2017 Fiscal Year Research-status Report
難結晶化有機非線形光学分子と無機分子の複合結晶化による新規テラヘルツ光源作製
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17K05972
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
松川 健 茨城大学, フロンティア応用原子科学研究センター, 産学官連携助教 (60580876)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | テラヘルツ波 / 有機非線形光学分子 / 結晶成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機低分子DASTは、広帯域テラヘルツ(THz)波を発生可能な有機非線形光学材料である。一方で、革新的なTHz技術の発展のためには高出力THz波を発生可能な汎用素子を開発する必要があるため、高出力THz波光源開発のためDASTを上回る有機材料研究が行われてきたが、材料の結晶成長の根本的な問題から新規有機結晶の開発には至っていない。本研究では、結晶成長が容易な非中心対称性無機結晶中に高い非線形性を有する有機分子を包括するという発想から、難結晶化有機分子を無機結晶に包括させた有機-無機複合型バルク結晶を開発し、THz光源素子としての基礎的性能を実証する。 本年度は、硫酸亜鉛無機結晶を骨格として、その空孔部分に有機低分子を内包させた結晶開発を実施した。硫酸亜鉛中に有機低分子グアニジンを内包させた結晶GZSは、容易に大型の結晶が得られる。このGZS結晶は、上記条件を満足して非中心対称性構造(I-42d)、グアニジン分子も水素結合により秩序正しく配置されている。本研究では、初めにグアニジンを有機非線形光学分子として広く認知されているMNAに変えて有機-無機複合型バルク結晶作製を行った。硫酸亜鉛7水和物とMNAを2:1のモル比で水溶液中かつ40℃で溶解させた。その後室温で溶液を蒸発させて結晶を得た。Nd:YAGレーザーの1064nm光を得られた結晶に照射したところ、532nm由来の緑色の第二高調波光を観測し、非中心対称性を示すことが分かった。しかしながら、得られた結晶を単結晶X線回折により構造解析した結果、MNA分子が硫酸亜鉛骨格中に内包されていないことが分かった。硫酸亜鉛中にはグアニジンのような硫酸と水素結合しやすい分子のみが包括される傾向にあるようで、様々な有機分子を内包するような万能の無機骨格分子ではないことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
硫酸亜鉛無機結晶を骨格として、その空孔部分にMNAを内包させた結晶開発を実施した。しかしながら、得られた結晶を単結晶X線回折により構造解析した結果、MNA分子が硫酸亜鉛骨格中に内包されていないことが分かった。当初の研究予定から、方針を変更する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
種々の有機低分子を内包可能な無機骨格を選別しなおす必要がある。有力候補として、結晶スポンジで用いられている2,4,6-tri(4-pyridyl)-1,3,5-triazineとヨウ化亜鉛からなる錯体結晶を用いて内包される溶媒交換法から、所定の有機非線形光学分子の内包を試みる。ただし、30年度以降の研究計画において、錯体結晶の結晶成長の報告が皆無であり、有機低分子の内包の有無だけでなく、全体の結晶の結晶成長も研究課題となる。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画であった硫酸亜鉛無機結晶を骨格として、その空孔部分に有機低分子を内包させた結晶開発において、得られた結晶を単結晶X線回折により構造解析した結果、所定の有機分子が硫酸亜鉛骨格中に内包されていないことが分かった。そのため、29年度の研究を基に、30年度以降の研究方針を変更する必要が生じた。 種々の有機低分子を内包可能な無機骨格を選別しなおす必要がある。有力候補として、結晶スポンジで用いられている錯体結晶を用いて内包される溶媒交換法から、所定の有機非線形光学分子の内包を試みる。ただし、30年度以降の研究計画において、錯体結晶の結晶成長の報告が皆無であり、有機低分子の内包の有無だけでなく、全体の結晶の結晶成長も研究課題となる。この一連の試薬費用を30年度以降必要となるため、次年度使用額が生じた。
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