2018 Fiscal Year Research-status Report
Recognition and Sensing of Fluorous Organic Compounds Using Nanocomposite of Molecularly Imprinted Polymer as Artificial Antibody
Project/Area Number |
17K05916
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
松井 淳 甲南大学, フロンティアサイエンス学部, 教授 (10264954)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 分子認識 / ハイドロゲル / バイオセンサー / フッ素化合物 / パーフルオロオクタン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、有機フッ素化合物(PFCs)による環境汚染および生物濃縮が懸念されている。従来の PFCs分析では、フルオラスシリカ等を用いてフルオラス化合物群を分離することは可能であるが、特定のフッ素化合物を特異的に分離・検出することはできない。また、クロマトグラフィー装置等を用いることなく、PFCsを簡便に検出できる材料等も知られていない。そこで本研究では、人工抗体ポリマーが水系溶媒中でゲルとなるよう作製し、PFCsに対する刺激応答性(膨潤・収縮)を評価した。人工抗体ポリマー(ゲル)の作製は、モレキュラーインプリンティング法に基づいて行い、使用する機能性モノマー、骨格構築用モノマー及び架橋剤を変えることにより、種々のポリマー合成を行った。その中で、パーフルオロオクチルアクリレートとオクチルアクリレートの比率を変えて合成したポリマーでは、比率の最適化を行うことにより、架橋剤を加えることなく水中でゲル形成を行うことが可能であった。パーフルオロオクチルアクリレートの比率が低い場合にはゲル化は起こらず、また、高い場合にはポリマーの凝集によると考えられる固体が生じることから、このゲルにおける架橋は、パーフルオロオクチル基同士のフルオラス相互作用による化学的架橋であると考えられる。水の代わりに種々の有機溶媒を用いたところ、親フッ素性溶媒においてはポリマーが溶解してしまい、やはりゲル化が起こらなかったことからも、フルオラス相互作用による架橋が示唆された。 PFCsに対する刺激応答性を評価したところ、サブmMオーダーの高濃度のPFOAやPFOSに対して、ゲルが膨潤、さらには溶解するという応答を確認することができた。しかし、環境汚染で問題となるような濃度に対しては応答は見られず、今後、感度の向上ならびに選択性の付与について検討を行なっていく必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
パーフルオロオクタン酸等を認識・検出するのに必要なフルオラス相互作用に基づいた架橋構造をもつハイドロゲルの合成に成功し、刺激応答性について確認することができた。これは30年度の計画の主目的としていた内容であり、おおむね順調に研究が進んでいると判断できる。しかし、刺激応答性や選択性については、今回の評価結果をもとに高分子材料の設計について改良を重ね、向上を図っていく必要があると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
人工抗体ポリマーと金ナノ粒子および金属ポルフィリンユニットを組み合わせたナノコンポジットを作製し、そのパーフルオロ有機化合物(PFCs)に対する分子認識能と刺激応答性に基づいたカラリメトリック・センシングを行う。ナノコンポジットの作製は、1)予め合成した脂溶性保護基をもつ金ナノ粒子を、人工抗体ポリマーの重合系中に加える方法と、2)人工抗体ポリマーに予めグルコースオキシダーゼ(GOD)等の酵素を固定化しておき、その酵素反応に伴って生成する過酸化水素を利用して金ナノ粒子をin-situ合成する方法、の2通りについて検討を行う。金ナノ粒子の粒径や密度(粒子間距離)について透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて検討を行い、紫外可視分光光度計によるプラズモン吸収帯の測定結果と合わせて、効果的に可視吸収スペクトル変化を示すナノコンポジットの合成条件の検討を行う。 また、後者の方法では、固定化酵素の濃度、酵素反応に利用する基質の濃度、酵素反応の時間等を検討し、これらの条件とin-situ生成される金ナノ粒子の粒径や密度(粒子間距離)の関係を明らかにする。さらに、可視分光光度計及び目視によって、ターゲットPFCsの検出を図る。なお、ターゲットには、PFCsの中でも特に注目されているパーフルオロオクタン酸(PFOA)やパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)等を用い、標準試料の測定の後、環境水等の実試料の測定を行う。実試料の測定に際しては、1)人工抗体ポリマーを固相抽出担体としてカラムに充填し、試料の濃縮と予備精製を行ったのち、人工抗体ポリマー・ナノコンポジットを加えて色相の変化を観測する方法について検討する。
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Causes of Carryover |
当初計画として、パーフルオロオクタン酸(PFOA)やパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)を認識し、物理的応答を示す人工抗体ポリマーゲルの作製を目指していたが、合成条件の検討に時間と費用を要し、ゲルの評価のための装置(超微量紫外可視分光装置)の購入を見送った。しかし、合成条件の検討の結果、比較的大きなスケールでゲル合成が可能となり、現有の紫外可視分光装置で評価可能となったため、2019年度の計画遂行には問題ない。
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Research Products
(2 results)