2017 Fiscal Year Research-status Report
グアニン四重鎖によるヌクレオソーム構造制御機構の解明
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17K05930
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
大吉 崇文 静岡大学, 理学部, 准教授 (80406529)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | DNA構造 / ヌクレオソーム / テロメア / ヒストン修飾 / DNA結合タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ゲノム中のDNAが形成するグアニン四重鎖を介したヌクレオソーム構造制御機構の解明を目的としている。特に1年目では、細胞内のグアニン四重鎖がこの構造に結合するタンパク質を介して、ヌクレオソームの構造制御にどのように関与しているか、研究を行なった。特に、ヒストンH3の9番目のリシンとヒストンH4の20番目のリシンのそれぞれのメチル化に伴う、ヘテロクロマチン化に焦点を絞って解析した。その結果、グアニン四重鎖結合タンパク質であるTLS/FUSの発現を抑制したり、グアニン四重鎖DNAに結合する人工タンパク質を発現させると、これらのリシンのメチル化の程度が低下することがわかった。さらに、TLS/FUSの発現抑制は、テロメアにおける転写を促進することがわかった。これらの結果から、テロメアのグアニン四重鎖はTLS/FUSを介して、ヌクレオソームをヘテロクロマチン化させることで、転写を抑制していることがわかった。 さらに、このTLS/FUSのグアニン四重鎖の認識機構を試験管の実験で詳細に解析した。これまでの研究で、このタンパク質中のC末端のアルギニンーグリシンーグリシンの繰り返し領域が、グアニン四重鎖に対して結合することがわかっている。今回の研究では、この領域が緩やかな二次構造であるβスパイラル構造を形成していることがわかった。さらに、溶液条件を変えてこのβスパイラル構造を不安定化させると、グアニン四重鎖に対する結合性が低下することがわかった。これらの結果から、TLS/FUS中のこの領域は、βスパイラル構造に依存してグアニン四重鎖に結合することがわかった。これらの知見をまとめて、論文投稿した。また、このような配列の領域は疾患に関係する多くの核酸結合タンパク質の中に存在しているので、今回の結果はこのようなタンパク質の機能解明に広く貢献できると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1年目は、核酸結合タンパク質を介したグアニン四重鎖のヌクレオソーム構造の制御機構の解明を目的として研究を行なった。当初、核酸結合タンパク質としてTLS/FUSに注目して、かつテロメア領域のヘテロクロマチンの指標となるヒストンH3の9番目のリシンとヒストンH4の20番目のリシンのメチル化を修飾部位として解析した。しかし、研究を進めていくと、TLS/FUSはこの部位だけでなく、多くのヒストン修飾やヌクレオソームの再構築に関わっていることがわかってきた。すなわち、グアニン四重鎖はTLS/FUSを介して、転写だけでなく、DNAの組み換えやDNA損傷修復機構に関わっている可能性がある。今後の研究で、それぞれの機構とグアニン四重鎖との関係を解明していく必要がある。 さらに、これまでに我々のグループでグアニン四重鎖結合タンパク質として報告していたTLS/FUSに関して、実験条件によっては異なる核酸結合性であることが他のグループより報告された。TLS/FUSやこのタンパク質から我々のグループで開発したグアニン四重鎖DNA結合タンパク質のアルギニンーグリシンーグリシンの繰り返し領域によるグアニン四重鎖認識機構を明らかにする必要があったので、研究を行なった。その結果、この領域がタンパク質の二次構造の1つであるβスパイラル構造を形成するときのみ特異的にグアニン四重鎖に結合することがわかった。これらの研究は当初1年目に計画していなかったが、本研究を進めていく上で極めて重要なことであり、土台となる知見であるため研究を行ない、明らかにした。今後、本研究においてグアニン四重鎖結合タンパク質を解析する際、このアルギニンーグリシンーグリシンの繰り返し領域が形成するタンパク質の二次構造に注目して研究を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は1年目でグアニン四重鎖形成によるヌクレオソーム構造制御機構の解析を行ない、これらの結果をもとに2年目ではヌクレオソーム構造の変化によるグアニン四重鎖形成機構、3年目ではグアニン四重鎖を介したヌクレオソーム構造制御による転写制御機構の解明を行なう。 2年目では特に、ヒストン修飾とグアニン四重鎖構造、さらにスーパーコイルの3要素がどのような関係になっているか解析する。これまでに、テロメア領域におけるヒストン修飾とグアニン四重鎖の関係はこれまでに明らかにしているが、それ以外のゲノム中における関係性はわかっていない。また、試験管内においてスーパーコイルとグアニン四重鎖形成の関係性は報告されているが、細胞内においては不明な点が多い。そこで、これまでに我々のグループで開発したグアニン四重鎖DNAに結合する人工タンパク質を利用してグアニン四重鎖の検出を行なうことで、細胞内におけるテロメア以外の領域におけるヒストン修飾とグアニン四重鎖構造との関係性、さらにスーパーコイルがこれらの修飾と構造形成にどのように関係しているか調べる。また、転写とスーパーコイルとの関係性も3年目の研究で明らかにする。 また、1年目の研究で、TLS/FUSはグアニン四重鎖を介して、ヒストンH3の9番目のリシンとヒストンH4の20番目のリシンのメチル化以外にも、多くのヒストン修飾に関わっていることがわかった。したがって、2年目以降の研究において、グアニン四重鎖とヒストン修飾との関係を解析する際に、さまざまなヒストン修飾部位を指標とする必要がある。さらに、それらの結果から、グアニン四重鎖は転写だけでなく、組み換えやDNA修復機構にも関わっている可能性があるので、当初予定していた転写との関係性の解明だけでなく、それらの機能との関係性も研究していく。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Plastic roles of phenylalanine and tyroshine residues of TLS/FUS in complex formation with the G-quadruplexes of telomeric DNA and TERRA2018
Author(s)
Kondo K., Mashima, T., Oyoshi, T., Yagi, R., Kurokawa, R., Kobayashi, N., Nagata, T., and Katahira, M.
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Journal Title
Sci. Rep.
Volume: 8
Pages: 2864
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Bcl-XL-binding helical peptides possessing D-Ala residues at their C-termini with the advantage of long-lasting intracellular stabilities.2017
Author(s)
Nogami, K., Tokumaru, H., Isokawa, G., Oyoshi, T., Fujimoto, K., and Inouye, M
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Journal Title
ChemComm
Volume: 53
Pages: 12104-12107
DOI
Peer Reviewed
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