2018 Fiscal Year Research-status Report
複数の極性分離機構を同時に発現する高性能・高選択性HPLCカラムの開発
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17K05900
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
池上 亨 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 准教授 (20301252)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 液体クロマトグラフィー / 親水性相互作用クロマトグラフィー / 分離媒体 / 分離特性 / 重合修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
多種類の分離モードが混在するHPLC固定相の分離特性解析 いわゆるMixed mode型固定相は、疎水性相互作用、親水性相互作用、イオン交換相互作用などの分離機構が混在した状態で働く。これらの分離特性解析はまだ発展途上にある。今回、テュービンゲン大学のLae;mmerhofer教授との共同研究で、疎水性の項目、親水性の項目、イオン交換の項目を独立に測定し、三次元で表記する方法を提案するに至った。この方法は、逆相とアニオン交換のMixed mode型固定相や、カチオン交換と親水性相互作用クロマトグラフィーのMixed mode型固定相などに関して、それぞれの固定相の差異を表現でき、それぞれの固定相(カラム)の分離特性の違いを理解する手段として有用である。
シリカの表面修飾に用いる重合反応の最適化と分離性能の関係の精査 シリカ粒子をポリアクリルアミドで機能化した分離媒体は、親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)分離媒体として様々なものが市販されている。ポリ(アクリルアミド)結合型シリカ粒子充填剤を、表面開始原子移動ラジカル重合(SI-ATRP)によって調製し、HILICカラムを作製した。カラムの分離特性は、既存のHILICカラムテスト法によって評価した。ATRP による修飾のポリマー密度と鎖長の影響を調査するため、異なる空孔径を持つ多孔性シリカ粒子(10, 15, 20, 30 nm)をそれぞれ修飾した。OH基に対する選択性α(OH)で評価したところ、空孔径10 nmの粒子より15, 20 nmの粒子を用いたものが大きいα(OH)を与えることが示された。保持の大きさと選択性の面から、20 nmの粒子が最も良いと考えられる。この結果はHILIC固定相の有するOH基に対する選択性が、有機修飾部分の化学種のみならず、ポリマーの形態や含有率によっても改善されうることを示す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アクリルアミドの原子移動型ラジカル重合による修飾で、シリカ上のポリマー鎖の高密度化に成功した。また重合時に使用する触媒の使い分けによって反応速度の制御も可能になった。この方法で得られた分離媒体は、その分離特性が市販のどのアミド型カラムとも異なり、非常に高い親水性媒体として働くことから、実用化に向けて企業との共同研究も開始した。シリカゲルの重合修飾による機能化の開発と、ポリマー鎖と分離性能の相関に関する知見の蓄積が始まっており、当初の目標どおり研究が進行していると考えられる。 また、テトラゾール含有型モノマーを重合修飾した固定相に関しては、糖鎖の分離に有効であることを報告した。さらには分離が困難な単糖の異性体分離にも着手し、良好な結果を得ており、その高い親水性を活かした糖の分離が実現できている。特に、グラジエント分析を行った場合に、利用可能なアセトニトリル濃度が他の媒体より広いことが特徴であり、カラムヘッドにおける試料バンドの濃縮効果も高いため、これまでのHILICカラムの問題点を改善できる可能性が高い。2018年9月には、この分離媒体が市場に上梓され、世界中で販売が開始された。ペプチドの分離に用いた場合、他のHILICカラムに比べて保持時間が長いこと、塩基性の残基が多いペプチドは溶出が困難なほど強く保持されることなどが明らかになった。このことは、視点を変えれば塩基性の残基が多いペプチドとそれ以外を分離できる媒体として利用できると考えられるので、前処理用の分離媒体として今後の活用が期待される。 キラルな親水性モノマーの重合修飾は実現できたが、そのシリカ粒子の充填と対応するカラムの使用ではまだまだ問題点があることを認識した。
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Strategy for Future Research Activity |
親水性相互作用型、イオン交換型、キラル分離型で理論段数10万段を発生する アミノ酸をキラル源に用いたモノマーをシリカ粒子上にATRP によって修飾すると、良い分離特性が発現される条件では、シリカゲルに対するポリマーの部分が多すぎるためか、カラムの充填やその後の通液の段階でカラムの背圧が高くなりすぎる問題が発生した。この問題を解決するためには、より親水性が高く、かつキラル識別能が高いキラル源を探索する必要がある。この方向での検討を続けてゆく。糖のエナンチオマーの分離のため、糖と強く相互作用する官能基を組み込んだ分離媒体の開発が必要である。ATRPでは架橋剤の使用も可能だと考えられるので、よりポリマー鎖の運動の自由度を下げて、分子間の相互作用の方向を規制する技術を開発する。原子移動ラジカル重合(ATRP)では、シリカ表面に結合した開始剤近傍でのみ重合が進行することが知られており、シリカモノリスをATRPで重合修飾し、長いカラムの調製とそれに伴う超高理論段数の発現を目指す。これが実現できると、原理的にはモノマーを変えても同様の反応が期待できることから、さらなる機能化が実現できるものと考える。具体的には1mのカラムの修飾条件の検討を行なうことで、10万段の理論段数の提供を目指す。
糖鎖の分離の改善 現在、医療分野で注目されている抗体医薬は、分子量が既存の小分子医薬に比べて極めて大きいため、HPLCによる分離では、その全体が一度に固定相と相互作用することができない。抗体に含まれる糖鎖を精密に分離することは、その品質をコントロールする点から極めて重要であるが、HILIC以外の方法では困難なようである。HILICを用いた抗体の分離では、糖鎖の大小が保持時間を決めるようなので、その現象の解明に向けて高性能なHILIC分離媒体を調製し、その分離分析に貢献したい。
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Research Products
(8 results)
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[Presentation] Tohru Ikegami2018
Author(s)
Significantly High Hydrophilicity of a New HILIC Column Modified with Brush-Type Polyacrylamide: Relationship Between the Polymer Structure and the Chromatographic Characteristics
Organizer
ISC 2018 32nd International Symposium on Chromatography
Int'l Joint Research
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