2018 Fiscal Year Research-status Report
グラフェンの水溶液内分散とミセル動電クロマトグラフィーによる化学的評価法の開発
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17K05903
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
高柳 俊夫 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (50263554)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | キャピラリーゾーン電気泳動法 / ミセル動電クロマトグラフィー / グラフェン / 水溶性カーボンナノドット / ポリスチレンスルホン酸イオン / 不可逆吸着 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,界面活性剤ミセルと水溶性高分子を用いて,疎水性・凝集性が高い炭素材料であるグラフェンを水溶液内に均一に分散させることを目的とした研究である. 本年度は,炭素クラスターのひとつであるカーボンナノドット(CND)について,キャピラリーゾーン電気泳動法(CZE)による分析法開発を進めた.グルタミン酸とホウ酸から合成されたCND,グルタミン酸から構成されたCNDについてCZE測定したところ,エレクトロフェログラム上に大きな1つのピークが主成分として観測され,比較的均一な電荷/質量比を有する陰イオン性CNDであることが分かった.中性~弱塩基性pHでほぼ一定の電気泳動移動度を有することから,表面にカルボン酸基を多数有することが示された.また,微量成分として電荷を有さないCNDも検出されたのでミセル動電クロマトグラフィーによる測定を行った.無電荷のCNDはミセルへの保持が弱いことから親水性が高いCNDであることが示された. また,ポリスチレンスルホン酸イオン(PSS)をグラフェンの分散剤に用いる検討も進めた.平均分子量70,000と1,000,000のPSSを検討したところ,平均分子量1,000,000のPSSでグラフェンの有効電気泳動移動度が大きいことから,長鎖のPSSはグラフェン吸着部分以外に溶液中に伸長した部分もあり,電荷/質量比が大きくなると考えられる.また,泳動液にPSSを添加しない場合でもグラフェンが見かけ上陰イオンとして電気泳動していることから,PSS鎖がグラフェン表面と多点相互作用することにより,グラフェンに吸着したPSSが脱着しない不可逆反応あるいは非常に遅い脱着反応であると考えられる.不可逆な吸着現象は,電気泳動分離によりPSSが吸着したグラフェンを余剰のPSSから分離できることを示唆しており,水分散グラフェンの新しい分離精製法としての可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
炭素材料であるグラフェンの水系溶媒への分散についてはPEG,PSS等の各種ポリマーを用いることが有効であることが示された.また,PSSの不可逆吸着は電気泳動分離により余剰のPSSを分離除去できることから水分散グラフェンの新しい精製法となりうる. 本研究の主題であるCZEによる水系溶媒への分散性評価は,同じ炭素ナノ材料であるカーボンナノチューブやカーボンナノドット等にも適用できており,研究を拡げることができた.電気泳動移動度を測定することで,CNDの電荷密度を知ることも可能であり,分離分析を組み合わせたCNDの新しい物性評価法としての進展が期待される. 以上のことから,現在までの進捗状況はおおむね順調である.
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Strategy for Future Research Activity |
グラフェンの水系溶媒への分散剤として,これまでに陰イオン性界面活性剤と非イオン性ポリマーの組み合わせ,陰イオン性ポリマーであるPSSを検討した.PSSは不可逆吸着の特長を有することから,PSS以外の陰イオン性ポリマーによるグラフェンの水溶液内分散についての検討を引き続き進める. また,マイクロ波照射法で合成した水溶性カーボンナノドット(CND)のキャラクタリゼーションを引き続き進める.合成原料としてグルタミン酸を主原料としてきたが,他のアミノ酸から合成される一連のCNDについて検討を進める.また,CNDをはじめとするナノ粒子は一般的な分子とは異なり様々なサイズや形状の集合体であることから,CZEにおける電気泳動移動度などは連続・分散した値をとる.疎水性相互作用などの分子間相互作用により,サイズや形状などの分散性がさらに拡がったり反対に均一化したりすることが予想されるので,相互作用試薬を添加したアフィニティーCZEを検討する. さらに,ナノ粒子の水系溶媒分散に関連する研究として,CZEによる金ナノ粒子のキャラクタリゼーションへと展開する.金ナノ粒子は様々な合成法があり,様々な金ナノ粒子が入手可能である.本研究では,液相プラズマにより生成される金ナノ粒子,クエン酸により安定化したナノ粒子等をCZEによる分離分析を通して電荷/質量比等のキャラクタリゼーションを行う.
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Causes of Carryover |
本年度分に必要な薬品,器具を十分調達できた.キャピラリー電気泳動装置は設置後15年以上を経過しており,不慮の故障修理に備える必要がある.本年度は大きな故障が生じなかったので,次年度使用額が生じた.繰越金は,電気泳動消耗品であるランプ,薬品の購入に用いる予定である.
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Research Products
(6 results)