2018 Fiscal Year Research-status Report
フェナセンを拡張πモチーフとして活用する有機エレクトロニクスへの挑戦
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17K05976
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
岡本 秀毅 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (30204043)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山路 稔 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (20220361)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | フェナセン / 多環芳香族化合物 / 有機半導体 / OFET / 発光材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
多環芳香族フェナセンのπ電子系を活用して高性能半導体あるいは発光材料などの有機電子材料を開拓するために以下の4点について検討した. 1)高度にπ共役系を拡張したフェナセン類の合成:前年度に引き続きπ共役系拡張フェナセンの合成経路を確立した.フェナセン骨格の形成には光環化反応を用いるが,高次フェナセンおよびその前駆体の溶解性が悪いことが問題であった.高温下で光環化反応を行うことにより,ベンゼン環数11までの無置換フェナセンを安定して供給することが可能となった. 2)化学修飾したフェナセンの合成:分子長軸方向に長鎖アルキル基を有する[7]フェナセンおよび,電子求引基であるイミドをもつピセンの合成法を確立し,半導体特性の評価を可能にした.分子長軸方向への置換基導入は一般に困難であるが,この成果により,比較的簡便に各種置換体の合成指針が得られた.これらの新規フェナセンははそれぞれp型およびn型半導体としての作動することを確認し,次年度以降に詳細な物性を調査する. 3)新規フェナセン類の電子特性:ベンゼン環数の増加にともない,フェナセンの蛍光色が白色に近づくことを確認し,新たな発光材料として利用できる可能性を見いだした.フェナセンの有効共役長はベンゼン環数の増加に対して直線的に伸張すると考えられていたが,有効共役長がベンゼン環数15程度で飽和する可能性を実験的に明らかにした. 4)フェナセンを用いる電子デバイスの構築:化学修飾フェナセンを用いて電子供与,求引性置換基の導入によりp型およびn型OFETデバイスの構築を行った.新規化学修飾フェナセンのデバイス特性は現状では高性能とは言えないが,今年度はデバイスのおよび分子設計の最適化によりOFETデバイスの高性能化を検討していく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)フェナセン類の合成:π系拡張フェナセンの合成および分子長軸方向に化学修飾したフェナセン類の合成は概ね当初計画した合成プロコルを確立することができた.しかしながら,ベンゼン環数が11を超えるフェナセンについては,前駆体となるジアリールエテンの溶解性の極めて悪いことが明らかとなり,この予期しなかった前駆体の溶解性の問題の解決策を次年度に検討する予定である. 2)各種フェナセン類のOFET特性の検討により,p型だけでなくn型半導体材料も構築できることが新たにわかってきた.フェナセンが化学的に安定であるため,今後の高性能n型半導体材料開拓の糸口がつかめた. 3)フェナセン類の電子特性:電子スペクトルの測定から,フェナセンの有効共役長がベンゼン環15程度で飽和する可能性が初めて示された.従来は,フェナセンの共役長はベンゼン環数に対して直線的に伸張すると報告されていたが,本研究で無置換のπ拡張フェナセンの調査が可能になったことでフェナセンの電子特性に関して新たな知見が得られた. 4)フェナセンを用いた半導体デバイス:新規フェナセンのOFETデバイス作成とその評価は従来確立してきたプロトコルで行うことができている.また,化学修飾フェナセンを用いて,演算回路を構築できることもわかった.次年度以降,より高性能OFET材料を構築するため分子設計とデバイス評価を綿密にフィードバックさせる計画である.
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Strategy for Future Research Activity |
1)フェナセン類の合成:これまでに種々のフェナセン類の合成法を確立してきたので,本年度は,化学修飾フェナセンの誘導体を増やすこと,ベンゼン環数が12までのπ拡張フェナセンの合成を行う.特に,現在,高性能n型半導体材料が求められていることから電子求引基を有するフェナセン類の開発を行う. 2)電子デバイスの作成と評価:合成した新規フェナセン類を用いてOFETデバイスの作成とその動作特性の評価を行う.これらの評価は従来確立してきたプロトコルを用いて行うので支障はない. 3)フェナセン類の電子特性評価:新規に合成した化合物の電子特性を種々のスペクトルにより明らかにする.特に,化学修飾がフェナセンの電子特性に及ぼす効果を明らかにし,新たな分子設計にフィードバックする予定である.また,分子が発光性を持つ場合にはあらたな発光材料としての特性を明らかにする.
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