2017 Fiscal Year Research-status Report
複数の極性分離機構を同時に発現する高性能・高選択性HPLCカラムの開発
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17K05900
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
池上 亨 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 准教授 (20301252)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 液体クロマトグラフィー / 親水性相互作用クロマトグラフィー / 分離媒体 / 分離特性 / 重合修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
シリカの表面修飾に用いる重合反応の最適化と分離性能の関係の精査 シリカ粒子をポリアクリルアミドで機能化した分離媒体は、親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)分離媒体として様々なものが市販されている。申請者らの開発したテスト法で解析すると、アミド型の分離媒体は3種類以上のクラスターに分類できることが示された。フリーラジカル重合法(FRP)で調製したポリアクリルアミド修飾は、数平均分子量4万、重量平均分子量10~14万のポリアクリルアミドがシリカ上に結合した状態が分離機能の発現に必須であり、それよりポリマー鎖が短い場合、結合密度も下がり分離媒体としての性能は良くないことが示された。この状態で、ヒドロキシ基の選択性α(OH)は2.05であった。一方、シリカ粒子を原子移動型ラジカル重合(ATRP )で修飾した場合、FRPで得られたものとは全く異なり、シリカ粒子に結合したポリアクリルアミドの分子量はわずか8~9千に過ぎないが、α(OH) は2.3~2.5を示した。これは市販のHILICカラムと比べてはるかに大きな値である。k(ウリジン)も最大で9付近を示し、市販のカラムの2~5倍の親水性を示した。元素分析の結果、FRP型ではシリカ表面のシラノール500個あたりに1ポリマー鎖が結合しているが、ATRP型ではシラノール25個あたりに1ポリマー鎖が結合している計算になり、ポリマー鎖の高密度化が実現されていることが示された。またATRP型で得られるポリアクリルアミドの分子鎖長は、用いたシリカゲルの細孔サイズにほぼ一致するため、それ以上分子量が大きくならない現象と一致した。FRP型のアミドカラムは、中性からやや酸性の表面をもつカラムの分離挙動を示した。一方、ATRP型のアミドカラムは市販されているどのカラムとも違い、シリカ表面に濃縮される水の層が厚く、かつ酸性の分離特性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アクリルアミドの原子移動型ラジカル重合による修飾で、シリカ上のポリマー鎖の高密度化に成功した。また重合時に使用する触媒の使い分けによって反応速度の制御も可能になった。この方法で得られた分離媒体は、その分離特性が市販のどのアミド型カラムとも異なり、非常に高い親水性媒体として働くことから、実用化に向けて企業との共同研究も開始した。シリカゲルの重合修飾による機能化の開発と、ポリマー鎖と分離性能の相関に関する知見の蓄積が始まっており、当初の目標どおり研究が進行していると考えられる。 HILIC型、イオン交換型分離モードとキラル分離能を併せ持つカラムの調製も本研究の課題の一つである。これらの複数の機能を同時に発現する媒体を作製するため、エポキシドを含むモノマーを重合修飾し、求核種による開環による機能化を検討した。本年度はエポキシドを含むモノマーの重合修飾の精密制御を検討した。重合速度の制御は可能であったが、重合度が10を超えたあたりで成長が止まる傾向が見られた。アミノ酸によるエポキシドの開環は可能で、反応の前後で分離特性は変化するので所期の反応は起こっていることが確認された。しかし、現状の分離媒体では親水性の獲得にはまだ不十分なので、より良い重合系の探索が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
親水性相互作用型、イオン交換型、キラル分離型で理論段数10万段を発生させる 現在、シリカモノリス型キャピラリーカラムを用いる逆相分離では、理論段高4ミクロンが実現されている。一般的に、親水性相互作用型、イオン交換型、キラル分離型など分子間の強い相互作用を利用するクロマトグラフィーでは、理論段高は逆相型より高くなり、かつまた高速分離においては物質移動の抵抗が大きいため(相の間の平衡が遅いことに起因する)さらに性能の低下が予想される。原子移動ラジカル重合(ATRP)では、反応溶媒中では重合が起こらず、シリカ表面に結合した開始剤近傍でのみ重合が進行する。フリーラジカル重合(FRP)では粘度の高い溶液になるため洗浄困難となる条件は利用できず、結果的にシリカ上のポリマー密度や被覆率を高めることができなかった。ATRPではこの問題を解決できると考えられるので、シリカモノリスをATRPで重合修飾し、長いカラムの調製とそれに伴う超高理論段数の発現を目指す。これが実現できると、原理的にはモノマーを変えても同様の反応が期待できることから、さらなる機能化が実現できるものと考える。具体的には1mのカラムの修飾条件の検討を行なうことで、10万段の理論段数の提供を目指す。 糖のエナンチオマーの分離のため、ボロン酸等、糖と強く相互作用する官能基を組み込んだ分離媒体の開発にとりかかる。ATRPでは架橋剤の使用も可能だと考えられるので、よりポリマー鎖の運動の自由度を下げて、分子間の相互作用の方向を規制する技術を開発したい。
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Research Products
(7 results)