2017 Fiscal Year Research-status Report
生体高分子の3次元印刷を可能とする新規バイオインキの開発と生体材料構築への応用
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17K05932
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
水野 稔久 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90345950)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | バイオインキ / ヒュスゲン環化付加反応 / 細胞培養基材 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、(1)蛋白質や機能性核酸などの生体高分子を変性させることなく3次元に印刷形可能な「生体高分子に対するバイオインキ」の開発を行い、こちらを用いた(2)幾つかの代表的形状に3次元印 刷造形した生理活性材料構築の検討と、(3)細胞培養基材としての機能評価を通して生体材料構築技術としての有効性の評価を目指している。本年度は、主に上記(1)に取り組むように研究計画がなされていたため、バイオインキとなる分子骨格として、アセチレン基を側鎖に持つポリアクリルアミド系ポリマー、ポリγグルタミン酸系ポリマーの合成と、バイオインキとしての性質評価を主に行った。その結果、アセチレン基を側鎖に持つγグルタミン酸系ポリマーが、本研究で利用可能なバイオインキとして有望な性質を持つ見込みが得られた。また、(3)に関連し、バイオインキとして利用を検討する予定の幾つかのベースポリマーの、細胞培養基材としての有効性の検証も独立に進めた。その結果、ポリアクリルアミド系ポリマーをバイオインキのベースポリマーとして用いる場合には、ヒアルロン酸あるいはポリεカプロラクトンのような細胞接着性を持つポリマーと組み合わせて利用することが必要であることが分かってきた。一方で、ポリγグルタミン酸系ポリマーについては既に細胞接着性が得られることが分かっており、そのままの利用が可能と思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、主に上記(1)に取り組むように研究計画がなされていたため、バイオインキとなる分子骨格として、アセチレン基を側鎖に持つポリアクリルアミド系ポリマー、ポリγグルタミン酸系ポリマーの合成と、バイオインキとしての性質評価を主に行った。その結果、アセチレン基を側鎖に10モル%程度導入したγグルタミン酸系ポリマーが、本研究で利用可能なバイオインキとして有望な性質を持つ見込みが得られた。架橋剤としてビスアジド化合物を用い、マイクロキャピラリー系でのヒュスゲン環化反応を介した架橋反応による、バイオインキの硬化速度(すなわち3Dプリンターで積層可能な硬さを持ったゲルへの硬化速度)を検討したところ、溶液の混合とともに即座に硬化する性質が得られ、3Dプリンター用のバイオインキとしての用件を満たしていた。また、(3)に関連し、バイオインキとして利用を検討する予定の幾つかのベースポリマーの、細胞培養基材としての有効性の検証も独立に進めた。マウス由来の線維芽細胞NIH3T3、ヒト由来の線維芽細胞NHDFを用いて検討を進めたところ、ポリアクリルアミド系ポリマーをバイオインキのベースポリマーとして用いる場合には、ヒアルロン酸あるいはポリεカプロラクトンのような細胞接着性を持つポリマーと組み合わせて利用することが必要であることが分かってきた。一方で、ポリγグルタミン酸系ポリマーについては既に細胞接着性が得られることが分かっており、そのままの利用が可能と思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
アセチレン基を側鎖に持つポリγグルタミン酸系ポリマーが、本研究で利用可能なバイオインキとして有望な性質を持つ見込みが得られた。架橋剤としてビスアジド化合物を用い、マイクロキャピラリー系での硬化速度を検討したところ、溶液の混合とともに即座に硬化する性質が得られ、3Dプリンター用のバイオインキとして用件を満たした。しかし、この硬化速度にはそれぞれの試薬の濃度、さらにベースポリマーと架橋剤の混合速度などのパラメータが大きく影響を与えることも分かってきており、今後生理活性を保持した蛋白質を混合し、自在な3Dプリントを行っていくためには、マイクロキャピラリー系を用いた両試薬の混合条件の最適化も必要と考えられるため、この検討を進めていきたい。また、細胞接着・増殖に関する検討から、ポリγグルタミン酸系ポリマーであれば、印刷した構造体がそのまま細胞培養基材として利用可能であることは、これまでの検討から十分推定されるため、次年度は、蛋白質を含有した構造体の印刷条件の最適化、さらにこの構造体からの蛋白質の漏洩速度の評価などを中心に検討をしていきたい。
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Causes of Carryover |
1万円強の予算が残ったが、当該年度内に使い切るよりも次年度に繰り越し利用したほうが効率的と考えた。
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