2017 Fiscal Year Research-status Report
導電性高分子のゼーベック効果と高効率有機熱電材料の開発
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17K05965
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
播磨 裕 広島大学, 工学研究科, 名誉教授 (20156524)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今榮 一郎 広島大学, 工学研究科, 准教授 (90293399)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 熱電効果 / Seebeck係数 / 電気化学 / ドープ率 |
Outline of Annual Research Achievements |
化学的に合成されたPHT(poly(3-hexylthiophene))膜を用いて,PHT膜の様々な物性の違いが Seebeck係数(S)のドープ率依存性に与える影響を調査した。まず最初に,溶媒にアセトニトリル,電極にITO,電位制御に三電極系を用いることによってドープ率が電気量測定(Chronocoulometry法)から正確に求まることを立証した。さらに,ドープ率制御したPHT膜を溶液から取り出してその安定性を確認した後にPHT膜のSeebeck係数を測定した。このようにして計測したSeebeck係数のドープ率依存性は以前に報告された結果とは大きく異なるものであった。この相違の理由は,XPSという表面分析法でドープ率を評価した以前の報告では膜全体のドープ率が正しく評価出来ていないことによるものと結論した。さらに本手法の信頼性を確認後,Seebeck係数のドープ率依存性に与えるドーパントアニオンの相違,PHTのregioregularity(位置規則性)の違い,重合法の相違(化学重合と電解重合),PHT膜の酸化法(NOPF6による化学酸化と電気化学酸化)の違いについて検討した結果,regioregular PHT膜の log S vs. log (doping level)プロットはドーパントの種類や酸化法の違いによらず傾き-1の直線となることを見出した。金属や縮退半導体に対する理論的考察から,log S vs. log (doping level)プロットが直線となることや,その傾きが-(3/4)であることが知られている。勾配は少し異なるものの,理論的に予測される二つの物理量の直線関係と一致する本結果は極めて興味深いものである。一方,膜質や位置規則性の相違はSeebeck係数の大きさに影響を与えることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
化学的に合成されたPHT膜を用いた研究は当初の計画通りに進んでおり,ドーパントの種類や酸化法の違いによらずにlog S vs.log (doping level)プロットが傾き-1の直線となるという興味深い事実を見出した。この結果は学術的に重要な意味を持つと同時に,高機能な有機熱電材料の開発においても有用な知見を与える。このように本申請で提案した研究手法とその視点は極めて有効なものであることが明らかとなっており,研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
PHT膜を用いた研究を概ね完了した後に,現在有機熱電材料として脚光を浴びているPEDOT(poly(ethylenedioxythiophene))膜に研究の対象を移す。PHT膜の場合と同様に,ドープ率をChronocoulometry法を用いて評価し,ドープ率とSeebeck係数の関係を解明する。さらに,PEDOT膜に少量のEG(ethylene glycol)やDMSO(dimethyl sulfoxide)を添加することによって電気伝導率が数桁にわった向上することが知られていることから,これらのドーパントによるSeebeck係数への影響を調査する。
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Causes of Carryover |
年度末に物品の購入を予定していたが,実験内容の変更によって購入計画に変更が生じ,予算が未使用となった。今年度未使用額の約6万円はH30年度の予算執行計画の中に含めて使用することを予定している。
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Research Products
(12 results)