2021 Fiscal Year Research-status Report
表面高機能化ナノ複合蛍光体による生体影響ガスセンサに関する研究
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17K05957
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
安藤 昌儀 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 上級主任研究員 (20356398)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
茂里 康 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (90357187)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 生体影響ガス / 光学式ガスセンサ / 蛍光 / 表面高機能化 / オゾン / 二酸化窒素 / 揮発性有機化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
貴金属ナノ粒子とセレン化カドミウム(CdSe)系コアシェル型蛍光量子ドット(QD)の複合薄膜は、空気中のオゾンに感応して可逆的な蛍光強度変化を示し、貴金属の種類に応じて、QD単独薄膜よりもオゾン感度や応答・回復速度が向上することをこれまでに確認した。令和3年度には、機構解明のための薄膜微細構造観察と、オゾン以外の代表的な酸化性生体影響ガス(有害ガス)である二酸化窒素(NO2)の検知可能性の検討を行った。まず、貴金属・QD複合薄膜、およびQD単独薄膜の微細構造を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、これらの薄膜が、ナノ粒子の微小な凝集体等からなる多孔質構造をもち、貴金属の種類によって凝集体や空隙の大きさが異なることがわかった。これより、貴金属添加によるQD薄膜のオゾン感度や応答・回復速度の向上は、薄膜の微細構造と、貴金属ナノ粒子のガス吸脱着特性・触媒特性が相乗的に作用した結果であると結論した。次に、空気中のNO2に接触した際の、貴金属・QD複合薄膜、および、QD単独薄膜の蛍光特性変化を調べたところ、いずれの薄膜も、1-100 ppmのNO2に感応して、濃度に依存した可逆的な蛍光消光を示し、また、貴金属添加によってNO2感度が大きく向上した。さらに、同濃度のオゾンとNO2による蛍光強度変化率を比較したところ、オゾン感度はPt-QD複合薄膜が最大、Pt-Pd-QD複合薄膜が最小であったのに対して、NO2感度はPt-Pd-QD複合薄膜が最大、QD単独薄膜が最小であった。このようなオゾンとNO2に対する応答特性の違いを利用して、共に酸化性のガスであるオゾンとNO2を光学的に識別検知できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
貴金属・CdSe系コアシェル型QD複合薄膜等の蛍光特性変化を用いた光学式生体影響ガスセンサの研究において、令和3年度には、SEMによるナノ複合薄膜の微細構造観察によって、ナノ粒子の微小な凝集体等からなる多孔質構造と、貴金属の種類によって異なる凝集体や空隙の大きさを確認し、薄膜の多孔質構造が、薄膜成分のガス吸脱着特性・触媒特性との相乗作用で高いオゾンガス感度特性発現をもたらしたと結論され、機構解明が進んだ。一方、貴金属・QD複合薄膜等が、空気中のNO2に感応して可逆的な蛍光消光を示し、NO2センサ材料としても有望であることがわかった。さらに、オゾン感度とNO2感度の比が、QD薄膜に添加する貴金属の種類毎に異なることが見出されたことから、共に酸化性のオゾンとNO2を識別検知できる可能性も示唆された。このように、貴金属・QD複合薄膜等を用いた生体影響ガスセンシングの高性能化に資する機構解明と、検知可能ガス種の拡張に向けた新しい技術開発が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、ガスセンサ材料の蛍光変化を用いた生体影響ガスセンサの高度化と機構解明を進め、これまでに、QD薄膜への貴金属ナノ粒子の複合化による、空気中のオゾンやNO2への感度増大、応答・回復速度向上を確認し、薄膜のAFM観察およびSEM観察を行い、微細構造と組成の両方がガス応答特性に影響を与えていると結論した。オゾン感度とNO2感度の比が、添加貴金属種毎に異なることを見出し、この特性を用いたガス識別検知の可能性を示した。さらに、QDを比表面積の大きな多孔質ガラスの細孔内壁に分散固定した、高いガス感度が期待される試料を作製した。今後は、これらの知見を活用して、貴金属・QD複合薄膜や、QDを分散した多孔質ガラスの、生体影響ガス(有害ガス)検知の可能性を広げると共に機構解明を進め、貴金属とQDからなるナノ複合材料の新しい機能性を高度化する。
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Causes of Carryover |
(理由)新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い緊急事態宣言が発出され、出勤制限が実施されたため、当初の計画よりも実験の頻度や時間が少なくなり研究の遅れが生じ、実験用各種消耗品の購入金額が減ったこと等により、次年度使用額が生じた。 (使用計画)比表面積の大きな高性能ガスセンサ材料を作製するための多孔質ガラスやナノ材料作製用試薬、また、光学式ガスセンサ特性を測定するためのガスボンベ、ガス配管構成部品、光学部品等の購入等に用いる。
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Research Products
(1 results)