2018 Fiscal Year Research-status Report
火山灰中のフッ素等有害微量元素のオンサイト分析を目指した簡易溶液化法開発
Project/Area Number |
17K05906
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
中島 常憲 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (70284908)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 火山灰 / フッ素 / 簡易前処理法 / オンサイト分析 / 酸素フラスコ燃焼法 |
Outline of Annual Research Achievements |
桜島などの火山から噴出される火山灰は、火山ガスに含まれるフッ素(F)を吸着し大気中へ放出される。火山灰に吸着したフッ素は火山灰とともに直接人体へ取り込まれ健康被害を引き起こし、堆積した火山灰が雨水などと接触した場合には環境を汚染する。よって、火山灰中の全フッ素含有量分析が重要であるが、火山灰のようにケイ素やアルミニウムを主成分とする無機固体試料は通常の酸分解では溶液化が困難であり、特にフッ素の分析においては、フッ酸を用いる分解法が適用できず、一般的な固体試料の元素分析法である蛍光X線分析でもフッ素のような軽元素は分析が困難である。 本研究では、複雑な装置を必要としない「酸素フラスコ燃焼法(OFC法)」による試料溶液化法により火山灰中に含まれる全フッ素濃度の簡便な分析法開発を目指し難燃性固体中フッ素のOFC法最適化条件の検討を行った。 H30年度は、文献調査などから火山灰に含まれるフッ素化合物を推定し、フッ化水素、フッ化カルシウム、フルオロケイ酸塩、フルオロアルミン酸塩のような形態で火山灰中に含まれていると推定した。上記フッ素化合物をモデル物質として使用し、OFC法による前処理を検討した。また、OFC法では可燃成分含有量の低い試料の燃焼が困難であるという欠点を克服するため、火山灰類似の難燃性固体試料として石炭灰を用いて、助燃剤を添加することを検討し、さらに試料中の難溶性フッ素化合物を反応させ、溶出させるために反応触媒の添加も検討した。フッ化カルシウムやフルオロアルミニウム塩の場合、融点や分解温度が高いため、助燃剤や反応触媒を添加しない場合はフッ素の回収率が低かったが、助燃剤、反応触媒の添加において、フッ素回収率の向上がみられた。 また、分解液中のF検出法として、ランタンアリザリンコンプレキソン法を適用することも試み、オンサイト分析に向けた検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、火山灰中のフッ素分析において、酸素フラスコ燃焼(OFC) 法を用いる簡便な溶液化法の開発に向けて、1.火山灰中のフッ素の存在形態の解明、2.OFC法における燃焼助剤の選定、3.反応触媒の選定、4. 最適化したOFC法の実試料への適用、5. オンサイト分析を目指したフッ素分析法の検討の5項目について検討を行っている。 H29~30年度では、項目1、2、3、5について検討を実施し、項目1については、X線回折法等により火山灰に含まれるフッ素化合物の存在形態を分析することを試みたが、フッ素化合物同定は困難であった。そこで、文献調査などにより火山灰に含まれるフッ素化合物として想定される化合物を推定を行い、3種のフッ素化合物をモデル物質として選定した。 項目2、3についてはH30年度において、推定したフッ素化合物をモデル物質として使用し、OFCを実施した結果、沸点や分解温度がOFCにおける燃焼温度以上と予想される、フッ化カルシウム、ヘキサフルオロアルミン酸ナトリウムといったフッ素化合物において、H29年度までに選定した助燃剤や反応触媒の効果が確認できた。 項目5については、OFCによる分解液中のFをオンサイトで分析する手法として、ランタンアリザリンコンプレキソンを用いる比色法の適用を検討し、共存するAlやFe等の影響が大きいことを明らかとし、その対策法としてマスキング剤の選定などを行った。現在、最適なマスキング剤の選定に時間がかかっている。適当なマスキング剤が見いだせない場合は計画を変更し、試料中のFの濃縮などを試みて、分析感度の向上を検討する予定である。 上記の様に、一部実験計画の見直しの為、進捗が遅れている部分があるが、研究課題全体 としては、おおむね順調な進捗状況といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
火山灰中に含まれるフッ素化合物の直接的な同定分析は困難であったため、文献調査により推定したフッ素化合物をモデル物質として用いて、模擬燃焼実験を行い、フッ素の放出(揮発)挙動とモデル物質中のフッ素放出挙動とを比較することで、火山灰中に含まれるフッ素化合物の化学形態を明らかにする。この際使用する、模擬燃焼実験装置の立ち上げに時間を要しているため、早急に装置を立ち上げ検討を行う。 また、火山灰類似の石炭灰のOFC法による処理には、助燃剤や反応触媒の添加が有効であることが分かったが、沸点の高い一部のモデル物質では、現在用いている助燃剤や反応触媒では充分なF回収率が得られていない。よって、助燃剤としては、高い燃焼熱を有するグラファイト、デンプン、パラフィン、アルコール等の添加を検討する。また、反応触媒についてもさらに効果的なものがないか検討する。 より効果的な助燃剤、反応触媒の最適条件を決定したのち、実際の火山灰中のF濃度を分析し、従来法である熱加水分解法との比較により、開発した手法の妥当性を確かめる。 さらに、オンサイト分析を目指した分析法の検討として、ランタンアリザリンコンプレキソン法による比色分析等の適用を検討しする。この際、共存するAlやFe、タングステン等の影響が大きいことを明らかとなったので、その対策法として金属イオンのマスキング剤の最適化を行う。クエン酸などの金属にキレート能を有するものを候補としている。適当なマスキング剤が見いだせない場合は、比色法を妨害する金属イオンを固相抽出法などで除去し、分解液中のFのみを濃縮回収することも検討し、分析感度の向上を検討する予定である。
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Research Products
(4 results)