2017 Fiscal Year Research-status Report
ハイブリッド型電気化学マイクロセルの構築と微量生体試料分析への応用
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17K05892
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石田 晃彦 北海道大学, 工学研究院, 助教 (20312382)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 電気化学分析 / フローセル / アレイ電極 / ウォールジェット電極 / 数値シミュレーション / 速度プロファイル |
Outline of Annual Research Achievements |
ハイブリッド型電気化学マイクロセルは,ウォールジェット型フローセルで円形流路の底面に微細加工した円形電極をそれぞれの中心軸が一致するよう設置したものである。流体は円形電極の中心に垂直に衝突したのち電極面に沿って放射状に流れる。本年度はこのような流れを形成する流路と円形電極の設計を行った。 1.円形流路の設計と作製 円形流路は,流体挙動のシミュレーションに基づいて設計した。実際には,円形流路の3次元モデリングを行い,この中の様々な位置での流体流れの方向と速さの有限要素シミュレーションを行った。流路の構造や寸法を変えて計算することにより良好に放射状流れが形成する流路デザインを見出した。さらに,その流路において放射状流れの有効範囲(電極直径に相当)を明らかにした。つづいて,この流路を溶媒耐性と機械強度をもつプラスチック樹脂にNC旋盤加工を施すことにより高精度で作製した。電極と流路の高精度な組み立てに位置決めピンを採用することにより,組み立ての繰り返しによる電極応答の再現性は数% (n=3)と良好であることを確認した。 2.電極形状の設計 本研究で設計した円形電極は,等間隔で配置した複数の同心円電極とそれらを結ぶ1本のリード線(電極としても作用)からなる同心円アレイ電極である。予備検討に基づいて同心円の線幅は内側から外側へ向かって減少するよう設計した。この電極形状が本研究の特色をなす。同心円アレイ電極は,基板に金薄膜を蒸着後,微細加工技術により作製した。同心円型アレイ電極の有効性を確認するため,上述の流路を用いてフローセルを組み立て,フローインジェクション方式で電気活性物質を注入してその電流応答を測定した。その電流値は,同心円アレイ電極の最大直径と同じ直径をもつ円盤型電極のものと同等であったが,電流密度については2倍以上となり,同心円アレイ電極の感度の高さが実証された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標は,本研究の両輪となる重要事項,すなわち放射状流れを形成する流路の設計と作製および同心円アレイ電極の優位性の確認であった。これらを実際に成し遂げたことが本年度の研究に対する評価の理由である。今後,同心円アレイ電極の詳細なデザインの検討は残されているが,本年度の段階でその検討方針も明らかになっており,その課題を次年度に遂行する際の障壁は低いと判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,上述の通り同心円アレイ電極の感度の高さを確認できた。次年度は,さらに高感度な同心円アレイ電極(デザイン)を明らかにすることを目標にする。その際,実験による検討には時間的かつ費用的限界があるため,流路の設計と同様に有限要素法による数値シミュレーションから得られた候補に対して実験的評価を行う。その評価においては,検量線の直線範囲,検出限界を基準にする。さらに,最も高感度な電極についてその感度の高さの原因を理論的に考察することも試みる予定である。
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Causes of Carryover |
最終年度で検討するハイブリッド型電気化学マイクロセルの応用展開を考慮して当初予定していた型式よりも上位の電気化学測定機器を購入したため,予定していたシミュレーションソフトウェアの購入を取りやめ前出の機器購入に充てた。これにより次年度使用額が発生した。シミュレーションについては所属機関が提供するサービスを利用することで対応した。発生した費用については,次年度に必要となる電極の作製費用の一部および予定していなかった学会での成果発表の参加費用に充てる予定である。
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