2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of high-sensitive and high-precision measurement technique for magneto-optical effect by using an oscillating pulse magnet
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17K05901
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
諏訪 雅頼 大阪大学, 理学研究科, 助教 (90403097)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 減衰振動パルス磁場 / 磁気光学効果 / 高感度検出 / 磁気ナノ粒子 / 磁気誘起直線二色性 / 磁気配向 / 局所粘性 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に発見した,磁性ナノ粒子(MNP)分散液の減衰振動磁場中における吸光度変化現象について続けて研究を行った。減衰振動磁場の振幅や周波数,MNP分散媒粘度をパラメタとして詳細に吸光度変化を測定,解析を行った。その結果,個々のMNPは磁化容易軸とそれに平行な光軸を持ち,MNP自体が振動磁場中で物理的な配向と緩和を繰り返すことで吸光度変化が測定されたことが明らかとなった。即ち,光によりMNP自体の回転運動を調査できることが分かった。 上記の測定は光の進行方向と磁場が平行なファラデー配置で行った。しかし,光軸の磁場配向をより高感度に測定するためには,光と磁場が垂直なフォークト配置で磁気誘起直線二色性(MLD)を直接観測することが好ましい。これまでの空芯ソレノイドコイルに代わりスプリット型コイルを新たに構築し,直線偏光を磁場と垂直に試料に照射可能とした。さらに,直線二色性の小さい変化を鋭敏に測定するためウォラストンプリズムと差動増幅検出器を利用した。その結果,S/N比が15倍となり,以前の装置では測定できなかった球状マグネタイトMNPにおいてもMLDが測定できた。マグネタイトは等方的な結晶構造を持つため,一軸の磁化容易軸や光軸は持たない。電子顕微鏡観察により,わずかな形状異方性を持つことが確認され,アスペクト比と二色性の大きさに相関があることが分かった。MNP分散液のMLDは長年議論されており,二量体や鎖状の会合体がその原因であることが有力視されていた。しかし本研究で我々は単一MNPの配向でもMLDが生じることを実験的に示した。 さらに,ロックインアンプ(LA)を利用した減衰磁場中におけるMNP分散液のMLD検出も試みた。MLDは磁場の2倍の周波数で変化するので, LAの参照信号周波数をこれに合わせて差動増幅器からの信号を測定すると,極めて高感度な測定を達成できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・減衰振動磁場中におけるMNPの回転運動観測についての研究をまとめ,J. Appl. Phys.誌に論文を投稿,採択された。MNPをプローブとして用いれば,従来の方法では難しい1 um以下の微小空間における局所的粘弾性を光で調査可能と期待される。これは当初は予想していなかった成果である。 ・フォークト配置でMLDの直接観察に成功した。また,信号解析法を確立した。 ・さらにLAを用いることで,MNP分散液のMLDを極めて高感度に測定でき,極微量のMNPを検出することが可能であった。 以上の成果より,順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
・MNPをプローブとした局所粘弾性測定法の基礎検討 ハイドロゲルの網目構造内やリポソーム内水相にMNPを加え,MLD変化を測定する。微小領域内でのMNPの回転運動から局所的粘弾性の測定が可能であるか明らかにする。このような試料では光の散乱や損失が大きいと予想されるので,透過波長領域における磁気誘起複屈折(コットン‐モートン効果)測定も試みる。 ・様々なMNPの振動磁場中における回転挙動の解明 これまで,酸化鉄であるマグネタイトとマグヘマイトのナノ粒子分散液についてMLDを測定してきた。しかし前述のとおり,これらは等方的な結晶構造であるため,磁気異方性や光学異方性は小さい。そこで,異方的な結晶構造をもつFePtナノ粒子や,磁性ナノロッドを試料として用い,回転運動のサイズや異方性定数,飽和磁化依存性を調査する。 ・LA出力信号時間変化の詳細解析 減衰振動磁場によるMNP分散液のMLDをLAにより測定する場合,磁場の周波数の偶数倍にLAの参照信号周波数を合わせると,大きなシグナルが観測される。また,それぞれの出力信号は異なった時間変化を示す。これまではピークトップのみ解析を行ってきたが,時間変化を詳細に調査することで,MNPの回転運動をより詳細に測定可能と期待できる。そこで,信号をデコンボリューションし,MLD振幅の時間変化が追跡可能か明らかにする。
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Causes of Carryover |
既に試薬を発注したが,在庫切れで納期が新年度まで遅延したため,残額が生じた。
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Research Products
(6 results)