2017 Fiscal Year Research-status Report
シス・トランス光異性化を鍵とする高性能π共役系高分子の開発
Project/Area Number |
17K05883
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
脇岡 正幸 京都大学, 化学研究所, 助教 (50598844)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | π共役系高分子 / シス-トランス異性化 / 有機電界効果トランジスタ / 直接的アリール化重合 |
Outline of Annual Research Achievements |
高性能π共役系高分子半導体の要件である「結晶性 (電荷輸送特性)」と「成膜性 (溶解性)」は、トレード・オフの関係にある。本研究では、これらを同時に実現可能なポリマーとして、主鎖のビニレン部位がシス構造に制御されたドナー・アクセプター型ポリ(アリーレンビニレン) について検討を行った。 まず、有機電界効果トランジスタ (OFET) のp型半導体材料として優れた特性を示すことが知られるイソインディゴ (IID) と1,2-ジチエニルエテン (DTE) の交互共重合体 (P1) を標的とした。そのシス体およびトランス体について合成経路の確立を目指し、種々検討を行ったところ、直接的アリール化重合 (DArP) が有効であることがわかった。すなわち、IIDのジブロモ体と(Z)-および(E)-DTEとをPd2(dba)3とP(2-MeOC6H4)3、ピバル酸を組合せた申請者独自の高選択的DArP触媒の存在下で反応させることにより、高度に構造制御された高分子量ポリマーP1が得られた (cis up to 92%, trans >99%) 。得られたtrans-P1は、純度の高さを反映し、従来の合成法であるStilleカップリング重合で得られた生成物に比べて優れた電荷輸送特性を示すことがわかった。また、得られたcis-P1は、その溶解性の高さに起因し、trans-P1よりも優れた成膜性を示した。 続いて、cis-P1の異性化について検討を行ったところ、溶液中、ならびに、薄膜状態において光 (600-740 nm) を照射することにより、対応するtrans-P1へと片道異性化することが明らかとなった。さらに、検討を行ったところ、加熱条件下においては、光を照射せずともシス体からトランス体への片道異性化が起こることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の検討により、主鎖のビニレン部位がシス構造に制御されたドナー・アクセプター型ポリ(アリーレンビニレン) について合成法を確立できた。また、得られたシス体ポリマーが、薄膜状態においてトランス体へと片道異性化することを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の検討により得られたイソインディゴ (IID) と(Z)-1,2-ジチエニルエテン (DTE) の交互共重合体 (cis-P1) の薄膜から異性化により調製したtrans-P1の薄膜について、電荷輸送特性と結晶性、配向性を評価する。 また、初年度に確立した手法を用いて種々のドナー・アクセプター型ポリ(アリーレンビニレン) を合成し、そのシス-トランス異性化挙動と電荷輸送特性、結晶性、配向性を評価する。
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