2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K05984
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Research Institution | Osaka Research Institute of Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
松元 深 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 研究主任 (50416301)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 貴敏 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 有機材料研究部, 研究室長 (60416295)
隅野 修平 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 有機材料研究部, 研究員 (60783272)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | フラーレン誘導体 / 有機半導体 / 誘電率 / 計算化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
高い誘電率を有する有機半導体材料を開発するため、本年度は計算化学手法を用いた二置換フラーレン誘導体の具体的な分子設計を行った。これまで誘電率の計算には一分子あたり数時間程度を要したため、関連する指標を用いた間接的な評価を行っていたが、本年度はプログラミングによる処理の自動化や経験的な計算条件の調整を行い、一分子あたり15分程度で妥当な計算結果を得る手法を開発した。これにより簡略化したモデル化合物の間接的な構造評価ではなく、大量のフラーレン誘導体構造の誘電率を直接計算評価する事が可能になった。 データベースから取得した約7000個の一置換C60フラーレン誘導体構造に対し、類似性に基づき階層的クラスタリングを行い1000分子からなる多様性の高い化合物ライブラリを作成した。これらの分子に対し高速計算を行い誘電率が高い既知化合物構造45個を選択した。更にこれらをC70に二つ組み合わせて置換した990個の分子構造を生成し、誘電率の計算スクリーニングを行った。この結果、比誘電率の平均値は一置換体では4程度であったのに対し、二置換体では5.9と高い値が得られた。またシリコン半導体に匹敵する誘電率9以上の分子構造も多数得られた。これらの構造に関してデータベースを用いて試薬入手性や反応収率等を考慮して合成経路を探索し、C70への反応において位置異性体を生じさせにくいBingel反応を用いる置換基構造を選択した。これらの検討により、合成可能性が高く、誘電率が高いと予想される新規フラーレン誘導体の設計に成功した。このような高い誘電率を示すフラーレン誘導体はこれまでの経験的な有機構造設計手法では得られておらず、情報・計算化学を用いた本研究の優位性が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた計算結果からの知見を基に逐次分子構造の設計を進める方法から、合成経路の情報を含むデータベース上の膨大なフラーレン誘導体構造を基に網羅的に検討を行い、誘電率の予想値を直接用いて候補化合物を選択する方法に研究手法を変更した。 そのため予定していた化合物の合成着手には至らなかったが、当初想定よりも実現性の高い分子構造の設計、合成経路の計画が行えたため、今後の誘導体合成・評価がより短期間で実行出来ると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
計画した合成経路に従い、二置換フラーレン誘導体の合成を行う。選択した置換基構造の前駆体を合成し、C70フラーレンへの反応を行う。反応部位の選択性や反応収率の検討を行った後、二置換フラーレン誘導体の合成条件の最適化を行う。得られた誘導体を基板上に塗布し、評価用素子を作成する。素子の比誘電率、及び電子移動度を測定し、開発した二置換フラーレン誘導体の特性評価を行う。
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Causes of Carryover |
装置導入に関する設備備品費、旅費の他、研究状況の変化により試薬等消耗品への支出が予定を下回った。当該分は有機合成や素子作成に関する消耗品として次年度物品費と合わせて支出する予定である。
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