2017 Fiscal Year Research-status Report
低分子ゲル化剤を用いたハロゲン化有機溶剤の濃縮と回収剤への応用
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17K05945
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
伊藤 和明 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (80250950)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 低分子ゲル化剤 / 溶媒パラメータ / 有機溶媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、簡便かつ安価に合成できる低分子ゲル化剤を用いたハロゲン化溶剤の流出防止剤と分離・回収剤の開発である。既に開発した化合物の分子構造の最適化により漏洩防止剤や分離・回収剤としての機能性低分子ゲル化剤の実用化を検討する。初めに,ゲル化剤分子構造中の糖部位と長鎖アルキル基をもつ脂溶性部分との架橋部位であるエチレンジアミン部位を,ヒドラジンおよびヘキサメチレンジアミンに置き換えた誘導体を合成した。合成した化合物のゲル化能を30種類の有機溶媒を用い検討したところヒドラジンへの置き換えにより有機溶媒に対する溶解性が低下したものの、アルキル鎖長がドデシル基の化合物は、以前合成したエチレンジアミン誘導体と同程度のハロゲン化有機溶媒に対するゲル化能を示した。一方,ヘキサメチレンジアミンへの置き換えでは、多くの有機溶媒に対する溶解性が幾らか上昇したものの、アルキル鎖長がオクチル基の化合物が以前合成したエチレンジアミン誘導体と同程度のハロゲン化有機溶媒に対するゲル化能を示した。今回のゲル化試験の結果についてハンセン溶解度パラメーターを用いゲル形成のメカニズムについて考察したところゲル化剤分子構造中の水素結合能とアルキル鎖長との割合がゲル形成に大きな影響を与えることが考察された。ゲル構造に関する知見では,1H-NMR, IRスペクトルよりアルキル鎖によるファンデルワールス力とアミド基および水酸基による水素結合がゲル形成の推進力であることが示された。キセロゲルのSEM観察より繊維構造を構築していることが示された。臨界ゲル化濃度をもとにゲル化能を評価すると今回合成した化合物群では向上しなかったことから最適な低分子ゲル化剤構造のとしてエチレンジアミン部位にアミド基やウレア基の導入による異方的な集合体形成の促進と結晶化を回避するためのアルキル鎖長の伸長により臨界ゲル化濃度の改善が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規なゲル化剤として、先に合成したゲル化剤分子構造中の糖部位と長鎖アルキル基をもつ脂溶性部分との架橋部位であるエチレンジアミン部位を,ヒドラジンおよびヘキサメチレンジアミンに置き換えた誘導体を、それぞれアルキル基部分がブチル基、オクチル基、ドデシル基、ヘキサデシル基を導入した合計8種類について合成した。 合成した化合物のゲル化能について、汎用性有機溶媒30種類を用い検討したところヒドラジンへの置き換えにより有機溶媒に対する溶解性の一部低下が認められたものの、アルキル鎖長がドデシル基の化合物は、以前合成した誘導体と同程度の機能性を示した。また,ヘキサメチレンジアミンへに置換した誘導体においてもアルキル鎖長がオクチル基の化合物において以前合成した化合物と同程度の機能性が認められた。以上の結果からエチレンジアミン部位のジメチレン鎖のゲル化能への影響は小さいことが分かった。 ゲル化試験の結果は,ハンセン溶解度パラメーターにより解釈されゲル形成過程は、ゲル化剤分子間の水素結合とアルキル鎖のファンデルワールス力に起因すること、また、アルキル鎖長の調整によりゲル化能が変化することを明らかにした。また、ハンセン球を用いた新たなゲル化能評価方法について用いたところ、ゲル形成と溶媒との関係性に明瞭な境界が存在することを明らかにした。 ゲル構造に関する知見として1H-NMR,IRスペクトルからゲル化剤分子間の水素結合とアルキル鎖のファンデルワールス力の存在とその強さの程度が明らかとなり、キセロゲルのSEM観察から繊維状構造の構築が確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に合成した新規なゲル化剤の単一溶媒系におけるゲル化能のスクリーニングの結果を基に、混合溶媒系のゲル化能の検討および、複数のゲル化剤を混合して使用した場合のゲル化能について検討を行う。混合有機溶媒として,ハロゲン化有機溶媒(クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエチレンなど)と,一般的な汎用性の非ハロゲン化有機溶媒(アセトン、トルエン、アセトニトリル、メタノールなど)との混合有機溶媒(2成分系)を用い、ゲル化のスクリーニングを行いゲル化能との相関関係につて,溶媒パラメーターを用いて解明する。また,ゲル化剤の添加により混合有機溶媒がゲル相と液体相とに相分離する系を見出し,いずれかの相へハロゲン化溶剤の濃縮効果につて明らかにする。さらに,単成分のゲル化剤のゲル化能に関する知見を基に,複数のゲル化剤の混合により期待するゲル化能の発現を検討する。また、ゲル化剤の部分構造の最適化として,ジメチレン部分にアミド基およびウレア基を導入しゲル化能の向上とハロゲン化有機溶媒に対する選択性の向上を目指す。
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Research Products
(1 results)