2017 Fiscal Year Research-status Report
キャピラリーセルを用いた超臨界CO2顕微分光測定によるモディファイヤー効果の解明
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17K05893
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
大橋 朗 茨城大学, 理学部, 准教授 (50344833)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 超臨界二酸化炭素 / 顕微共鳴ラマン分光法 / 水素結合 / キャピラリーセル / モディファイヤー |
Outline of Annual Research Achievements |
超臨界二酸化炭素相の顕微分光測定を簡便で安価に行える装置開発を目的とし、角型フューズドシリカキャピラリーをセルとして用いるSC-CO2相分光システムの開発を行った。開発した装置を用い、超臨界二酸化炭素のCO2の振動に起因する二つのバンド(波数1287 cm-1と1390cm-1付近)のCO2密度変化に伴う波数のシフトを観測し、本装置がSC-CO2相のラマンスペクトル測定に適用できることを確認した。水素結合供与性モディファイヤー添加による配位飽和金属錯体のSC-CO2相への溶解度向上の要因を明らかにするために、金属錯体に鉄(III)-アセチルアセトン錯体(Fe(acaac)3)、水素結合供与性モディファイヤーに2,2,2-トリフルオロエタノール(ROH)を用い、実験を行った。初めにROH添加に伴うSC-CO2相の性質変化を検討したところ、ROHが高濃度(0.1 M以上)にならなければCO2のラマンバンドの変化が観測できなかった。次にFe(acaac)3とROH間の相互作用について共鳴ラマン分光法により検討したところ、POHが低濃度の領域からラマンバンドの変化し、さらに、ROH濃度の増加に伴いFe(acaac)3のラマンバンドがシフトすることを観測した。これらの結果より、ROH添加に伴う金属錯体の溶解度向上の要因は、ROH添加によるSC-CO2相の極性変化などよりもFe(acaac)3とROH間の水素結合を介する相互作用が大きいことを示す結果となった。得られた結果は、モディファイヤー添加に伴うSC-CO2相のへの溶質溶解度向上の要因を明らかにするうえで、非常に有用な情報を与えたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であった角型フューズドシリカキャピラリーをセルとして用いるSC-CO2相分光システムの開発に成功した。また、開発した装置を用いることでSC-CO2相に溶解した化学種の顕微ラマン分光測定が行えることを示した。モディファイヤーや金属錯体の種類を変えた測定は、行うに至らなかった。予定していた研究計画のほとんどは達成できたことから、研究は、おおむね順調に進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
開発した装置の角型キャピラリーセルと背圧レギュレーターの間にマイクロHPLC用可視・紫外分光器を接続し、吸収スペクトルを測定することで超臨界二酸化炭素相に溶解した錯体の濃度を測定できるよう改良する。モディファイヤーの種類を変えた測定を行い、モディファイヤーの水素結合供与性(pKa)の違いが、ラマンスペクトルの変化に与える影響を明らかにする。また、無極性溶媒のヘキサン中での測定も行い、超臨界二酸化炭素系との相違を明らかにする。
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Causes of Carryover |
(理由)耐圧性のバルブや液化炭酸ガスなどの高額消耗品の購入費として見込んでいた予算が、若干余ってしまった。そのため次年度使用額として26,033円生じてしまったが、おおむね計画通りの予算執行を行った。研究はあと2年継続するものであり、不必要なものを購入するよりは、今年度の予算と合わせて、今後必要になるバルブや液化炭酸ガスなどの消耗品を購入するのにあてたほうがよいと考えたため、残予算が生じる結果となった。
(使用計画)26,033円と少額であるので、今年度予算と合わせて比較的高額なバルブや液化炭酸ガスなどの消耗品の購入費としてあてる予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Effects of Calcium Ions on the Thermostability and Spectroscopic Properties of the LH1-RC Complex from a New Thermophilic Purple Bacterium Allochromatium tepidum2017
Author(s)
Y. Kimura, S. Lyu, A. Okoshi, K. Okazaki, N. Nakamura, A. Ohashi, T. Ohno, M. Kobayashi, M. Imanishi, S. Takaichi, M. Madigan, Z.-Y. Wang-Otomo
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Journal Title
J. Phys. Chem. B
Volume: 121
Pages: 5025-5032
DOI
Peer Reviewed
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