2019 Fiscal Year Research-status Report
RAFTエマルショングラフト重合による環境浄化材料の創製研究
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17K05956
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
瀬古 典明 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 上席研究員(定常) (10354953)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植木 悠二 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 主幹研究員(定常) (50446415)
保科 宏行 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 主幹研究員(定常) (60446416)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | RAFT重合 / エマルション / グラフト重合 / 放射線照射 / ミセル / 放射光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高分子吸着材の合成手法として、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合と放射線エマルショングラフト重合とを融合させるというユニークな手法により、グラフトする高分子鎖長及び高分子鎖間隔を制御し、水中に溶存する吸着対象とする金属を捕集可能な高分子側鎖(グラフト鎖)の長さと間隔を揃えたネットワーク構造を有する高選択性吸着材を開発することを目的としている。 令和元年度は、グラフト鎖中のシアノ基をアミドキシム基に変換し、水中に溶存するクロムイオンを除去する吸着材として評価した。結果、アミドキシム型の吸着材は、酸性と中性において三価及び六価クロムをそれぞれ高濃縮し、特に、酸性条件下で六価クロムを吸着させると、アミドキシム基により捕捉されたクロムが還元することがわかった。一般的に高密度の低分子吸着基にクロムを接触させると還元反応が起こるが、高分子材料のような吸着基が希薄な場合、還元作用はほとんど見られない。これは、ICPやイオンクロマトグラフィー、エネルギー分散型X線分析において、価数を特定できない事実と一致する。還元反応の評価については、六価クロムに起因するプリエッジピークの観測が可能なXAFS解析に着目し、SPring-8での実験に展開した。六価クロムを吸着させたアミドキシム型吸着材の測定では、プリエッジピークは観測されず、三価クロムに起因するピークが得られた。これは吸着材内で三価クロムに還元されていることを示しており、水溶液のpHを調整することによっては有害な六価クロムを吸着除去するだけでなく、三価クロムに還元することで無害化にできる可能性を示すことができた。さらに、この高分子のグラフト吸着材中で還元性が認められたという事実はグラフト吸着材表面に高密度に吸着基が存在していることを意味しており、発案した放射線RAFTエマルショングラフト重合の特徴を実証できたことになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に申請したSPring-8のマシンタイムを獲得できたことにより、評価が困難であった還元反応の事実を突き止めることができた。また、エマルション溶液のミセルサイズ評価については共同研究者の協力で早期に把握でき、今年度に掲げた推進方策であるグラフト重合条件の導出も順調に進めることができた。これにより、学会発表や論文公刊に繋げられたことから、本年度の進捗としては「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、アクリロニトリル(AN)モノマーを用いたRAFTグラフト重合を実施し、得られる吸着材のモジュール化(中空子膜)の試行及び評価をする予定であった。しかしながら、ANを用いたRAFTグラフト重合では、グラフト物のグラフト鎖は比較的短いものしか得ることができず、長鎖型グラフト物で構成させたモジュールが作成できないという課題がでた。そのため、ANに代わるモノマーとして試行しているグリシジルメタクリレート(GMA)で長鎖型グラフト物を合成し、このグラフト鎖末端にアミドキシム基と同様のアミド型官能基を付与した材料を合成する。この代替え長鎖型グラフト物をアミド型吸着材のグラフト物としての評価を進め、長短鎖の特性差異の把握に努めるとともに、最終的に評価結果を合成条件にフィードバックさせて最適化を図る。また、継続して放射光によるXAFS解析を進め、RAFTグラフト重合及び通常のグラフト重合、さらには長短鎖グラフト物の吸着後の配位構造からグラフト鎖長と吸着構造とを特徴付ける。 令和2年度が最終年度となるため、遅延している研究項については早い段階で見直し、当初目的を計画的に遂行できるよう努める。
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Causes of Carryover |
次年度使用が生じた理由:本研究を遂行するにあたり重要な電子加速器に不具合が発生し、その修理に若干時間を要した。そのため、その間に実施予定の研究をそのまま令和2年度に移行して進めることとした。
使用計画:照射実験及び吸着材性能評価の際に必要となる不活性ガスの購入費に充当する。
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