2017 Fiscal Year Research-status Report
マイクロ空間制御分析による微粒子/溶液系の物質移動解析
Project/Area Number |
17K05894
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中谷 清治 筑波大学, 数理物質系, 教授 (00250415)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 細孔内拡散 / 物質移動 / 顕微分析 / 多孔性粒子 / シリカゲル |
Outline of Annual Research Achievements |
マイクロメートル空間での特徴的な拡散を利用し,分光学及び電気化学的に化学・物理プロセスを制御・計測する手法を確立し,クロマトグラフィーや固相抽出,触媒反応に関連した多孔性微粒子/溶液系のポア・表面拡散,粒子表面での細孔への取り込み・放出過程,粒子外物質移動等を定量的に解明することを目的とした。 光学顕微鏡にCW-YAGレーザーの1064 nm光を導入し,溶液中で直径3マイクロメートルの球状オクタデシル化学修飾シリカゲル粒子(C-18,細孔直径12 nm)をレーザー捕捉できるようにした。408 nmの半導体レーザー光を捕捉レーザー光と同軸で導入し,単一粒子に分配したクマリン101色素の蛍光スペクトルが測定できるようにした。簡易共焦点光学ユニットを設置したところ,通常の色素濃度では測定困難であったが,3マイクロメートルの単一粒子であれば粒子中の全ての色素を光退色や電気分解でき研究目的は達成できるので,単一粒子の顕微蛍光測定で行うこととした。高強度半導体レーザー光を単一粒子全体に高速シャッターで0.1秒間照射できるようにした。これにより粒子中の全てのクマリン101を退色させることが可能となった。さらに,低強度半導体レーザー光を用いて,周囲の溶液から微粒子に色素が取り込まれる過程が0.2秒間隔で蛍光計測できるようにした。この手法を用いて,溶液相からC-18中に蛍光色素が10秒程度で分配する速度を観測できるようになった。 細孔内拡散と粒子表面での細孔への取り込み及び粒子外物質移動を分離して議論するため,比較的大きなC-18粒子(直径40~60マイクロメートル)の中心近傍のみを光退色させ,細孔内拡散のみ観測した。細孔内拡散をポア-表面拡散モデルで解析したところ,表面拡散で細孔内拡散が進行していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は,単一多孔性微粒子をレーザー捕捉しながら,(1)高強度のレーザー光で単一粒子の蛍光色素を短時間(~0.1秒)で退色させ,周囲から微粒子に取り込まれる過程(蛍光回復する過程)を~0.1秒の時間分解能で計測できる手法,(2)水相中の蛍光色素を電気分解し色素の粒子からの放出過程を計測できる新規手法開発を目指した。(1)は予定通り作製し,大きな粒子の内部測定による細孔内拡散速度と小さな粒子での取り込み速度を比較検討する段階まで研究が進み,当初の計画以上に進展している。(2)は電気分解とともに単一微粒子の蛍光強度が減少することを確認しているが,現在,十分な時間分解能での測定には至っていない。これらの理由で,研究全体としては,おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
単一多孔性微粒子をレーザー捕捉しながら,高強度のレーザー光で単一粒子の蛍光色素を短時間で退色させ,周囲から微粒子に取り込まれる過程を計測できる手法開発は行えたので,微粒子への取り込み速度の混合溶媒効果,細孔サイズ効果について,詳細に検討する。 水相中の蛍光色素を電気分解し色素の粒子からの放出過程を計測できる手法については,用いる電極の最適化等を行い,十分な時間分解能で測定できた場合は,微粒子からの放出速度を,上記と同じ観点から詳細に検討する。 以上の研究結果をもとに,本手法の性能と有用性,多孔性粒子/溶液系における粒子外物質移動,粒子表面での細孔への取り込み・放出過程,細孔内での表面拡散とポア拡散等の関係を解明する。これら素過程の得られた速度論的データから,クロマトグラフィー等の多孔性粒子が関係する物質移動過程を考察する。
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