2019 Fiscal Year Research-status Report
マトリックス効果を考慮した二次イオン質量分析イメージングの開発
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17K05908
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
青柳 里果 成蹊大学, 理工学部, 教授 (20339683)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | TOF-SIMS / マトリックス効果 / ペプチド / 脂質 / 有機EL材料 / L1正則化 |
Outline of Annual Research Achievements |
飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)における主な課題の一つであるマトリックス効果(共存物質によって二次イオン強度が変化し、定量性が損なわれることがある現象)についての基礎検討として、2018年度に続いて、ペプチドと脂質混合試料のTOF-SIMSデータを取得し、解析を進めた。脂質とペプチドの二成分系混合試料の解析では、L1正則化に基づくLASSO (least absolute shrinkage and selection operator) を用いて濃度応答性のある二次イオンを選択することに成功した。この成果は、2018年10月に第22回二次イオン質量分析国際会議(SIMS 22)で発表し、論文投稿した。同様の手法の脂質とペプチドの三成分混合試料への適用についても検討を始めた。2018年度から論文投稿準備を進めていたペプチド脂質の混合系である生物試料のOrbiSIMS (高い質量分解能でピーク分離できるオービトラップおよびMSMSを搭載したSIMS)による解析結果を論文投稿し採択された。さらに他の生物試料について、脂質の検出について検討をはじめ、その過程で得られた成果についての論文を投稿し、採択された。この試料データに関する脂質の検出については、2020年度も引き続き検討を続ける。さらに、有機電解発光(EL)素子の材料として使われる有機物mCBP(3,3-Di(9H-carbazol-9-yl)biphenyl)とIr(ppy)3(Tris(2-phenylpyridinato)iridium(III))の二成分系についてもマトリックス効果の検討を進め、基板も含めて三成分系としての検討をするためより薄膜化した試料を調整し、TOF-SIMS測定を開始した。これらのデータの解析は2020年度に行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に従って、試料調整、TOF-SIMS測定とそのデータ解析を実施し、国際学会および国際誌で発表した。2020年度の終了に向けて、さらなる試料調整とおもなTOF-SIMS測定も終了した。
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Strategy for Future Research Activity |
濃度応答性の高い二次イオンピークの選出にLASSOが有効であることが2019年度までの検討で示されたので、2020年度は他のさまざまな試料においても有効であるか検討する。また、情報エントロピーを用いた多成分系の解析に着手する。
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