2020 Fiscal Year Research-status Report
大気中にガス成分またはナノ粒子として存在する揮発性元素のリアルタイムモニタリング
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17K05909
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
古田 直紀 中央大学, 理工学部, 教授 (90101055)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | PM0.1大気粉塵 / ガス粒子化装置(GPD) / ガス交換器(GED) / ICPMS / ガス状Asと粒子状As / 揮発性元素 / ナノサンプラー / 発生源の解明 |
Outline of Annual Research Achievements |
大気粉塵の粒径分布は、重量濃度で表すと、4 μmにピークを持つ粗大粒子と0.6 μmにピークを持つ微小粒子の二山存在する。一方、数濃度で表すと、ナノ粒子(0.1 μm以下の超微小粒子、PM0.1)が圧倒的に多い。我々は、日常、数濃度の高いナノ粒子を吸い込んでいる。その起源は、ディーゼル排ガス粒子や、(NH4)2SO4の二次発生源粒子であることが明らかになってきた。しかも、その(NH4)2SO4の二次発生源粒子は硫酸性液滴として大気中に存在していると推測される。ナノ粒子は呼吸を通して肺の奥深くに入り込み、人体への影響が懸念されている。本申請研究の目的は、粒径0.1 μm以下の大気粉塵(PM0.1)中、及びガス成分として存在する揮発性元素(ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、セレン(Se)等)をリアルタイムモニタリングし、揮発性元素の発生源を解明することにある。 Asのように揮発しやすい元素は、大気中で、ガス状として存在する場合と、極微粒子として存在する場合があり、大気粉塵中のAsをフィルター上に捕集しようとしたとき、フィルター上に捕集されずに通過してしまうことを実証した。口径0.1 μmのテフロンフィルターを通した大気粉塵中のAsを、ガス交換器(GED)-誘導結合プラズマ質量分析装置(ICPMS)で直接定量しようとしたが、粒子状Asの濃度が低すぎて測定不可能であった。そこで、1.0 μmのカスケードインパクターを用いて、1.0 μm以下の大気粉塵を選択し、GED-ICPMSに直接導入することで、大気粉塵中Asのスパイク状の信号を得ることができた。このスパイク状の信号を効率よく測定できるように、積分時間を10 msと短くして、信号対のノイズ比 (S/N)の良い信号を得た。検出下限は、Asとして1.00 fgであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
① ガス粒子化装置 (GPD) の粒子化効率の評価 ガス状のAsを測定できるようにするために、ガス粒子化装置 (GPD) を開発した。GPDでは、ガス状Asを硝酸アンモニウムNH4NO3ナノ粒子に吸着させ、ガスをナノ粒子に変換させる。ナノ粒子に変換させた後、ガス交換器 (GED) -ICPMSに導入すれば、ガス状のAsを測定することができる。テドラバッグ中にArガスで希釈したAs 10~1000 ppt のアルシンガス (AsH3ガス)をICPMSに直接導入した場合と、GPD-GED-ICPMSを用いてICPMSで測定した場合を比較して、GPDのガス粒子化効率を求めた。GPDのガス粒子化効率は100%であった。 ② GPD-GED-ICPMSによる5分間における大気中のガス状As濃度は、ブランクと同程度の信号であり、ガス状Asは検出できなかった。よって、大気中のガス状As濃度は、検出下限の0.49 ng/m3以下であることが分かった。 ③ 大気中のAs粒子をGED-ICPMSにより観測した。ICPMSの積分時間を10 msと短くすることにより、シグナル対ノイズ比 (S/N)を上げることができ、As粒子によるスパイク状信号を得ることができた。5分間における大気中の粒子状Asの平均濃度は、0.35 ng/m3であった。この濃度は、ナノサンプラーを用いて行ったPM0.5~1.0のモニタリングで得られたAsの平均濃度0.25 ng/m3とほぼ等しい値であった。
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Strategy for Future Research Activity |
① PM0.1の組成を重量濃度で表すと、1/3が熱分解・光学補正炭素分析計で測定した有機炭素と無機炭素で、1/3がイオンクロマトグラフィーで測定した硫酸アンモニウム塩で、残りの1/3がICPOESとICPMSで測定した酸素、ケイ素、アルミニウム、鉄などの主成分元素と微量元素である。
② 数濃度で表すと圧倒的に多いPM0.1の発生源は、ディーゼル排ガス粒子と、二次発生源である硫酸アンモニウム塩の2種類あることが明らかになってきた。そのナノ粒子(PM0.1)の表面に揮発性有機物や揮発性の有害元素(As, Se, Sb, Cd, Pb等)が濃縮している。
③ 2020年度の実験により明らかになってきた「PM0.1の発生源の解明」について、2021年12月16日から21日にハワイで行なわれる環太平洋国際会議 (Pacifichem 2021)で発表する。Titleは、” Elucidation of sources of airborne particulate matter PM0.1 in the atmosphere”である。
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Causes of Carryover |
ほぼ実験は終了して、2020年12月にハワイで行われる環太平洋国際会議で発表する予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大のため、会議が1年延期となってしまった。PM0.1大気粉塵に関して今までに報告されている学術論文や学術書を精査し、発表内容を充実させた上で、2021年12月にハワイで行われる環太平洋国際会議で発表する。
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