2017 Fiscal Year Research-status Report
Chirality Fixation and Improbement of Sugar-Recognizing Helical Oligomers
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17K05927
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
阿部 肇 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 准教授 (10324055)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 超分子化学 / ホストゲスト化学 / らせん分子 / 糖認識 / アルケンメタセシス |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究グループが開発を行ってきた「ピリジン-フェノール交互型オリゴマー」は、糖質などのゲスト分子を強く取り込みながら、らせん型の高次構造を形成する。このとき、ゲスト分子のキラリティーがらせんのキラリティーへと転写される。本研究課題では、側鎖にアルケニル基を導入した「ピリジン-フェノール交互型オリゴマー」を設計・合成し、らせん型の高次構造をアルケンメタセシスにより架橋しながら安定化、さらに固定化が可能かどうか検討を行っている。 本年度ではまず分子設計と合成を進め、アルケニル基を側鎖に持つピリジンユニットを4個含む、すなわち分子内で2架橋が可能なオリゴマーを得た。これはアルケンメタセシスを施される前の前駆体であり、この状態でも糖ゲストを加えるとらせんのキラリティーが誘起されたが、そのときのホスト・ゲスト会合はメタノールなどの添加により簡単に阻害されてしまった。その前駆体に糖テンプレートとGrubbs触媒を順次施したところ、エチレン2分子の遊離をともなうアルケンメタセシスが起こり、らせん構造とそのキラリティーに架橋による一定の安定化効果が観測された。観測の手段は主にCDスペクトルを用い、キラルならせん構造が形成した際に現れる特徴的なシグナルの強度を判断基準とした。意外なことに、らせんのキラリティーには時間の経過によるCDの減衰、すなわちラセミ化が観測され、2架橋ではらせんの固定化までは及んでいないことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
設計と合成の進捗はほぼ予定通りであるが、らせんの固定化までは到達しておらず、分子設計に最適化の余地が見受けられる。 現時点までの設計と合成、糖認識の機能評価と非対称性の発現までの成果はとりまとめ、2018年春に論文を欧文誌へ投稿、掲載される見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
ピリジン-フェノール交互型オリゴマーの構造や機能の改良・最適化へ向けて以下の研究に取り組む。主目的は、Grubbs反応によりらせん型高次構造のキラリティを固定化することである。 (1) アルケンメタセシスによるらせん構造の固定化と光学分割 : 初年度に得られた2架橋型に関する知見に基づき、今後は3ヶ所以上の架橋によってらせん構造の固定化を図る。アルケン基を6個以上側鎖に持つオリゴマーを設計・合成し、糖質をテンプレートとしてらせん型高次構造をとらせながらGrubbs触媒により架橋する。らせん構造のキラリティーが、用いた糖質により任意に制御かつ固定化できる系を目指す。 (2) キラリティーが安定化されたらせん型高次構造の特性評価 : 初年度からの検討で開発された2架橋型、今年度検討する3架橋型のらせん型高次構造の特性を調べる。安定化されたらせん構造が、そのキラリティやピッチ間のスタッキングから、どのような光学的特性、機能性を獲得したかを各種分光法により調べる。紫外可視吸収、蛍光発光、円二色性の各スペクトルの検討から着手し、可能性が示されたならば非線形光学材料や偏光発光材料としての評価へと進む。また、糖質の天然、非天然型のエナンチオマーなど、キラル識別が可能な認識場としての機能も調べる。 申請者が今春に富山大学から姫路獨協大学へ移籍したため、研究環境を再構築しなければならない状況にある。富山大学に残した研究協力者とも連携しながら進めていきたい。
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Causes of Carryover |
本年度に設計・合成した2架橋型のオリゴマーについて、らせん構造のキラリティーが安定化はされたものの、固定化まで至らなかった。そのため、キラル材料としての性能評価の予定を先延ばしにし、そのために必要な費用を次年度以降へ送ったためである。 2018年度はオリゴマーの性能評価に必要な費用と合わせ、移籍後の研究環境の整備に必要な費用(試薬、器具類の購入)へ、繰り越し分と2018年分の研究費を充てる。
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Research Products
(4 results)