2017 Fiscal Year Research-status Report
エキソメチレン型交差共役高分子を前駆体とする多彩なπ系高分子の合成と物性評価
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17K05891
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
小泉 俊雄 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 応用科学群, 教授 (60225349)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 交差共役化合物 / デンドラレン / クロスカップリング反応 / パラジウム触媒 / 凝集誘起発光 / Twisted-π共役 |
Outline of Annual Research Achievements |
エキソメチレンとしてアレン骨格や1,3-ブタジエン骨格をもつ交差共役型高分子の反応性や物性に関する研究を行なっている。 29年度は、1,3-ブタジエン(デンドラレン)骨格をもつ交差共役高分子の物性検討の一環として高分子ではなく低分子のジアリール[2]デンドラレン類の光物性を中心に検討を実施した。本検討を開始する端緒は、固体のジフェニル[2]デンドラレンにUV光を照射したところ、蛍光発光が観察されたことにある。溶液中では発光現象は観察されず、この予想外な現象に対して検討すべきであると判断したためである。各種スペクトル測定、単結晶X線構造解析、分子軌道計算等を行ったところ、ジフェニル[2]デンドラレンの発光はフェニル基間のThrough-Space共役が要因の1つである可能性が示された。キソメチレンを増やしたジフェニル[4]デンドラレンを合成して光物性を調べたところ、この場合も固体状態において緑色の発光が観測された。その結晶構造解析から、この [4]デンドラレンのフェニル基間は離れておりThrough-Space共役は不可能であることがわかった。そこで分子軌道計算を実施したところ、エキソメチレンのLUMOのπ軌道が69.28度もねじれながら重なっているTwisted-π共役であることが示された。このねじれたπ軌道の重なりが固体状態などの運動性が低いときに発現し発光が起こっていることが推測された。さらに意外なことに、芳香環をもたない[4]デンドラレンについても常温で油状であるにもかかわらず発光を示した。このデンドラレンもねじれた関係にあるLUMOのπ軌道間の軌道の重なりが観測された。このねじれたπ軌道の三次元的な重なりがデンドラレンの発光に寄与しているという推論が支持された。交差共役系化合物であるデンドラレンが凝集状態で発光することを世界で初めて見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
29年度の実施計画では、エキソメチレン型のアレン骨格を有する交差共役型高分子の合成とその高分子反応、並びに物性について検討する予定であったが、予想外の現象を検討するために、その多くは実施できなかった。しかし、「研究目的」の項で記載したように、交差共役化合物はその物理的性質に関して未解明な点が多く残っている。29年度の研究では、初めて固体のジフェニル[2]デンドラレンの発光現象を発見した。さらに、芳香環をもたない[4]デンドラレンについても常温で油状であるにもかかわらず発光を示すことを見出した。これらの成果は、広く交差共役化合物の化学において極めて重要な発見である。そうした観点から研究目的は概ね達成されたと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
30年度以降であるが、29年度に十分に実施できなかったエキソメチレン型のアレン骨格を有する交差共役型高分子の合成とその高分子反応、並びに物性について検討する。プロパルギル誘導体と芳香族ボロン酸との反応によってアレンが生成することは知られているが詳細な検討は行われていない。高分子を合成するためにはビスプロパルギル誘導体を用いる必要があるが、モデル反応において異性体構造であるプロパルギルがより多く生成することを見出している。そこで、ビスプロパルギル誘導体の分子設計および重合条件の詳細な検討を行う。重合条件の最適化が達成できたらアレン骨格への高分子反応を実施する予定である。 プロパルギル骨格の生成を抑制できない場合は、プロパルギル骨格をアレン骨格へ変換することを検討に加える。また、プロパルギル誘導体と芳香族ボロン酸とのモデル反応において添加する塩基の有無や塩基の強さなどによってアレンとプロパルギルの生成比が大きく変わる現象を見出しており、有機合成的観点からの検討も視野に入れる。
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Causes of Carryover |
主な理由は、物品購入等の要求総額(見積もり総額)が入札などにより実際の購入総額と異なり、実際の物品購入総額は物品要求総額より約31万円少なくなったことにある。また、購入希望であった試薬が在庫の関係で予定通りに購入できなかった点も理由の1つとしてあげられる。 残額として約31万円が生じた。この使用については、ガラス器具および試薬を中心とした消耗品に充てる予定である。また、執行状況をみながら専門書の購入や古くなってきたノート型パソコン等の備品の購入に充てることも考えている。さらに、30年度は海外出張の予定が入っており、出張旅費に充当にする。
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