2018 Fiscal Year Research-status Report
マトリックス効果を考慮した二次イオン質量分析イメージングの開発
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17K05908
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
青柳 里果 成蹊大学, 理工学部, 教授 (20339683)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | TOF-SIMS / マトリックス効果 / ペプチド / 脂質 |
Outline of Annual Research Achievements |
飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)は100nm程度の高い面分解能と数nmの深さ分解能で2次元及び3次元化学イメージングが得られる手法で、生体試料から高機能デバイスまで多様な分野への応用が期待されているが、共存物質による影響(マトリックス効果)のため、正確な定量が難しい場合もある。そこで、特に生体試料で問題となるタンパク質やペプチド由来の二次イオン強度への脂質の影響を調べ、さらにその補正方法を検討することにより、より正確なTOF-SIMSイメージングを可能とすることを目指して、研究を進めた。3成分系も含めて、複数のタンパク質およびペプチドの混合試料を調整し、TOF-SIMSおよび比較対象として、ほとんどフラグメント化を起こさない分子クラスターによるイオン化手法desorption/ionization induced by neutral cluster: DINeCによる測定を進めた。2017年度のデータも含め、測定が終了した混合試料データについて、マトリックス効果がどのように現れるか検討した。マトリックス効果は、注目する二次イオンによって効果の大きさが異なる。また、同じ脂質との混合試料でもペプチドによってマトリックス効果が異なり、増大される場合と抑制される場合のいずれも起こりうることが示された。さらに昨年度に引き続き、ペプチド脂質の混合系である生物試料の測定を高い質量分解能でピーク分離できるオービトラップおよびMSMSを搭載したOrbiSIMSで実施した。OrbiSIMSは、英国物理学研究所が所有する装置を用い、生物試料は、2017年度のデータの解析結果から、注目する因子をより効果的に取り出せるように、細胞をなるべく破壊しない手法で調整した。これらの成果は論文投稿と、学会発表を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に従って、3成分系以上の混合試料も含めて、複数のペプチド、脂質の混合試料を作製し、TOF-SIMSおよびDINeCでの測定を実施している。また、生体試料の測定もすでにある程度終わっており、解析に取りかかっている段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
3成分系も含めた混合モデル試料におけるマトリックス効果を評価できる指標を見つけ出し、2成分系に応用されていた補正方法を3成分系にも応用する。また、TOF-SIMS以外の測定方法によるマトリックス効果の大きさや有無を検討し、複数の測定データを相補的に解析することによって、マトリックス効果を補正できるか検討する。
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Causes of Carryover |
データの解析をおもに進めたため、試薬類の新たな購入や測定にかかる費用の一部が次年度に必要となったため。
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