成功したと言える.さらに,13Cラベル化したL-アラニン微結晶を用いて同様の実験を行なったところ,微結晶の三次元配向化が進行する過程を観測することにも成功した. 課題(B) In-situ磁場配向NMRによる高分子単結晶の構造・ダイナミクス解析 課題(A)で達成した微結晶磁場配向懸濁体からの単結晶NMR測定に供するべく,まずマボヤ由来のセルロース原試料を酸加水分解等により微細化し,セルロースナノ結晶を作製した.また,セロデキストリンホスホリラーゼを用いた酵素触媒重合によりセルロースオリゴマーを合成し,結晶表面にアジ基が導入されたセルロースIIラメラ結晶を作製した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題は,次の2つの小課題にて構成されている.課題(A),三次元磁場配向プローブの作製とin-situ磁場配向NMR法の確立;課題(B),in-situ磁場配向NMRによる高分子単結晶の構造・ダイナミクス解析.二年目にあたる平成30年度には,前年度に確立したin-situ磁場配向NMR法を汎用高分子結晶や天然高分子結晶,タンパク質結晶へと適用して,単結晶の構造・ダイナミクス解析が困難な物質への応用展開を図る計画であった.しかしながら前29年度の状況報告書に記した通り,課題(A)において磁場配向プローブの組み上げやラジオ波照射条件の調整部分の不具合の解決に時間がかかり,その遅れが30年度内においても解消できていない状況である.ただし,前29年度の課題(A)の目標は,微結晶磁場配向懸濁体からの単結晶NMR測定の成功をもって30年度内に達成されている.また,セルロース単結晶等の応用試料の準備はほぼ当初の予定通り順調に進んでいることから,30年度以降の目標も事業終了までに達成される見込みである.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度に引き続き,当初の研究計画に基づいて研究課題を遂行する.具体的には以下の通りである. 課題(B):藻類およびマボヤ由来のセルロースから得られたセルロースナノ結晶懸濁液をin-situ磁場配向NMR測定に供し,異方性の情報を基に既往のセルロース結晶構造を精密化する.平行して新規多糖である直鎖状α-1,3-グルカンについてもin-situ磁場配向NMRを適用し,局所構造の知見を集積してその高次凝集構造について理解を深める.また,汎用高分子結晶の例証試料としてポリエチレンテレフタレート(PET)を選択し,単結晶を析出させた希薄溶液をそのまま磁場配向プローブへと挿入して三次元配向下でのin-situ固体NMR解析を行う.異方性の評価により局所構造のデータを集積し,既往のPET結晶構造を精密化する.三次元配向下での緩和解析も行い,異方構造と分子運動の相関について議論する.さらに,オボアルブミンをモデルタンパク試料として31P核のin-situ磁場配向NMR測定を行い,同手法によるタンパク質の局所構造解析の可能性を探る.
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Causes of Carryover |
29年度において,本研究課題は当初の研究計画よりやや遅れた形で進展した.それに伴い,当該30年度内に調達するはずであった汎用/天然高分子,タンパク質試料などの発注も遅れ,次年度使用額が生じる結果となった.これらの試料は確立したin situ磁場配向NMR法の研究を進めるために必要不可欠なものであり,これらの調達費用として次年度の早い段階で使用する予定である.
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Remarks |
所属研究室のホームページ.
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Research Products
(17 results)