2018 Fiscal Year Research-status Report
シス・トランス光異性化を鍵とする高性能π共役系高分子の開発
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17K05883
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
脇岡 正幸 京都大学, 化学研究所, 助教 (50598844)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | π共役系高分子 / シス-トランス異性化 / 有機電界効果トランジスタ / 直接的アリール化重合 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度は、有機電界効果トランジスタ (OFET) のp型半導体材料として優れた特性を示すことが知られるイソインディゴ (IID) と1,2-ジチエニルエテン (DTE) の交互共重合体 (P1) について、シス体の合成経路を確立するとともに、シス体からトランス体への熱異性化が薄膜状態において起こることを明らかにした。本年度は、(1) P1の熱異性化、ならびに、(2)合成法・熱異性化の一般性について検討した。 (1) cis-P1の薄膜状態における異性化について検討した結果、240 ℃以上で加熱することにより、ほぼ定量的にトランス体へと異性化することがわかった。また、cis-P1から熱異性化により調製したトランス体 (trans-P1_iso) の薄膜を用いて作成したFETは、高い正孔移動度を示した (別途合成したトランス体の薄膜を用いて作成したFETの移動度の約20倍)。薄膜をAFMにより調べたところ、trans-P1_isoの薄膜の均質性は高く、そのために高い移動度を示すことがわかった。以上のように、シス体はトランス体の優れた前駆体として機能することが明らかとなった。 2.前年度確立した合成法 (直接的アリール化重合 (DArP)) は、様々なシス体ポリマーの合成にも有効であることがわかった。例えば、ジケトピロロピロール (DPP) 誘導体とDTEの共重合体 (P2) について、従来の合成法であるStilleカップリング重合により得られた生成物は多くのホモカップリング欠陥を含んでいたのに対し、DArP生成物は構造欠陥をほとんど含んでいなかった。また、DArPにより得られたcis-P2は、薄膜状態においてトランス体へと熱異性化することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの検討により、主鎖のビニレン部位がシス構造に制御されたドナー・アクセプター型ポリ(アリーレンビニレン) の合成法を確立している。また、シス体ポリマーがトランス体の優れた前駆体として機能することも明らかにしている。このように、本研究は、当初の計画通り、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、確立した手法を用いて種々のドナー・アクセプター型ポリ(アリーレンビニレン) を合成し、そのシス-トランス異性化挙動と電荷輸送特性、結晶性、配向性を評価する。特に、溶解性の問題により、従来の合成手法では合成できなかったポリマーについて検討を行う。
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Research Products
(8 results)