2017 Fiscal Year Research-status Report
高安定かつ高結合性を持つ低温ショック蛋白質変異体の開発とPCR法への応用
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17K05926
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
城所 俊一 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (80195320)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 蛋白質核酸相互作用 / 一本鎖核酸 / 分子設計 / 高安定化 / PCR / 熱測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、高度好熱菌由来の低温ショック蛋白質(CSP)の分子表面に1本のジスルフィド結合を導入し高安定化と高結合性を実現した変異体に対して、別の部位にさらにもう1本のジスルフィド結合を導入した高安定化変異体を設計し、大腸菌を用いて大量調製とアフィニティーカラムによる精製、変性剤と還元剤濃度を低下させることによる立体構造形成(巻き戻し)に成功した。この変異体について、蛍光滴定法により7塩基の一本鎖オリゴDNAとの結合性を評価するとともに、示差走査熱量測定(DSC)により熱安定性を評価した。さらに、PCR法への応用のために、この変異体が、2重らせん構造や3重らせん構造を形成するDNA鎖の立体構造形成に及ぼす影響をDSCを用いて定量的に評価した。その結果、本変異体は、一本鎖のオリゴDNAに対して野生型よりもやや結合性は低いが、100℃を超える変性温度を持つことを確認するとともに、DNAの立体構造形成、特に低温で形成する3重らせん構造形成を阻害する効果があることを明確にした。通常のPCR反応は100℃以下の温度で実施されることから、本変異体はPCRに使用する蛋白質としては十分な安定性を持っていると考える。また、DSC測定で、本変異体とDNA鎖との熱解離反応に由来すると推定される高温での吸熱ピークの観測に成功した。野生型では、熱安定性が低いために、熱解離反応と熱変性とが同時に起きてしまい従来は観測できていなかったものと考えられる。このように、本変異体は、低温ショック蛋白質の分子機能を解明する上でも重要な試料となることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成29度は、ほぼ研究実施計画通りに高安定変異体の作成と評価ができたほか、DNAの立体構造形成阻害効果をDSCを用いて定量的に評価する手法やDNAとの熱解離反応の観測に成功するなど計画以上の成果が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の変異体を中心にして実施計画に従ってPCRへの応用を目指した研究を進める。これとともに、本年度の研究では、DNAとの結合に伴う立体構造変化を考慮した分子設計により野生型よりも高いDNA結合性を持つCSP変異体を得ることができたが熱安定性は低下してしまった。今後新たな設計方針を用いて高安定化変異体の作成を試みる予定である。
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Causes of Carryover |
当初の想定よりもアミノ酸変異体の合成が順調に進み試薬等の費用が抑制できた。この経費は、次年度の研究計画の中で、新たな変異体の作成のための費用等に支出する予定である。
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Research Products
(1 results)