2018 Fiscal Year Research-status Report
大気中にガス成分またはナノ粒子として存在する揮発性元素のリアルタイムモニタリング
Project/Area Number |
17K05909
|
Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
古田 直紀 中央大学, 理工学部, 教授 (90101055)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | PM0.1大気粉塵 / 揮発性元素 / ガス粒子化装置 / リアルタイムモニタリング / 発生源の解明 |
Outline of Annual Research Achievements |
大気粉塵の粒径分布は、数濃度で表すと、ナノ粒子(0.1 μm以下)が圧倒的に多い。その起源は、ディーゼル排気ガス粒子や焼却場飛灰などが考えられるが、最近では、工業的に生産されたナノ粒子も検出されたと報告されている [F. Kammer, et al., Environ. Toxicol. Chem., 31(1), 32-49 (2012).]。ナノ粒子は呼吸を通して肺の奥深くに入り込み、人体への影響が懸念されている[C. Chunying, et al., Nanotoxicology, 9(2), 181-189 (2015).]。本申請研究の目的は、粒径0.1 μm以下の大気粉塵(PM0.1)及びガス成分中に含まれる揮発性元素(ヒ素 (As), アンチモン(Sb), セレン(Se)等)をリアルタイムモニタリングし、その発生源を解明することにある。この研究の成果は、今後増加が予測されるナノ粒子の規制を策定する際の有用なデータを提供する。これまでの長期モニタリングでは大気粉塵を捕集してICP-OESやICP-MSで多元素を測定しているので、時々刻々と変化する大気粉塵の動態を把握することは困難であった。そこで、新たに開発されたガス交換器(GED)を用いることで、大気中の粒子を損失することなく、ガス分子を空気からArに交換した後に、ICP-MS装置に直接導入できるようにした。この試料導入システムをICP-MSと結合させることにより、大気粉塵中に含まれる微量元素をリアルタイムで測定することを可能にした。標準ガス発生装置と超音波ネブライザー(USN)を用い、ICP-MSの信号強度を校正し、多元素の定量を可能にした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①1.0 μmのインパクターを通った大気粉塵を更に0.1μmのPTFE製フィルターを通し、大気粉塵PM0.1のリアルタイムモニタリングを行った。29元素を同時モニタリングした結果、Zn, Sn, Pbは北西方向の豊島清掃工場からの風が吹いている時に同じ様な挙動を示した。また、VとMnは南方向の京浜工業地帯から風が吹いている時に、同じ挙動を示した。Sbは、交通量の多い朝と夕方に元素濃度が増加したので、自動車による排出源であると推定した。リアルタイムモニタリングをしながら同じ大気粉塵を孔径0.5 μmのPTFE製フィルターで捕集し、フィルター捕集データとリアルタイムモニタリングデータを比較した結果、大気粉塵中の酸化物融点の低いAs, V, Co(揮発性元素)は、フィルター捕集データの方が小さく、フィルターを通過してしまっていることが考えられた。これらの元素は、ガス状又は小さな微粒子に吸着された状態で存在すると考えられる。 ②大気中のガス状物質を測定する方法を確立するため、ヒ素を含むアルシン(AsH3)ガスの定量を試みた。AsH3をガス粒子化装置(GPD)を用いて粒子化した後、雰囲気ガスをガス交換器(GED)でアルゴンガスに変換しICP-MSで測定した。AsH3ガスの9.28 ppm標準ガス(市販品)を希釈し、ppbレベルの検量線用ガスを調整した。1-10 ppb AsH3において、相関係数が0.999と良い直線性の検量線が得られた。検出下限は6 ppt(19.2 ng/m3)及び定量下限は22 ppt(70.4 ng/m3)であった。
|
Strategy for Future Research Activity |
【2019年度の研究計画】 ①大気粉塵中のAsの濃度はppt(1桁ng/m-3)レベルである。2018年度に購入したAsH3標準ガスを希釈してpptレベルの検量線用ガスを調整し、ガス粒子化装置(GPD)とガス交換器(GED)を用いて、ICP-MSで測定する。予備的な実験を行ったところ、AsH3の濃度が低くなると、ガス粒子化効率が減少するようで、直線性の良い検量線が得られなかった。この実験の再現性を確かめ、ガス粒子化効率が悪いならば、それを改善する方法を考える。 ②レーザーアブレーションでガラス標準物質をアブレートし、生成したガス及び粒子を大気粉塵と見立てて、リアルタイムモニタリングを行う。リアルタイムモニタリングを行いながら、同じガス及び粒子をフィルターに捕集して、フィルター捕集データとリアルタイムモニタリングデータを比較する。そして、気化し易い元素(As, Se, Sb)が、フィルターに捕集されないガス状又は小さな微粒子に吸着された状態で存在することを証明する。 【平成2020年度の研究計画】 大気粉塵を、ガス粒子化装置(GPD)とガス交換器(GED)を用いてICP-MSで測定する。夏と冬にリアルタイムモニタリングを行う。大気粉塵PM0.1にすると、大気粉塵濃度が極微量になってしまうので、大気粉塵PM1.0の大気粉塵モニタリングを行うことにする。大気粉塵PM1.0の元素組成、気象要素との相関、統計的処理より大気粉塵PM1.0及び揮発性元素の起源を推定する。
|
Causes of Carryover |
ICP-MSで測定したリアルタイムモニタリングのデータを定量するために使用する超音波ネブライザー(U6000AT)の修理に時間がかかった為、リアルタイムモニタリングの実施ができなかった。その為、アルゴンガスの使用量が少なく済んだ。今年度、リアルタイムモニタリングを行い、少なく済んだアルゴンガスを使用する。
|