2020 Fiscal Year Research-status Report
表面高機能化ナノ複合蛍光体による生体影響ガスセンサに関する研究
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17K05957
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
安藤 昌儀 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 上級主任研究員 (20356398)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
茂里 康 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (90357187)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 生体影響ガス / 光学式ガスセンサ / 蛍光 / 表面高機能化 / オゾン / 揮発性有機化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
セレン化カドミウム(CdSe)系コアシェル型蛍光量子ドット薄膜に、金(Au)や白金(Pt)のナノ粒子を複合化すると、空気中のppmレベルのオゾンによる可逆的な蛍光強度変化率が増大し、また、量子ドット薄膜に白金・パラジウム合金(Pt-Pd)ナノ粒子を複合化した場合には、オゾン接触後の空気中での蛍光回復が高速化することを、平成31年度(令和元年度)までに確認した。これらは平板状ガラス基板上に作製した薄膜について得た結果であり、蛍光利用型高感度オゾンガスセンサへの応用可能性が示された。このようなガスセンサ特性を保持しつつ量子ドット層をより薄く基板上に形成し比表面積を大きくすれば、量子ドットへのガス吸脱着の速度や量が増し、ガスセンサの応答・回復速度や感度の向上が期待される。そのため、令和2年度には、量子ドットを、平板状ガラスよりも比表面積が格段に大きい多孔質ガラスの細孔内壁に分散固定化することに取り組んだ。CdSeコアと硫化亜鉛(ZnS)シェルから成る赤色発光量子ドットのデカン分散液をトルエンで希釈し、平均細孔径50nm、比表面積80m2/gの多孔質ガラスに毛管現象で吸収させた後、真空中でデカンとトルエンを蒸発除去する方法により、CdSe/ZnS量子ドットを多孔質ガラスの細孔内壁に均一に分散固定化することができた。作製した量子ドット分散多孔質ガラスは、波長365nmの紫外線照射下で強い赤色蛍光を発し、蛍光極大波長は646nmであり、同じ量子ドットを用いて平板状ガラス基板上に作製した薄膜の蛍光極大波長652nmよりも短波長であった。多孔質ガラスを用いた試料では、量子ドット層が薄く、量子ドットの凝集が抑制され高分散化したために、蛍光の短波長シフトが起こった可能性等が考えられる。このように、令和2年度には、高いガスセンサ特性が期待される蛍光量子ドット分散多孔質ガラスを作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
量子ドット系材料の蛍光特性変化を用いた光学式生体影響ガスセンサの研究において、平成31年度(令和元年度)までに得た知見を基礎としてさらなるセンサ特性向上を目指し、令和2年度には、比表面積の大きな多孔質ガラスの細孔内壁に量子ドットを均一に分散固定化した、強い赤色蛍光を発する試料を作製することができた。この量子ドット分散多孔質ガラスは、従来の平板状ガラス基板上の量子ドット薄膜と比較して、ガスの吸脱着速度や量が増し、オゾンに接触した際に高速で大きな蛍光強度変化を示すと期待される。このように、蛍光量子ドットを用いたオゾン等の生体影響ガスセンシングの高性能化に向けた新しい技術開発が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、これまでに、量子ドット薄膜への貴金属ナノ粒子複合化による、蛍光変化型オゾンガス感度増大や空気中での蛍光回復速度向上を確認し、さらに、一層の高感度化を目指して蛍光量子ドットを比表面積の大きな多孔質ガラスの細孔内壁に分散固定した試料を作製した。今後は、量子ドット等を分散した多孔質ガラスの蛍光スペクトルや蛍光強度を、空気中のオゾン濃度を0ppmから200ppmまで変化させて測定し、オゾンに感応する蛍光特性変化の大きさ・速度・可逆性等を調べ、平板状ガラス基板上の量子ドット系薄膜と比較してオゾンセンサ特性が向上した点等を解析しその原因を探究する。これにより、蛍光量子ドット系材料自体のガス応答性向上と、ガス吸脱着促進のための多孔質基板導入という2つの手法を組み合わせた、高感度ガス検知やガス識別検知という目標に関して得た知見をまとめる。
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Causes of Carryover |
(理由)新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い緊急事態宣言が発出され、出勤制限が実施されたため、当初の計画よりも実験の頻度や時間が少なくなり研究の遅れが生じ、実験用各種消耗品の購入金額が減ったこと等により、次年度使用額が生じた。
(使用計画)比表面積の大きな高性能ガスセンサ材料を作製するための多孔質ガラスや量子ドット等の試薬、また、光学式ガスセンサ特性を測定するためのガスボンベ、ガス配管構成部品、光学部品等の購入等に用いる。
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Research Products
(2 results)