2017 Fiscal Year Research-status Report
Visualization of environmental toxicity by the genetically induced bioluminescence and fluorescence signals
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17K05899
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
柄谷 肇 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 教授 (10169659)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 悦 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 教授 (30159214) [Withdrawn]
布施 泰朗 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 助教 (90303932)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生物発光 / ルシフェラーゼ / 環境毒性物質 / 大腸菌 / 活性酸素種 / 呼吸阻害 / 蛍光タンパク質 / 生細胞可視化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ROS感受性プロモーター遺伝子katG’を使用することで、活性酸素種(ROS)を誘発する毒性物質の迅速スクリーニング法の確立と性能向上を目指した。具体的には、katG’をプロモーターと細菌生物発光関連遺伝子クラスター(lux遺伝子)を利用し、毒性物質の光シグナルセンシング法を検討した。 lux遺伝子クラスターはluxCDFEおよびG(全長7158 bp)よりなり、細菌ルシフェラーゼ反応関連タンパク質をコードする。lux遺伝子クラスターはPhotobacterium phosphoreum bmFP株由来のものを使用した。目的遺伝子用のプラスミドベクターはpETBlue-2を使用し、また宿主大腸菌にはE.coli-BL21(DE3)を使用した。まずlux遺伝子クラスターにおいて遺伝子機能が不明なluxGの有無について調べた結果、luxGが存在する系において感度が向上した。ところが一方、luxCDABFおよびEの系では遺伝子発現速度が相対的に速いことがわかった。luxGの有無については測定系の特徴に応じて選択することができるものと考えられた。本年度では特に、katG’をプロモーターとlux遺伝子クラスター間距離の調節を行い、定量的な評価は未解決であるが、距離が短いほど応答速度が増すことを確認した。 性能評価では、呼吸阻害副産物である過酸化水素を用いて生物発光応答を調べた結果、特に環境有害物質のカドミニウムイオンを共存する系で顕著な発光応答を得ることができた。さらに有毒性ヒ素物質については、その摂取により0.01ppm(上水の規制値)でも顕著な発光応答が観測され、本系が呼吸阻害性の環境毒性物質について有用性が高いことを示した。さらに、katG’と発光細菌由来青色蛍光タンパク質コード遺伝子(Y1-Blue)で形質転換した大腸菌による毒性物質の蛍光可視化についても検討を重ねた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
発現誘導物質として、標準物質としての過酸化水素(H2O2)を用いた性能評価より、目標とする1μM程度の過酸化水素に応答して発光することを見出した。さらに有毒性カドミニウムを所定量の過酸化水素水と混合した系では1ppm程度のカドミニウムイオンを検出することが可能であった。興味深いことには亜ヒ酸を添加した系において、発光誘導のメカニズムは不明であるが、大腸菌生物発光が惹起されることがわかった。 さらに、新しい手法として、katG'-lux遺伝子クラスター融合遺伝子をクローニングしたベクターで形質転換したE. coli BL21(DE3)をアルギン酸ゲルに固定化する手法を用いて毒性物質を可視化する手法を検討した。特に毒性物質ヒ素化合物を可視化する系では、特殊な好感度カメラを必要とすることなく、簡便な市販デジタルカメラでヒ素毒に起因するゲルの発光を捕らえることが可能となった。ゲルの形状は自在に変えることが可能であり、観測の目的に応じた使い分けができることも示唆された。 他方、蛍光可視化においてはモデル標準物質とした過酸化水素を添加した系では添加後数分でY1-Blueの青色蛍光の誘導が認められた。蛍光強度は過酸化水素の終濃度0.01mM~0.1mMの時に最大となった 。さらに、蛍光強度は、過酸化水素を添加後、 15~30 minでピークに到達することも判った。その後さらに30 min蛍光強度を維持することが判った。以上の結果から、Y1-Blueが過酸化水素の添加により迅速に誘導され、T7プロモーター系と同様に、katG’もまたY1-Blueの発現において強いプロモーターになることが判った。また、哺乳類細胞毒性の可視化へ応用可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
プロモーター系を種々変えることにより、多様な活性酸素誘導系への応用が可能になるものと示唆されることから、種々のプロモーター系と発光遺伝子系の融合遺伝子を作製する。それらをカセット的に取り換えて活用できる測定系を構築する。毒性ヒ素化合物など、種々の毒性物質の可視化系では、簡便な市販デジタルカメラで毒性を可視化する手法の確立を目指している。これを実現するには、katG'プロモーター系に限らずプロモーター系の性能向上が課題である。これを解決するため、遺伝子データベースを詳しく調べ、最も適切なプロモーターシーケンスを見出すと共に、lux遺伝子の融合遺伝子化を行いアルギン酸ゲルの系に適用する。また多検体にも対応できる測定計の構築を目指すと共に、画像データの処理機能を高める。また、発光応答と毒性物質の取り込み量の関係を詳しく調べることは不可欠であり、原子吸光分析法などを駆使してその相関性を解析する。 毒性物質の蛍光可視化においては、環境毒性毒性物質にのみ着目するだけでなく、細胞内毒性物質の蛍光可視化に挑戦する。この場合、哺乳類細胞を検討対象として加え、毒性物質の生細胞蛍光可視化法を検討する。ROS感受性遺伝子として、ROS-flu(flu、蛍光タンパク質コード遺伝子)、ROS-lux、 ROS-lux-fluなどを用いる。fluとして、発光細菌由来青色蛍光だけでなく黄色蛍光タンパク質コード遺伝子も使用する。ROS感受性遺伝子は、大腸菌系で構築したものから制限酵素で切り出し、一部改変して哺乳類用プラスミドに組み込む。哺乳類細胞への遺伝子導入に供するプラスミドにはGenScriptなど発現能が分裂後も安定して受け継がれるものを使用する。哺乳類細胞として、取り扱いが容易で増殖速度も速く、且つ導入遺伝子発現安定性が高いCHO細胞、HeLa細胞およびHEK293細胞を用いる予定である。
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Causes of Carryover |
実験の進捗状況と対応する試薬類の購入が予定していた金額よりも低額に抑えることができたことによる。結果的に、30年度において、申請時当初の計画に加えて新たな実験を加えることができる。
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