2018 Fiscal Year Research-status Report
水環境中の市販医薬品を分子指標とした季節性インフルエンザの早期流行予測技術の開発
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17K05950
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
木口 倫 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (70457761)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 抗インフルエンザ薬 / 代謝物 / PPCPs / 河川水 / 排水 / 流出挙動 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は,以下の2つのテーマを実施した。 (1)平成29年度と同様に,都市小河川下流域の河川水および排水中での非流行期(4~11月)と流行期(12~3月)における固相抽出-同位体希釈-LC/MS/MS法を用いた抗インフルエンザ薬のタミフルとその代謝物および4種の医薬品(カフェイン,カルバマゼピン,トリクロサン,トリクロカルバン)の検出率や濃度レベル等の把握を行うとともに,平成29年度との比較を行った。 (2)平成29年8月から平成30年度末にかけて,固相抽出-誘導体化-GC/MS/MS法を用いて(1)と同一地点での河川調査に加え,下流域内の主要な都市排水路を対象に,21種のPPCPsの実態調査を行い,特に排水中でのPPCPsの濃度レベルと経月変化の特徴を把握した。 (1)の結果,河川水中のタミフルおよび代謝物は流行期のみ検出され,濃度レベルは平成29年度とほぼ同様であった(それぞれ数百pg/L~数十ng/Lおよび数ng/L~数十ng/L)。他の4種の医薬品の濃度レベルも昨年度と同様で,数百pg/L~数百ng/Lの範囲で検出され,カフェインが最も高かった。排水中でのこれらの濃度レベルは河川水と比べて同等か1桁高く,複数の都市排水路が旭川下流域でのPPCPs排出源になっていると考えられた。 (2)の結果:都市排水路からは調査対象物質21種中で18種が検出された。イブプロフェン,サリチル酸,アセトアミノフェン,サリチルアミド,クロタミトン,カフェイン,テオフィリンは数十から数百ng/Lのオーダーで年間を通じて流出していることが示唆された。DEETは夏季に濃度が増加する一方で冬季は不検出であった。インドメタシンは夏季よりも冬季から春季にかけて検出された。DEETとインドメタシンは下水処理では比較的除去され難いことから,使用時期を反映して検出されているものと推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は,河川水中でのタミフル以外の4種の医薬品に加え,研究代表者らが別途開発した固相抽出-誘導体化-GC/MS/MS法による21種の医薬品類についても河川水を対象とした実態調査を継続し,分析ならびに解析を行った。また,河川水調査と並行して昨年度に前倒しして実施した河川下流域内の主要な複数の都市排水路を対象とした実態調査を計画通り平成30年度も継続実施中で,その分析と解析も進んでいる。このように,平成30年度に計画した実態調査に関わる分析と解析が進んでいることから,概ね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度は,平成29年度と平成30年度における河川水および都市排水中での医薬品類の検出率と濃度レベルおよび負荷量に関する実態調査の検討結果を踏まえ,引き続きこれらの実態調査を継続するとともに,河川水及び排水中での調査対象物質の流出特性を明らかにする計画である。
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Causes of Carryover |
測定用消耗品類の購入のため執行を予定していたが,国内在庫品がなく納期が年度末までに間に合わなかった。当該消耗品類は新年度にあらためて購入し,計画通り執行予定である。
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