2018 Fiscal Year Research-status Report
高安定かつ高結合性を持つ低温ショック蛋白質変異体の開発とPCR法への応用
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17K05926
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
城所 俊一 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (80195320)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 蛋白質核酸相互作用 / 分子設計 / 高安定化 / 一本鎖核酸 / PCR / 熱測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、前年度までに作成に成功した、中性pHで100℃以上の変性温度を持つ4重変異体を用いて、主として、オリゴDNAとの相互作用の熱力学的詳細や、安定化に大きな寄与を持つことが判明した、分子内部に埋もれたアスパラギン酸残基の熱力学的寄与について研究を進展させた。まず、前年度観測した、オリゴDNAの熱解離反応について詳細にDSC測定を行うことで、低温側で未解明の吸熱反応が生じていることを発見した。従来、室温付近でITC測定により結合が観測されていた条件で、この未知の吸熱反応が影響を与えていた可能性が強く示唆された。この反応が、複数のオリゴDNAをまたいで蛋白質が結合することで、大きな分子集合体を形成し、この分子集合の温度により形態変化を観測している可能性が最も高いと考えられた。実際に、このためこのような分子集合を形成しにくくした、新たな塩基配列のオリゴDNAを設計・使用することで、低温側の反応が抑制できることがわかった。また、蛋白質の分子内部に埋もれたアスパラギン酸残基の側鎖が主鎖のアミノ基と水素結合をしており、これをアスパラギンに置換するとエンタルピー的に不安定化することがわかった。エントロピー的にも不安定化することなどから、変性状態での塩結合形成が立体構造の安定化に関係している可能性が示唆された。この結果は、蛋白質変性状態での塩結合を積極的に形成させるような分子設計によって、蛋白質立体構造の高安定化が実現できる可能性を示しており、大変興味深い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、昨年度までに作成した変異体をもとにして、オリゴDNAとの相互作用で、従来知られていなかった反応が起きていることが明確となり、その手がかりを得ることに成功した。また、従来の常識と逆に、分子内部に埋もれた荷電残基が安定化に寄与していることを熱力学的に示すことに成功するなど当初の計画以上の成果が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、昨年度までに得られた研究成果を論文として公表するために補充実験を行うとともに、分子表面にジスルフィド結合を追加した変異体を作成することでさらに高安定性と高結合性を持つ変異体の作成も継続する。
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Causes of Carryover |
変異体蛋白質の作成や精製が想定したよりも順調に進み、また発表予定学会が近くで開催されるなどのため、必要経費を抑制することができた。これらの経費は、最終年度の消耗品購入や学会発表、論文発表などで有効に使用する予定である。
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Research Products
(6 results)