2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of Proteinaceous Nanocarrier with the set time delivery address
Project/Area Number |
17K05939
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Research Institution | Kanagawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
小池 あゆみ 神奈川工科大学, 応用バイオ科学部, 教授 (20454176)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | シャペロニン / GroEL / ドラッグデリバリー / DDS |
Outline of Annual Research Achievements |
カプセル構造をしたGroEL/GroES複合体を、薬剤の生細胞への局所送達システムに応用する目的で改変した。ATP加水分解を遅くしたGroEL変異体と、核移行シグナル配列と膜透過ペプチドを融合したGroES変異体を作製して、両者が結合してできた複合体の安定性と細胞膜透過性、核送達時間を評価した。GroESのN末端に核移行シグナル配列と膜透過ペプチドを直列で融合すると、培地に添加したGroEL/GroES複合体の細胞膜輸送と核送達に有効であることがこれまでにわかった。一方、GroESのC末端への膜輸送シグナルペプチドの融合は、GroESの凝集性を高め、7量体の形成や効率的な精製、GroELとの複合体形成において問題が生じた。しかし、野生型GroESとGroES変異体の精製タンパク質を4:3から1:6の間のモル比で混合して4℃に静置することで、どの変異体もヘテロ7量体を形成し、GroELと安定な複合体を形成した。GroELとGroESのそれぞれのタンパク質を蛍光標識し、GroEL/GroES複合体を限外濾過で精製した後にチャイニーズハムスター肺由来線維芽細胞(CHL/IU細胞)に投与したところ、最も早いGroES変異体では、細胞外に添加したGroEL/GroES複合体のそれぞれの蛍光が2時間以内に細胞質で確認でき、4.5時間までに核に到達したことが確認できた。1 μMとなるようGroEL/GroES複合体を添加すると、観察視野内の29%の細胞に送達し、0.02 μM のときの4%から向上した。このGroEL/GroES複合体を、細胞核への核酸輸送に利用することを目標に、蛍光標識したDNA断片を金またはシリカ粒子に吸着させ、GroEL/GroES複合体の内包物として閉じ込めて細胞核へ送達する条件を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
GroESに融合するシグナルペプチドの位置と組合せをかえた5種類のGroES変異体を作製して、GroESのみ、GroEL/GroES複合体での膜透過時間と核送達時間を比較した。GroESのN末端に膜透過ペプチドと核輸送配列を融合した変異体で最も核送達時間が短く、GroEL/GroES複合体の膜透過時間を2時間に短縮でき、細胞外からGroEL/GroES複合体を投与して4.5時間で核に送達できるGroEL/GroES複合体を作製できた。GroEL/GroES複合体にフラーレン誘導体を内包させて細胞外から投与したところ、フラーレン誘導体のみの投与時に比べて紫外線照射時の小核発生率が1.5倍向上した。そこで、核酸を結合したナノ粒子の核送達を実現させるために、DNAのナノ粒子への結合条件を検討した。核酸医薬を準備する予定だった共同研究先担当者の異動により当初計画より遅れていたが、現在は核酸に標識した蛍光の核への移行を顕微鏡観察で確認している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、GroEL/GroES複合体内の空洞は直径1~8 nmの金属粒子を効率よく内包することは可能なため、核酸が結合した金属粒子の直径が1~8 nmになることが好ましいと予想される。内包物は、シャペロニンの本来の基質であるタンパク質(GFP)、化合物(フラーレン)、金属ナノ粒子など様々でも、GroEL/GroES複合体に内包させた状態では細胞核への到達時間に差はない。現在は金属粒子に核酸を結合してからGroEL/GroES複合体に内包させているが、DNAの塩基数によっては、内壁の電荷を変化させたGroEL変異体を使用し、直接DNAを閉じ込める方が効率が良い可能性があり、条件を検討する計画である。これまでに作製した変異型GroEL/GroES複合体へ核酸結合ナノ粒子を閉じ込めて細胞投与し、蛍光標識した核酸の蛍光顕微鏡による細胞内動態観察と、薬理活性評価を引き続き行う予定である。
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Causes of Carryover |
共同研究先企業担当者の異動による脱退のため、一部の研究の推進に遅延が生じ、最終目的の達成が遅れていた。また、新型コロナウイルス感染拡大により、研究物資の購入が困難となったため、次年度使用とした。
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Research Products
(7 results)